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第46回参議院議員通常選挙~野党はなぜ自民党の大勝を許したのか~

 既にご存じの方が多いとは思いますが、先の参院選で自民党は大勝しました。その勝ちようは選挙の勝敗を左右する一人区で28勝4敗、全体で9年ぶりとなる改選単独過半数を上回る65議席を確保するという圧倒的なものです。なぜ自民党はこのような極端な勝ち方をしたのでしょうか?
 その原因として考えられるのはズバリ野党第一党と比べた与党の圧倒的な支持の高さです。「いや、そんなの選挙なんだから当然だろ!」「わざわざ記事にする必要もない話」と突っ込まれそうですが、これとは異なった原因分析も一定以上の支持を集めているのです。主に「野党共闘が不十分だったからだ」「選挙制度そのものが与党に有利」など…

野党5党が候補者を一本化したところで与党には遠く及ばなかった

 こうした圧倒的な支持の差以外に敗因を見出す方の第一人者と言っても良い方が三春充春氏です。まず三春氏については私自身、その分析力の高さについてとても尊敬している方です。彼の選挙情勢調査の一覧表は一目で情勢把握を可能にし、戦略的投票をスムーズにしていますし、投票率予測についてはそのぶれ幅が1%であったとしても悔やまれる正確さです。
 しかし、この分析についてはいかがなものかと…

 この表で示された4選挙は全て野党が大きく負け越していますし、なぜ候補者が乱立しながら野党が23勝6敗と大きく勝ち越した2007年の参院選を載せなかったのかという疑問も残ります。また、野党5党(立民、国民、共産、れいわ、社民)が候補者を一本化した13選挙区においても野党の3勝10敗と大きく負け越しています。

この点について一本化すれば勝率は多少なりとも上がるのではと思われるかもしれませんが、この勝利した三選挙区は全て現職が野党の選挙区。そもそも野党が有利だったところを一本化したわけです。
 また、一本化がなされなかった19選挙区でもし一本化されたとしても結果の厳しさにかわりはなかったと考えられます。もし候補者を取り下げた政党の票が完全に、一本化された候補者にのると仮定したとしても結果が覆るのは秋田選挙区のみです。

そもそも候補者一本化はプラスに作用するか

これはケースバイケースだと思います。一般に

取り下げた候補者の票のうち自陣営に投票された票>取り下げた候補者の票のうち敵陣営に投じられた票+一本化によって自陣営から敵陣営に移った票×2

が成り立つとき候補者の一本化は効果があったと言えます。この点から考えると自公の選挙協力は
①公明党は宗教票がバックにあるため推薦を出せばその候補に票が集まる
②(保守)自民→公明→立民(リベラル)のため公明党どの選挙協力を知った自民支持者が対立候補に票を入れる可能性は低い
ため効果は高いと言えます。
 一方、(革新)共産→立民→自民(保守)となっているため共産との候補者一本化を知った立民の支持者は対立候補である自民に投票する可能性があります。また(リベラル)立民→国民→自民(保守)となっているため、国民が候補者をおろしたとしてもその票は自民に向かう可能性があります。(ただし国民は公明と創価ほどではないものの民間労組との関係が強くその意向によっては一本化で大きな成果が出るかもしれない)
 なお直近の衆院選では立民と共産の一本化の効果がわずかに見受けられたようです。もっともそもそも立民が共産に拒否感を持たない急進リベラル層からしか支持を集めていなかったことが要因の可能性もあり難しいですが…

元総理の急遽の影響は限定的だった

 選挙期間終盤、安倍元総理が銃撃され急遽するといういたましい事件がおきました。このような事件と選挙結果の関係を考えること自体、あまり気が進みませんが、過去には大平元総理や翁長元知事の急遽が直後の選挙に大きな影響を及ぼしたこともありました。ただ、今回の選挙結果は事件前の各社の予想とほぼ一致していて、選挙への影響は限定的だったようです。岩手選挙区のみ事前の予想に反して自民党が勝利しましたが、この選挙区はそもそも接戦だったうえ、報道後の小沢議員の失言が影響していると考えられます。

選挙制度による有利不利

 一般に小選挙区制は大規模政党に有利、中選挙区制や比例代表制は中小規模政党にもチャンスがあると考えられます。自民も立民も大規模政党ですから、小選挙区制(一人区)そのものがどちらかの政党に有利不利ということはありません。
 ただし小選挙区制では議席が有利な側に偏りやすい傾向があります。参院選では、一部の地域でのみ小選挙区(一人区)制が採用されているため、小選挙区制の採用されている地域が特定の政党の支持の厚い地域だった場合、その政党に有利になります。実際に自民党は一人区の多い中国地方で強い傾向にありますので、確かにやや自民党に有利な制度と言えるでしょう。もっとも中国地方を除いたとしても野党から見て4勝25敗と結果に大差ありませんが…
 ちなみに今回の選挙に限ると複数区の定数は維新と立民の主導権争いにおいて立民にかなり有利にはたらいています。もし複数区の定員が1増加した場合、立民は2、維新は8議席を増加させる一方、もし1減少した場合、立民は3議席を減らしますが維新の議席減はありません。

圧倒的な内閣支持率の高さ

直近の内閣支持率
全体の動向がこれ
政党支持率

 


 内閣支持率・政党支持率については青木率と呼ばれる指標があります。内閣支持率+与党支持率が50%を下回ると政権の維持が難しくなるというものです。青木率は万能な指標ではありませんが、今回の投票日時点で内閣支持率だけで50%を超えており、自民党の大勝にもうなずけます。
 上の表にある通り、野党の政党支持率は自民党に遠くおよびません。それでもこれまで野党が一定程度の議席を得ていたのは政権に疑問を持つ無党派層が野党に投票していたからだと考えられます。今回の選挙はこうした(野党に投票しようと思うほど)政権に不満を持つ無党派層が大幅に減ったことが自民党大勝の要因だと考えるのが妥当でしょう。


 最後まで読んでいただきありがとうございました。また、三春さん、このツイートに甘えて表などを借用させていただきました。

ありがとうございます。

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