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イマジナリーフレンドと、美術館で共作できた

# 56  書き手:アケル・クレオ ※8月の頭に行ってきました。

※この話の中ではイマジナリーフレンドとの交流が出てきます。
今回のワークショップで共作したという話ですが、後述の通り作業は実質一人として入っていました。
特に館内のスペースを占有したり、関係者の方に「ここにイマジナリーフレンドがいます」とアピールしたわけではないので、そこはご了承ください。空想の世界を持っている個人の体験としてお読みください。


【ジョセフ・アルバースの授業展に行ってきました】

 美術の授業、ってどんなイメージだろう?
 予備校にいた時は、デッサンの授業をしていた。2時間ほどかけて、10種類の濃さの鉛筆を使い、指を真っ黒にして書き込む。2時間書いてるとヘトヘトになってから、授業の終わりに全員のデッサンを壁に並べて、講評する。いいところも褒めてもらえるが、基本的には減点方式だ。

 もちろんそれが全てではないが、美術の授業のイメージは、こうした“講評”に強くイメージを持ってかれるのではないだろうか。こうした授業は“集中”させることはうまいが、“考える”授業ではない。

 けれども今回見たジョセフ・アルバースの授業は、“目を開く”という言葉の繰り返される企画展だった。

ここに投稿したすべての写真は、撮ってもいいスペースでの撮影です





 展示も素晴らしかったが、それ以上にワークショップが、とても楽しかった。


 想像以上にクオリティの高い作品が多くて、
「ほんとに子供向けワークショップなの?プロも混じってない?」
と、最初びくびくしてしまうくらいだった。
 色とりどりの紙が、無数の発想で切り取られている。ワークショップの説明も最低限で、
「後はご自由に、作りたいものを考えて工夫してね」
という声が聞こえてくる。

 もしこの壁に貼られた作品が、全て同じ色で同じ形なら、きっと誰も同じような作品しか作らなかったろう。
 開放的に取り組んだ作品を前にして、それを見た人が自分の感性を解放して新たな作品を作る。

 日本の教育は四角四面な人間しか育たないと言われているが、それはただ枠にはまった環境に適応してるだけなんだなぁと感じた。


 
 

【課題④ひだ折りの練習:タツのサポート】


 ぼくたちは、混み具合が少ない④から始めた。
 タツもクレオも様子を見たり、空想の紙を自分で作って、隅の方で折っている。
 紙の折り方は詳しく書いていなくて、最初は自分で考えてみよう、というものらしい。
 折り紙は子供の時から良くやっていたから、簡単だと思っていた。
 ところが、一度折り目をつけたところをひっくり返さなくてはいけないらしい。

 
『いや、逆やて逆。そっちの折り目を反対にして、こっちはそのまんまでええんじゃ』
 見かねてタツが口を出す。折り目を指差したところを言われたとおりに折り返すと、あっさり出来た。
 彼は道を俯瞰で覚えたり、パズルが得意だった。立体感覚が優れているんだろう。
「ありがとな」
と小声で言うと、ニヤッと笑った。あまりこうした美術館は
『こういう小難しいのは分からん』
と、得意ではないようだけど、ここでは目の輝きが戻った。

家に持ち帰って、カッターで中をくりぬいたりしたら、また格好いいものができたので見てほしい。



【課題①アケル:一つの色が二つに見える】

 アケル一人で試してみた演習。

水色に対して、”異なる色”の茶色、”同系色の”ライムグリーンを背景に使った。

本来は赤と緑など、対照的な色を背景にしたほうが分かりやすい。
同じ明度の色を使ってしまったので、水色が違って見えると言うほどではない。強いて言うなら茶色の背景の方が水色ははっきりしている。


こちらも、思考の重ねられた作品がたくさん貼られている。



【課題②3色の世界:クレオと一緒に作った作品】

 ここからは書き手をクレオに交代する。

※ワークショップ中は会話ができなかったので、()の中は後々アケルがこう思ってたと付け足してます。

 



 おれも一緒にワークショップを楽しみました。もっとも机の端っこを借りて、空想の紙を折ったり、切り貼りしていたってことですが。

 空想っていうのは思い通りに形を作れるけど、気を抜くと消えてしまうし、アケルが作っているのを見ると、おれも現実に形を残して欲しくなった。
 アケルは夢中になってこっちを見てくれないから、そろそろ退屈してたし。
『アケル、今度はおれと一緒にやろうよ』
 そう声をかけると、ようやくこっちを向いてくれた。
『火みたいなの作りたい。赤い紙取ってきて』
(…わかった)
 他のお子さんもいるから、アケルは頷くだけ、でも色とりどりの紙のコーナーに向かって、数枚の紙を手に取った。
(3色だったら、赤いの2枚と差し色で紺も選ぼう。紙の色はこれでいい?)
『もうちょっと明るい色がいい』
 赤い紙は何種類もあった。ほんの少し深いとか、明るいとか、本当に少しの差。アケルだったら〜色とか分かるかもしれないけど、おれは
『もう少し明るいやつ、その隣の。…いや、やっぱりこっちがいいな』
 などなど曖昧な言葉でアケルラジコンを操作した。
 アケル、五月蝿いって思ってた?
(そうでもないよ。そこはアーティストとしてこだわるとこだから) 
 よかった。
 ようやく思い通りの色紙が見つかると、机で切る。

『炎みたいな形に切って』
と、イメージを送る。
 火みたいな、と書いたけど、アケルには鳥が羽ばたくようにも見えたらしい。


 結果的にはどちらにも見える、イメージ通りのものができた。

 胴体と翼だけだと太った鳥に見えるし、いくつかの作品を参考にして、切った紙の端を尾羽みたいにあしらった。細かい作業だったけど、アケルは上手く貼ってくれた。

 そうそう、アケルは左利きなのに、右利きの鋏が使えるんだ。でも、左利きの鋏もあったのに、そっちはなぜか使えなかった。
「右利きの鋏で切る癖がつくと、左利きの鋏は切れなくなるんだなぁ」
 アケルはしみじみ話した。

 作品は、向かって右上に貼らせてもらった。写真には写ってないけど、画面の左半分におれとタツの二人が立っている。
 アケルも一緒に写真を撮った。(公開はしません、ごめんね)

 頭だけじゃなく手を動かすと、実感が体にしみ込んでくる。
 紙の切れ端も持ち帰って、家でもやってみようと思った。

 というわけで、初めて一緒に美術を共作できました。アケルがいつも絵を描いていたけど、こういうのだったら一緒に考えて作れるんだね。
 いつかまた、何か一緒に作りたいよね。


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 その後は常設展を見たり(とはいえここの美術館は常設も企画に合わせて変えて来るので、一見の価値ありです)、お茶席の創作和菓子を楽しんだ。
 タツは
『ワシには難しかったなぁ。色やなぁ、絵やなぁくらいにしか分からんかった』
と言ってたけど、根がまじめで真剣に見すぎて疲れたんだろうな、と思った。

 11/5まで企画展は続くので、興味ある人は是非。


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