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写真にはうつらない

1週間前に移動してきた新しい滞在先は、海みたいに大きな湖のそばにある。湖を縁取るように遊歩道が整備されていて、散歩をするには絶好のロケーションだ。
まちの中心部まで出るには、ほかに近道があるけれど、この道を気に入って、ほとんど毎日歩いている。

枝先でまだ生まれたばかりの葉が重なり合いつくる緑の濃淡
水面に転がり煌めく光の反射
路面に薄っすらと落ちる木々の影
桟橋に腰掛けて遠くを眺めるカップルの後ろ姿

出掛けるときは大抵カメラを持ち歩いていて、当然このうつくしい瞬間を収めておきたいといつも思う。でも、到底その光をつかまえることはできない。目で見たうつくしさには敵わない。
だから、今日はなんとなくカメラを部屋に置いてきていた。

遊歩道の途中に木でできたベンチのブランコがあって、晴れた日のそこは特等席。イヤホンで音楽を聴きながら、ゆらり、ゆらり揺られて、目を閉じる。


この湖の周りで見ているうつくしい光も、先週末に最初のホストファミリーに会いに行って過ごした愛おしい時間も、ほんとうに大切な瞬間こそ写真が残っていない。そういう場面に出くわすと、急に、カメラなんて意味のないものにさえ感じられる。

そんなことを考えていたら、なんだか急に泣けてた。自分が寂しいのか、幸せなのかもわからない。その両方のような気もする。

今夜はオーロラが見える確率がかなり高いらしい。日本、フィンランド、オーストラリア、いろんな場所の友だちがそのことを知らせる連絡をくれた。

オーロラといっしょに自分のことを思い出してもらえるなんて、幸せだな。

観測できる可能性が高いのは0時前後とのこと。
すっかり早寝早起きが習慣づいているけれど、今日ばかりは夜更かししないわけにはいかない。

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