「イオンVSセブン」が、日本をつまらなくする!

流通大手・イオンが、地方の中小スーパーを次々と買収。今後、こうした動きを加速させ、日本の隅々にまで勢力を拡大しようとしている。同時に、巨大なショッピングセンターをも日本各地に作っているので、どこへ行ってもイオンの看板を眼にするようになってきた。

イオンに行けば、テレビや雑誌で紹介されている商品が手に入る。憧れのブランドもテナントとしてやって来る。有名チェーン店で食事ができる。地方の人間にとっては、夢のような出来事である。

対して、ライバルであるセブン&アイ・ホールディングスも黙ってはいない。小規模精鋭部隊とも言えるセブンイレブンを全国に展開し、小さな地域の消費者を囲い込もうとしている。1店舗の商圏は小さくとも、店舗数で全国をカバーする戦略である。

コンビニは、極端な小商圏商売であるが故に、地域密着の度合いが強い。また、公共料金の支払いやATM、荷物の発送、チケットの購入など、さまざまなサービスが充実しているため、一度取り込んだ客は簡単には離れていかない。その地域の人にとっては、日常品を売る雑貨店であり、郵便局であり、スーパーでもある。

イオンが憧れを連れて来てくれ、セブンが生活を便利にしてくれる。この2つが勢力を拡大することは、地方にとって喜ぶべきことかもしれない。

だが、本当にそうなのか。それで良いのか。確かにこれまでは、欲しいものも手に入らず、不便な生活を強いられてきた。それが嫌で都会に出て行った若者も多い。

もし、地方にいても便利で快適な暮らしができるのなら、都会に出る若者は少なくなるかもしれない。いいこと尽くめのように思えるかもしれないが、そう単純なことではない。

地方のスーパーがイオンに変わってしまうと、これまでの強烈な個性が消えてしまい、全国基準の商品ばかりになってしまう。

イオンの場合、PBである「トップバリュー」が棚を占拠してしまい、地元メーカーの商品は少なくなってくるだろう。消費者としても新しいものに興味を示すので、そちらを手にするようになる。しかも安いので、生活に定着することは容易に想像できる。

そうなると、地元メーカーは苦戦する。仕入れてもらえたとしても、大手の値下げ要求はキツい。トップバリューに押された上に、値下げまでさせられる。これでは、経営が立ち行かなくなる可能性も高くなる。

地方には、小さくてマイナーなメーカーが数多く存在する。地元周辺だけを対象とした、その土地だけで知られた商品を作り続けている。言わば、地元の文化を支えてきた商品である。

こうしたメーカーが潰れると、地元で生まれ、地域の人びとに愛されてきた商品が消えてしまうのである。これは、地方の文化をも消し去ることに繋がる。

文化のみならず、地元民の雇用さえ危うくなるのである。雇用が減ると、やはり若者は地元を離れてしまう。これでは、何の意味もない。過疎化は止められず、地方独自の文化をも失う。はたして、それが豊かな生活なのだろうか。

多少不便でも、“らしさ"を持った、愛おしく思える地元であった方が、幸せなのではないのか。

コンビニも同じ。便利かもしれないが、おばあちゃんたちが立ち話をするスペースはない。農協や郵便局のようなコミュニケーションは生まれない。地元の商店のように、“寄り合い"をすることもない。“出会い"が少なくなると、高齢者は孤立化する。これは絶対に避けなければならない。

“日本全国、どこへ行っても同じ"など、必要ない。地方には地方の良さがあり、それが面白いのである。

力で勢力を拡大することは、日本を非常につまらなくしてしまう。時代は移り変わっても、“そっとしておくべきもの"がある。

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