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楽食探訪:ランキングサイト「日本一」のラーメンはマズかった。

我が家から車で40分ほどの場所に、そのお店はあった。

ランキングサイトのラーメン部門で、
「日本一」になったことのあるラーメン屋さんだ。

こんな田舎で「日本一」になるなんて、
どれほど旨いのだろうか。

ラーメン屋さんめぐりをするタイプの人間ではないが、
大いに興味を持ってしまった。

これは、行かねば。

いつも通り、嫁はんと出掛けた。

開店30分前に着いたが、お店の前に行列はなかった。

ブームは去ったのかと思ったが、
駐車場に止めた車の中で、
数人が待機しているようだった。

行列ができ始めたら、並ぶのかもしれない。
常連さんのテクニックなのだろう。

私と嫁はんは、行列一番乗りを果たした。

飲食店で並ぶことなど、滅多にない。ましてや、
開店前に並んでまで食べようとは思わない人間だ。

つまり、初めての経験。

一番に並んだことに、若干恥ずかしさもある。

すると、駐車場の車に潜んでいた男たちが、
ゾロゾロと這い出してきて、私たちの後ろに並んだ。

そこからは次々と人がやって来て、
たった30分の間に、なが〜〜い行列ができた。

これが、このお店の実力なのか。
それとも、ランキングサイトの力なのか。

私の期待もどんどん大きくなる。

不整脈を持つ私の心臓が、
ドキドキ……ド……キ…と、し始める。

食べることで、これほど緊張するのは、
なかなか体験できない。

そんなに旨いのか。

扉が開き、店員さんが出てきた。
「お待たせしましたぁ〜!」

「待った、待った!」と、
行列嫌いな関西人の私は思うのだった。
たかが30分だけど。

お店に入り、カウンターの一番隅に誘導された。

いつもそうだけど、初めてのお店はなぜか焦る。

ゆっくりメニューを見て、
じっくりベストな選択をしなければならないのに、
特に理由もなく焦る。

人間が小さいのだ。

で、ふたりが選んだのは、「鶏塩系」と「醤油系」。

注文してやっと落ち着き、店内を見まわした。

ふ〜ん。
やや暗めの落ち着いた小さなお店だけど、
特に珍しくもなく、面白いわけでもない。

まぁ、美味しければ、そんなことはどうでもいい。

驚いたのは、小さなお店に
たくさんの客が一瞬で入ってしまったことだ。

そこに圧倒された。
男が多いので、むさ苦しい。

しばらくすると、ラーメン2つがやって来た。

ひと目見て、ほぉ〜。
これは期待できる。

丼の中の景色が美しい。
ここまで整ったデザインのラーメンは、
あまり見たことがない。

どれどれ。
まずは、匂いから。

うっ、これはイヤな予感。

私は、醤油系を食べたのだが、
ほんの少しだけど、獣臭さがある。

豚骨を出汁に使っているようだ。

スープを飲み、確信。
遠くで獣がウヨウヨしている。

麺は、細く私好み。
固さも良い。

チャーシューも文句なし。

非常に丁寧に作られていることはわかる。
素晴らしい仕事だと言える。

なのに、なのに。
獣の匂いが、鼻の奥に残る。

惜しい。実に惜しい。

嫁はんの鶏塩系も食べてみる。

おっと、こちらも匂いがある。
煮干しの匂いが残っている。

スープは鶏ガラをベースにして、塩でスッキリ。
さりとて、コクは深い。

麺も100点。

鶏チャーシューもしっとりふっくらしていて、旨い。

まん中にのった白髪ねぎとスープの相性も素晴らしい。

これも惜しい。実に惜しい。

豚骨も煮干しも出汁を取る時に、
材料を引き上げるタイミングが、
ほんの少し遅いのかもしれない。

エグ味が出て、匂いとなっている。

見ためも味も「日本一」に相応しい出来だと思うが、
この匂いだけが残念だと思う。

まわりの客からは、絶賛する声が聞こえてきていたが……。

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