なぜHISのガイドマッチングサービスTravee(トラビー)は終了したのか

いーはーです。
今、うえの女子という訪日外国人向けのツアー・イベントサービスを行っています。
今日は前々から書こうと思っていた記事を書くことにしました。

なんと、HISが運営していたガイドマッチングサービスのTravee(トラビー)が2月末をもって終了してしまいました。(事業撤退してしましまいました。)

うえの女子を進めていく上で、私も登録していたサイトだったので、このことを知ったときはショックでした。他にも、最近ベンチャー企業で似たようなマッチングサービスを提供していた会社の事業も撤退していました。(arifriendというサービス。ネット上で地元の人とコミュニケーションを取れ、お金を払うことでその人の時間を買うことができるサービス。現地案内をしてもらったり、特産物を送ってもらったりと使い方は様々。)

2020年に4000万人の観光客の受け入れを目標に掲げた日本政府は、法改正や観光事業の取り組みなど、様々な方向で動き始めています。

そんな中、2018年1月に通訳案内士の業務独占が法改正され、外国人のガイドを誰でもできるようになりました。

そのタイミングで、ガイドマッチングのサービスがいくつかでてきたと思うのですが、その中でも日本の大手旅行代理店であるHISが運営しているTraveeが話題になっていました。

しかし、2019年の2月をもってサービスが終了してしまい、事業撤退という形になってしまったので、その理由を考察していきたいと思います。

そもそも、「Travee知らないよ><」
って人もいると思うので、簡単に説明します。

Traveeは一言で表すと、訪日客と地元ガイドのマッチングサイトです。(でした。)

訪日客はTraveeに登録されている通訳ガイドにお金を払うことで、通訳付きの旅行プランに参加することができます。訪日客はサイトの中で簡単に通訳ガイドを頼むことができ、通訳ガイドは空いている時間に通訳ガイドの仕事をすることが可能です。

有名な場所ではなく、地元も人が行くようなローカルなスポットに行ってみたいという訪日観光客の需要に合わせて、このようなC2Cサービスが誕生したというのがざっくりとした背景だと思います。

現地ツアーについての背景についてまとめてある記事を見つけたので、詳しく知りたい方はこちらも合わせてどうぞ。


さて、前置きを終えたところで、ここから考察に入っていきたいと思っています。

目次

1.ビジネスとしての可能性
ーツアーガイドの市場
ーHISのコミット量
ー競合分析
ーマネタイズ(ビジネスモデル)

2.サービスとしての価値(執筆者の視点からの考察)
ー通訳案内士としての代行は利用者のニーズを満たしていたのか
ーガイドを集めることと、その管理
ーアクティブとしての状態を保ち続けるために必要なこと

3.訪日外国人観光客にローカルツアーを提供するために必要なこと
ー問題の解決方法として何があるのか

1.ビジネスとしての可能性

このパートでは、そもそもビジネスとして、ツアーガイドのマッチングサービスが成り立つのかどうかを検証していきたいと思います。


1-1ツアーガイドの市場
現在、ツアーガイドの市場はどのくらいあるのでしょうか。
現段階で、2018年の訪日外国人の消費データより全体の4.6%の人が現地ガイドや観光ガイドを利用していると報告されています。
現在、訪日外国人の旅行消費額が4兆円であることから考えると1800億円規模の市場であることがわかります。
2020年には、政府は8兆円を目指していることから、3600億円規模の市場、2030年には15兆円で6750億円規模まで成長することが見込めるでしょう。
2020年や2030年を見据えると、大手企業が参入するには十分な市場規模があると考えられます。

1-2HISのコミット量
サービスを回す企業のコミット量なのですが、日本でリリースされたのは2017年の5月だったのですが、2015年からタイを中心に運営されていたとのことです。そこでのテストマーケティングを経て、日本でのリリース、そし2017年10月から日本人の通訳案内士での試運転(初速で300人が登録)、その後、2018年1月の法改正で一般の人の利用も可能になるといった流れを踏んでおり、運営年数からみても、ちゃんと力を入れて運営していたことがわかります。

1-3競合
ツアーマッチングビジネスでの最大手の競合といえば、Airbnbです。まだ知らない人も多いかも知れませんが、エアビは最近、宿泊だけではなくて体験もシェアするサービスを開始しています。

体験予約サービスは全世界で2016年から開始され、日本での予約は世界ランキング2位とのこと。2018年6月の時点で昨年度比886%も成長していると報告されています。

Airbnbの体験は、ホスト側が自分たちで好きな体験を登録することができ、値段も自分で決める事が可能です。その、売上の20%をAirbnbに収めるといったシステムです。ゲスト側は自分の好きな体験を購入することができます。その際の手数料は発生しません。

ただ、登録者の人数やマッチングが成立している件数に関しての記載はないため、どの程度の規模なのかはわかりません。
しかし、知名度と体験のレビュー数からして、少なく見積もっても年に数万件はマッチングしていると推測できます。

他にもベンチャー企業が数社、類似のサービスに着手していますが、成長や大きな進捗が報告されているところはほとんどありません。
日本のベンチャー企業で現在(2019年4月)確認できている企業は
RootTrip,Huberのみです。

Airbnbは十分な競合になりうると思いますが、ベンチャー企業に関しては聞くところによると現在は月に多くても3件ほどしかマッチングが成立していないとのことなので、まだまだ競合にはなり得るほどではないかと思います。


1-4マネタイズ
Traveeもマッチングの手数料として売上の20%をホストがHISに支払う形でした。ここはAirbnbと同じモデルです。
1件あたりのガイド料もAirbnbの平均単価が3000円〜5000円であることに対し、Traveeの単価も同じくらいであることを考えれば、無理のないマネタイズ方法なのではないかといえます。


これらの項目から、Traveeというサービスを開始するのには理論上、十分売上を出せる可能性のある事業であることがわかります。

では、なぜ撤退してしまったのでしょうか。
きっと何か、HISでも突破できなかった壁があるはずです。


2.サービスとしての価値(執筆者の視点からの考察)

さて、このパートでは、提供していたサービス自体の価値を言及していきたいと思います。
Traveeがうまく訪日外国人とガイドをマッチングさせられなかった理由が、絶対にあるはずです。

2-1通訳案内士としての代行は、案内側である利用者のニーズを満たしていたのか
まずはじめ、人という観光資源に注目し、通訳案内士として活躍することが誰でも可能になることを利用してつくられたサービスでした。

私たち誰もが、ある一定の英語を喋ることができれば、わざわざ難しい資格を取らなくても、副収入を得ながら自分の持っているスキルで案内可能なんです。しかも、登録しておけばお客さんは自動的に応募がくる。。。

なんて魅力的なサービス、、、、!!

と思うかもしれませんが、本当にこれは案内する側にとって価値のあることなのでしょうか。その詳細まで迫っていきたいと思います。

Traveeの場合、自分で案内するコースを決められるわけではなく、案内してほしい枠組みが最初にある程度決められています。

例えば、
築地2時間コース
浅草・秋葉原3時間コース
東京1日堪能コース

といった形ですでに用意されているコースがあり、そのコースを予約したいゲストが自分を選んでくれれば、案内できるといった流れになっています。

つまり、ホスト側は自分が案内したい場所を案内できるのではなく、ゲストが指定したコースを案内しなければなりません。

また、ある一定以上の語学力が問われており、質の担保を求められます。
それを証明する動画を撮影して、登録しなければなりません。

日程も自分が都合のいい日程を提示しておくわけではなく、予約の希望が入った時点で日程を知らされます。
その日程に自分が案内することが可能であれば、承諾するのですが、そうでなければ見送りになります。

時間・スキル・場所の土地勘

この3つが揃っていなければ、案内するのは難しいです。

いつ予約が来るか分からない日程に即時に対応するだけでも難しいのですが、行き先も応募が入った時点でなければ知ることができません。

そう考えると、ホストには少し手間がかかります。

とある訪日外国人向けのマッチングサービスを運営しているベンチャー企業の方とお話させていただいた際に、ガイド依頼は来るものの、その依頼に反応しない人がほとんどだと言っていました。

やはり、手間がかかることはどうしても後回しになってしまうということでしょう。

ターゲットとして適切だと仮定できるのは
①通訳案内士の資格を取ろうと思って勉強中の人
②英語を喋るきっかけの欲しい人
③訪日外国人を歓迎したいといった想いを持っている人

この3者かなと思いますが、案内する意思と動機としてはあまり強くなさそうです。

そうなると、副収入を得ることを目的に登録したのであれば、他でバイトをしたほうが確実に、稼ぎたい金額を稼ぐことができるといえます。

2-2ガイドを集めることと、その管理
ガイドの集め方とその管理方法ですが、集め方に関してはターゲットに向けた広告などを打っていたのでしょうか。プレスリリースはよく見かけたのですが、ガイドを募集するための広告はほとんど記憶がありません。
ある一定層に向けて告知していたと考えられます。


プレスリリースを見る限り、初年度で500名以上のホストを抱えていたことは確認できます。
また、管理に関してはコミュニティ活動を推奨していました。
サイトが消えてしまっているため、証拠をここに貼ることができないのですが、登録者同士での交流を推奨するために、交流会を定期的に開催し、コミット率を高めるための施策を打っていたと言えるでしょう。


2-3アクティブとしての状態を保ち続けるために必要なこと
アクティブとしての状態を保ちつづけるためには、やはり運営側とのコミュニケーションが必要であると言えます。
そして、登録してくれているホストにTraveeというサービスに熱中してもらう必要がある。

C2Cのサービスを運営するならば、サービス提供者がアクションするための十分な動機づけがなりません。
サービスを受ける側ばかりを意識してしまいがちになりますが、提供者が動いてくれなければ、自分たちのサービスはサービスとして成り立つことができません。

そのためには、提供者である人がそのプラットフォームで生計を立てられるくらい十分な収益が入ってきたり、生理的欲求を満たすことができるくらい強い動機付けが必要であると考えます。

また、利用する際に、ある程度自分の都合で利用可能であり、何を提供しなければならないか、想像できることが重要だと思います。

そう考えると、Traveeはそこに当てはまったサービスであったわけではなさそうですね。


3.訪日外国人観光客にローカルツアーを提供するために必要なこと


ここまで考察してきて思うことは、市場としての大きさも、ニーズも挑戦する価値のある領域であると思います。
大企業やベンチャーが事業撤退しているからといって、これから参入を考えている人が諦めるにはもったいない領域だと思います。

じゃあ、どんなサービスをつくれば、提供者を担保でき、訪日外国人に満足してもらえるようなサービスを作り上げれうことができるのでしょうか。


結局、このサービスの肝となってくるのは、"人"です。

日本の観光資源として、人を価値にして海外の人に届けようというのが大きな概要だと私は捉えています。

モノとは違い、安定性にはかけます。
スケジュールや相性にも左右されてしまいます。

人を価値にするのであれば、共感してくれる多くの人を巻き込み、提供側に強い動機をつくり、提供することが重要となってくるでしょう。

じゃあ、どうするのか。

実は、その答えがうえの女子だったりします。

人をアクティブな状態で担保しておくために、あえてリアルコミュニティベースで人を募集します。
ウェブで登録してもらうのではなく、常に活動可能な状態にしておきます。

しかも、案内するのはいつも20代の女の子。
年配の熟練ガイドさんではないですが、大学で外国語を専攻していたり、留学経験のある子が集まっています。
訪日外国人とのコミュニケーションに興味があり、自分の意志でやりたいと思ってくれた子を一人ひとり面談して選んでいます。

行き先も、当日までわからないなんてことはありません。
私たちうえの女子では行き先は常にひとつ、上野です。
文化・芸術のまちである上野には、美術館や博物館だけでも上野公園周辺に5個もあります。(東京国立博物館・国立西洋美術館・国立科学博物館・東京都美術館)
その他にも、上野動物園やお寺・神社、そして歩いて数分のところにアメ横商店街も。
ハイカルチャーとローカルチャーが混ざり、1日で文化体験から買い物まで何でもできる場所です。

訪日外国人が日本でする娯楽部門の1位(19.5%)である博物館・美術館巡りという結果を見れば、外国人が喜ぶ場所であることは間違いないです。
ちなみに、2位(4.6%)が現地ツアー・観光ガイドで、買い物はほぼ全員(96.4%)の方がするとのこと。
※2018年に観光庁より報告された訪日外国人の消費データより。


また、上野の中でもルートがいくつもあるわけではありません。

何ヶ月も歩き回り、上野を楽しむには十分なルートをつくりました。

また、英語や土地勘に詳しくない人でも案内できるように、そして外国人とのコミュニケーションで困ることがないように、歴史を図解して紙芝居にした案内道具を一緒に持っていきます。


私が、この結果を見て思うことは、まずはサービスの安定化を図る事が大事だと思っています。

どうしても、不安定になりがちな人という資源。
人はモノと違い、生活リズムもあればスケジュールも自由ではない。
それらによってすべてが左右されてしまうとなれば、利用希望者がいたとしても、なかなか利用してもらうには至りづらいです。

逆に言えば、外国人観光客は少し雑な言い方をすると、放置していても来訪人数は増えていくことは確かです。
もちろん、集客経路をしっかり掴まなくては、お客さんは捕まえられませんが、価値が不明確なままでは利用者は増やせません。

人を価値にするサービスをつくるのであれば、人という資源をいかに安定的に補給し続けられるかはキーポイントになってきます。

サービス提供者である人のコミュニティをうまく作り上げ、自分たちのサービスに熱中してもらう。

そんな仕組みをつくることが重要です。
ウェブ上だけで突破できる壁ではないんです。

さて、筆者である私は2013年から「人・旅・コミュニケーション」といったテーマで仮説検証を続けてきました。

大学2年生の頃から、100人をマネジメントするコミュニケーションが重視される旅イベントを関東・関西で開催してきたり、学生100人規模のリアルプラットフォームのコミュニティの管理を行ってきました。

人をどのようにONの状態に保ち続けるかをテーマに5年は活動し続けてきました。

そんな私が、2020年目前に今までの経験をフルで使ってつくっているのが、うえの女子のサービスです。

もし、訪日外国人向けに人を価値としたサービスを新たに考えている方、既に従事されている方、もしよろしければお気軽にご連絡ください。

コミュニティマネジメントといった観点でお話・協力させていただけることがあれば嬉しいです。

長くなりましたが、今日はこの辺で^^


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いーはー

コメント2件

はじめまして。終了していたんですね。私も運営から営業あって登録したのですが、規約とガイドライン見て即退会しました。

ガイドマッチングサービスの仮題は、プラットフォーム側が責任を一切持たない点だと思います。
何かあったら当事者同士で解決を、私たちはマッチングしているだけ、これではリスクが高すぎてとても利用できません。
外国人相手だと日本とは違い、訴訟大国ならクレームばりばり入れてきます。
従来、これらプラットフォームは手数料抜くかわりに責任を取るというのが真っ当なやり方です。美味しい汁だけ吸おうとすれば潰れるのは当然ですね。
長文失礼致しました。
斎藤やんじぇさん、コメントありがとうございます。

そうなんですね。それは利用者じゃないとわからない視点だと思うので、有難いご意見です。
責任問題もたしかに要素の1つではありそうですね。
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