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灰色のあいつと、本当の敵

うまく言葉にできるかわからないのだけど、なんというか自分の心の下の方にずっとぼわんと漂っているものがあるので書いてみようと思う。
それは何かしらの感情や気持ちとは少し違うけど、考えと言えるほどかたちはなくて。フィンランドに来る前から、なんとなく存在していて、来てからもずっと付き纏っている、灰色のぼわんとしたやつ。

(…と書き始めたはいいが、全然まとまらなくて開いては閉じてを繰り返し、数週間下書きのままになっていた。)

生活の中心だった仕事を辞めて、海外旅行の経験さえないのに、フィンランドまで来て、何の志もないわりには思い切ったことをしたと思う。
偶然重なったいろんなタイミングを運命だと思い込んで、考えるよりも先に行動して、決断から渡航までわずか半年ちょっと。いざ現地に着いてからは、怒涛の1か月で、ここにいる幸せを噛み締めるのと、アクシデントやハプニングに対処するので精一杯だった。

5月に入ってから、急に時間ができて、眠っていた灰色のあいつがむくっと起き上がってきた。その正体はほとんど渡航前にこの記事(「“ワーホリに行く”わけではないのだが、」)に書いているのだけど、日々かたちや大きさを変えてわたしの中に棲みついている。

「やりたいことがない」という最大のコンプレックス。
それに加えて、最近は“1年間の期限付き(ワーホリ)でフィンランドにいることへの気持ち悪さ”が、その中身のような気がする。

Working holiday VISAがほとんど知られていない現地の人に自己紹介をするとき、自分の状態を説明しながら、しっくりこなくてもやもやする。日本にいた時は、フィンランドに行く理由を聞かれた時の返答として、(自分自身の納得がいっていなかったとしても)“ワーホリで”が通用していたのだけど、こちらに来てからはそれが通用しない。

英語も話せないアジア人が、仕事も住む場所も決まらないまま、1年限定で単身異国の地で暮らそうとしている。客観的に見て、不思議な状態だろう。

日本でいうハローワークで「ビザの期限が切れた後のことはどう考えていますか?」と聞かれて、うまく答えられなかった。その時点で、フィンランドに来てからまだ1か月も経っていなかったので、「先のことなんてわからないよ!まだ来たばかりだよ?」心の声はそんな感じ。でも、反対に言えば、当然の顔をして「日本に帰ります」と言わなかったのは、自分でも意外だった。

仕事のこととか、ビザ切り替えの難しさとか、永住権の話とか、そういった現実的な問題は置いておいて、ここが気に入れば住み続けられる手段を考えればいいし、日本が恋しくなれば早めに帰国すればいい。旅先の別の国が気に入れば、そこへ住んでみるのだってありだ。

最大12か月のフィンランドでの暮らしを、「もう◯か月経った」「あと◯か月しかない」と、一日一日消費していくような時間の感覚を捨てて、いつまで続くかわからない人生の一日が今は偶然ここにある、それくらい自然でいられたらと思う。

湖のほとりで、図書館で、とりとめなく、ぐるぐるぐるぐるこんなことを考える(考え過ぎる)日々。でも、結局は全部、自分の人生をどうしたいのかがわからないことへの言い訳だ。

日本にいたら、無職の状態に耐えられなくてすぐに働いていただろうから、働きたくても働けない環境に身を置くことで、強制的に自分と向き合わざるを得ない状況になった。こんなにも辛いことだっけ?

今のわたしの本当の敵は、英語のスキルでも職探しでも、現地での友だちづくりでもなく、自分の存在、それ自体なのだ。





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