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小説家書いてます

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自分の中にある忿懣、焦燥、怨嗟云々、そんなものが小説になればと思って書いています。
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ホラー小説 怨音

ホラー小説 怨音

第一話「端倪」

 鈍色の雲が今にも落ちてきて、世界を潰してしまいそうな、そんな空模様だった。
男は鞄からピルケースとペットボトルの水を取り出し、震える手で薬を口の中に放り込んだ。そして、ペットボトルの水を勢いよく喉に流し込み、男は深く息を吐いた。
「早かったな。待ったか」
 男が振り返ると男の友人が挨拶代わりに光らせたペンライトを振っていた。
「まぶしいよ」
「いやー、気持ちが抑え切れなくてさ。

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