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出版社で、編集サイドや編集あがりの経営者に見落とされがちな、営業サイドと、販売管理、物流などのインフラの価値について

なんか、エラそーに書いてる人のSNSを読んでて腹立ってきたけど、そんな僕も、ここでエラそーに書いてるわけだから、まああんまり変わらないけど、それでも書かないと、ここはとにかく書かないと、なんの価値もないnoteになっちゃうので書きます。

出版社の経営者が、「良書作ります」「私は彼らみたいな出版社とは違います」「私は某版元で、これだけの仕事をしてきました」と、言ったところで、これだけの出版不況の猛吹雪のなか、何かしらの新しい売れるビジネスモデルか、確実に売れる本を書いてくれる著者、資金援助や経営支援、販売協力してくれるパトロン、グループなどを持っていなければ、相当出版社の経営は厳しく、それこそどんなに作りたくても、書いてくれる著者がいたって、本を作るには当たり前ですが、印刷代、紙代、製本代、倉庫代、物流のもろもろ費用、販売管理費を先に持っていないと作ることはできないんだから、エラそーに本作りの理想を語ったところで、書いてくれた著者の本は出し続けられないし、最悪潰れたら絶版ですよ。

そして何より出版社の経営で大事なことで、多くの(特に、それなりに20年とか30年とか歴史があって経営者が高齢化したような)出版社で見落とされがちな土台、インフラの部分が、しっかりしてないと、かなり売り損じると思います。以下にその点書いてみます(人によっては、特に編集部でしか働いたことがないようなベテランの方などは腹が立つと思いますが、大事なことなので書きます)。

時々、編集者でちょっと有能で天狗になっている人が独立して経営者になってから、全然、営業や販売管理や会計的なことをろくに手をつけないで勢いで本作ってるのを見かけるけど、そんなんでやってけるほど、この不況下で出版社をやり続けることは甘くないです(まあ、幻冬舎の見城社長とかは例外です。角川時代の実績とか熱量が桁違いなんで)。

かくいう僕も、来年も果たしてやり抜けるのか日々不安で、毎日毎日、「この販売のやり方で、いくら利益が出るのか、もっと他のやり方で売った方がいいのではないか、ほかに販路はあるかも、このネットの宣伝の費用対効果は、などなど」出版業界だけじゃなくて他業界の経営者の本まで読んだり、経営の研究をし続けてるけど、ずっと不安です。

以前、サラリーマン時代に、経営のビジネス書ばかり読んで、あらたな戦略を考えて、いろいろ手を打っていた僕に対して「春日さん、そんなビジネス書読んだって、それは大企業の話だから、うちみたいな小さな出版社には、なんの役にも立たないよ。春日さんは経営が分かっていない」などどエラそーに上から目線で言われたことがあるけど、実際はそのあと、(これ自慢じゃないけど)僕がリーダーで現場の統括をしていた期に、会社の過去最高売上と、かなりの利益を出すことができました。それまで数値目標すら、ちゃんとしたものを出したことがろくになかったその出版社でも、いろいろと変えていけば結果が出るということが分かって嬉しかったし、それは今の僕が、経営戦略、方向性を決める上で、とても役に立っています。

まあでも結果が出たら出たで、よく売れた本があったから、とか、あの人が持ってきた企画が良かったとか、全部編集側の人の業績にすり替えられたことがあったけど、その時は、「ああ、出版社って、やっぱり営業、宣伝、販売管理と物流やシステム的なインフラの成果なんて、まったく無視されるんだな」と思ったものです。

前にも書いたけど、売れる本、ヒット企画は、たしかに必要で重要です。それがないと、会社の売上と資産を、さらに、はっきりとしたレベルまで押し上げて、大きく前進することはできませんから、それは間違いないんですけど、大多数の現実の小規模な出版社の一年の大部分は、普通の平均的な売上しかあがらない本か、売りにくい本、まったく売れない本が出ている時期が90%ですから、それらをちゃんと売り損じなく1冊でも多く売るためには、営業、宣伝、販売管理、物流等インフラの整備と日々のバージョンアップが欠かせないのです。現代では、かなりの人がネットから情報を得ている時代、見やすいホームページ作り、SNSでのこまめな情報発信、ネット書店への早めの情報登録、大手版元のように大規模な広告やテレビとのタイアップが打てない以上は、新刊が出るまでの、こまめで根気の必要な書店や取次への営業宣伝、いただいた注文の適切な管理、仕分けと分析、書店の開店と閉店情報の管理とその情報の営業、販促活動への反映、倉庫の手配、新刊が出てからの在庫管理と物流の管理、売れた時の営業宣伝、滞りなく、かつ本を早く取次、書店、読者に送り続けることができる物流管理のシステム作り等々、ここすごく地味な部分なので、編集側の人間には見えないし(見えたとしても自分が通ってる書店に担当本が並んでるかとか、分かりやすく目につく狭い範囲のことだけ)、最悪なのは、その辺に理解のない編集者あがりの経営者もまったくその日々の地味な営業サイドの活動の価値が本当の意味でリアルに理解できてないし、しようとしない。

土台があってこその本の販売なんですから。

などと、エラそーに書いてしまったが、まだ弊社は、やっとこの半年で中堅版元と変わらない物流とインフラを整備できただけで、スタッフも経営者の僕を含めて3人で、専任の営業部隊も持っていないから、特に書店へのこまめな営業、販売促進はできてきない。

これらは、来年からの課題と目標です。

#出版社
#編集
#本

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