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"ガチ”コミュニティへの招待

昨年の4月から町内会(自治会)に参加することになりました。少し前に、町内会参加への是非に関する記事をネットで見たので、まだ10ヶ月ですが、自分が体験し、感じたことを書いてみたいと思います。


わが自治会のあらまし

「ガチコミュニティ」である自治会に参加することになったきっかけは、なんてことはなく、輪番制の順番がまわってきたから。わが自治会は持ち回り制で10年〜20年に一回ぐらいの間隔で当番がまわってきます。わたしは次の次の順番だったんですが、わたしの前にやられる方が急にお亡くなられました。その繰り上がりで順番がまわってきました。

隣組のご近所さんも高齢化が進んでる。自分はまだ40代。そんな状況で、先にやられる方が急にお亡くなりになられた。これもなにかのご縁とタイミングだと感じたし、また市の職員として勉強になるなとも思い、引き受けることにしました。

 

1.自治会の構成

私が暮らす街の自治会は2,700人、1,100世帯ほどが暮らしています。わが福島県いわき市としては多分大きめなコミュニティかなと思います。このサイズの自治会の構成について説明します。

耳にしたことがあるかと思いますが、「隣組」という隣近所で構成される基本ユニットがあります。わたしの隣組は9世帯からなっています。
私が暮らす自治会は、2,700人・1,100世帯が住んでいるので、隣組の数は120組!にのぼります。なので、「隣組→区長」とすると、120人の隣組長さんから直接、区長に連絡がいってします。それでは区長が大変なことになってしまうので、間に「班長さん」という役職を置いています。ちなみに、私はこの班長さんをやっています。

わが自治会は、区長・副区長・総務・会計をトップに、その下に13人の班長さんがいます。その班長さんが、だいたい10ぐらいの隣組を担当します。で、隣組長さんが5〜15世帯ぐらいの隣組を担当するという構成になっています。

同じ話を逆から言えば、隣組長さんはだいたい5〜15世帯からなる隣組を担当し、班長さんは、約10の隣組長さんを担当し、区長・副区長は、13の班長さんとコミュニケーションを持つことで、2,700人・1,100世帯・120隣組からなる自治会と地域の暮らしを担っていくという感じになっています。

わたしは、9つの隣組、約100世帯ほどを担当しています。


2.どんなことやってるの?

ポピュラーな仕事としては、回覧板の配布物の仕分けとお届け。
区長さんのもとに、全戸配布するものであれば1,100世帯分来る。「配布」ではなく「回覧」するものであれば、隣組の数120部来る。それらが、市役所だけでなく、地元の学校や、警察や、県からなど、いろんなところから発行されるお知らせ文書がやってきます。

区長さんたちは、それらを13の班長さんたちに仕分け、編み、届ける。
しかも、毎月3回。1日と10日と20日。
わたしのもとに、100世帯・9つの隣組分が届けられる。それぞれの配布物ごとにまとまって来るので、それを各隣組さん用に組んでいきます。
1組さんは15世帯いるので15部、2組さんは10世帯なので10部といった具合に、複数の印刷物を、各隣組の戸数に合わせて仕分けて、隣組長さんに届ける。それを月に3回、年36回行うというのが一番大きな仕事かなと思います。


様々なお知らせ文書を、隣組ごとに「組んで」いきます


区費や赤い羽根募金などのお金関係の作業もあります。さきほどの回覧板とは逆の流れで、隣組の区費や募金を隣組長さんが集金される。で、班長のわたしのところに持ってくる。金額を確認し、領収書を切る。隣組ごとの内訳を作って、区長さん&会計さんにお金をおさめる。

あとは、月に一度の区長⇄班長会議や、年2回行われる市民総ぐるみ清掃のゴミ袋や土嚢袋の配布や集積場所の確認とかですね。

月に3回の回覧板関係の仕分けと配達はちょっと大変かもですが、全体としては、「絶対イヤだ!」と言うほどのお仕事はない感じです。


出会ったエピソード

そんなコミュニティでの役割を担っていくうちに、いつくかのエピソードに出会いました。

一つ目のエピソードは、班長を受ける前のこと。
15年とか20年前に一度班長をやられた経験のあるご近所の方から聞いたお話。

「私もこの街で生まれたわけではなくて、嫁いでここに来たの。 その当時は右も左もよくわからなかったけど、班長さんを1年やったおかげで、この街に知り合いもすごく増えたし、この街にすごく親しみや愛着を持てるようになったの。だから、イガリさんもやってみはどう?」と。

ご縁とタイミングもありつつ、このお話をしてもらって、「よし、やってみよう」と思いました。

二つ目のエピソードは、9月の神社の例大祭のときのこと。
コロナでずっと休んでいた神社の例大祭。班長さんも来てくださいということで、13人の班長がみな集まりました。

私以外は皆さんわりと高齢の方が班長を務められていて、いつも頭が下がる思いなんですが、 多分、班長の中で最も高齢と思われる80代の女性の班長さんと例大祭で隣同士になりました。

「私、40年もこの町に住んでるけど、こんな例大祭に来て、伝統芸能を見るのはじめて。とっても嬉しい」と。

40年住んでいても、なかなかそのコミュニティや例大祭に参加する機会って、あるようでないのかもしれない。2000人も暮らしている大きな規模の地区なので、人によっては、そういうこともあるよなぁ、かくいう私も15年ほどこの街に暮らしていますが、例大祭に来たのは初めてでした。

それは、私やエピソードを話してくださった方のように、この街の外からやってきた人だからだけではないかもしれません。

三つ目のエピソードは、区長や副区長さんを支える「総務」の方のお話。この方は、生まれも育ちもこの街。ですが、町内会のことはずっと親に任せてきたそうです。

「60歳になって、今回初めてこういう自治会の業務に参加するようになった。とても恥ずかしいけど、この街で生まれて育ったのに、この総務という役職をやるようになって、この地域の見え方が全然変わってきた」

「この地域が、色んな人達に支えられてるっていうのはが、60代になって初めて知った」と、一緒に地域の危険箇所をパトロールしているときに、話してくださいました。


例大祭


みんな、はじめて

僕もそうですが、あとからこの地域にきた人からすると、前からずっと暮らしていた人、この街で生まれ育った人たちの中で、既存の付き合いやコミュニティがあったりするのかなぁとかと思いがちです。

だけど、僕が4月から班長さんをやりながら出会った人たちは、40年住んでいても初めて例大祭に来たとか、60年この街で生まれ育ったけれども、町内会の役割をはじめてやってみたら、街の見え方が全然変わったり、色んな人達に支えられてるっていうのが分かったとかいうわけです。

何年住んでいるとか、この街で生まれ育ったかそうじゃないかという「時間の長短」だけではなく、コミュニティ活動への「参加の有無」。これは、もしからしたら「時間」以上の、コミュニティへの帰属・愛着のポイントかもしれません。

それに何年住んでいようが、コミュニティの活動に参加する時は、当然みんな初めてです。そして、住んでる時間が長かろうが短かかろうが、コミュニティの活動っていうのは参加してみると、その街の見え方や親しみ・愛着、人とのつながりみたいなものが全然変わってくるのでは。

そんなことを、班長をやることで、地域の先輩方のお話から学び、感じることができました。


みんなで、公園の非常用貯水槽の使い方を学ぶ


あなたのちょっとした協力を待っている

全国どこでも同じく、ご想像の通りかもしれませんが、リアルガチコミュニティにもやはり高齢化の波は、ものすごく押し寄せてきています。

ですが同様に私たちが暮らす地域、全国のどの地域においても、誰かが担い、誰かに支えられて、回覧板が回ってきたり、ゴミの集積場がキレイに維持されていたりするわけです。

それらの役割を、より若い人が、高齢の先輩方に代わって全部一手に引き受けるべきとかいう重い話ではありません。

僕たちの世代やもっと若い世代にとって、造作もなく簡単なことだけども、ガチコミュニティの先輩方にしてみれば、すごく助かるとか感謝されることがいっぱいありそうです。

例えば、2,000人・1,100 世帯が暮らす地域の募金や区費の集計作業や、それをエクセルで一覧にまとめたりする作業。募金だけじゃなくて、毎年行われる世帯人口調査みたいなものをエクセルで集計するっていうのは、僕たち働いてる世代にしてみれば、割と雑作もないことかもしれません。

自分にとってはそんなに苦でもないことが、実はリアルガチコミュニティの皆さんとってはすごく喜んでもらえて、そして自分たちもいきなり全部フルコミットするわけではないけれども、できることからリアルガチコミュニティにちょっと関わってみることができる。

リアルコミュニティは、私たち一人ひとりのちょっとした力とか協力を待っていると思います。そして、協力したり、ちょっと覗いてみたり、「それぐらいだったらできますよ」って気軽にジョインしてくれたら、皆さんもきっと自分が暮らす街をもっとずっと好きになったり、愛着や親しみを持てたり、つながりを感じることができるかもしれません。

最近あった町内会をめぐるネット記事とは逆かもしれませんけれども、隣組やリアルなガチコミュニティというものに少し興味をもっていただいたり、何かご縁や機会があったら、ちょっとのぞいてみたり、参加してみたりということをしてみてはいかがでしょう?

たかだか10ヶ月やっただけなので、まだ全然浅い理解かもしれませんが、私個人にとっては、今回の機会で、自治会にちょっと参加することができて、本当によかったです。

地域の先輩たちがおっしゃられていたように、自分の暮らす街が、ぐっと身近に感じられるようになったし、見え方が変わったし、つながりもできたし、より親しみを持てるようになりました。

最後に、先日(1/12)の自治会の月一定例会議での区長のお言葉が素敵だったので、こちらの言葉で締め括らせていただきます。

「いろんな人に班長や隣組長をやってもらいたい。
それが地域を知り、顔見知りになり、コミュニティをよりよいものにすることにつながるんだと、自分の体験からも強く思います」


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