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組織デザインは「適当」にやるのがいい!?

オルフェウス室内管弦楽団というオーケストラがある。

チェリストのジュリアン・ファイファーを中心に1972年に設立された(弦楽器16名、管楽器10名が基本の)小規模なオーケストラで、ニューヨークを拠点に活動している。

面白いのは、このオーケストラには指揮者がいないというところ。

指揮者という1人のリーダーが全体を統率するのではなく、多様なメンバーがそれぞれの解釈をぶつけ合いながら、曲というまとまりをつくりあげていく、完全に「民主的」なオーケストラのあり方を実践しているのだ。

ここに生み出されているメンバー間の関係性は、そのままフラットな組織に応用できるのではないか。

というわけで、「オルフェウスプロセス」という本が出版され、ビジネスパーソンを対象にしたこのオーケストラによるセミナーが開催され、一時はとても話題になった。

ということを思い出したのは、「組織の『フラット化』の弊害」という日経の記事を読んだから。

米国のハイテク企業を中心に、「管理のレイヤーを取り除くことでコミュニケーションがより自由に流れ、意思決定がより迅速にできるようになるという考え方」のもと、「組織図から中間管理職を排除し、よりフラットな組織構造にする」動きが加速しているが、そこには弊害もあるのでは? という話。

バース大学のマーガレット・ヘファーナン教授は、「非効率なことが1つの階層にあるという考え方は愚かだ」と語る。

ミドルマネジャーは組織内のさまざまな部署間の調整、戦略的イニシアチブの実施、下級社員のサポートや育成など、重要な役割を果たすことが多い。このような役割がなければ、組織は調整と実行に苦慮し、社員はサポートや育成の機会を失うかもしれない。

不必要に組織の階層が深くなると効率が失われるのと同様に、必要以上に階層を浅くしてしまうと、やるべきことができなくなることもある。

まあ、考えてみれば当たり前の話だ。

で、オルフェウス室内管弦楽団は、当初、指揮者がいないだけでなく、完全に民主的な、階層のないオーケストラをめざした。

でも、バッハやモーツァルトを演奏しているうちはそれでよかったんだけど、レパートリーを広げ、その後の時代につくられた大きな編成の曲を演奏しようとなると、だんだんそのやり方ではうまくいかなくなった。

そこで、演奏する曲ごとにパート単位のリーダーを選出し、リーダーどうしの話し合いを通じてオーケストラ全体の方向性を決め、各メンバーにその「ビジョン」を伝える形にしたとのこと。

「完全フラット化」が「絶対善」なのではなくて、どのような状況でどんなことに取り組んでいるかによって(タモリの座右の銘であるところの)「適当」な組織の形が決まってくる。

これ、アルフレッド・チャンドラーの「組織は戦略に従う」とも重なり合う話だと思う。

#日経COMEMO #NIKKEI

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