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着物にまつわるエッセイ集✍️

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着物と着付にまつわるはなしをまとめました。 ヘッダーの写真は弥生美術館/竹久夢二美術館の谷崎潤一郎と細雪関連の展示のものです。
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記事一覧

浴衣の記憶

浴衣の記憶

浴衣には特別な思い入れがある。
幼い頃からどんな浴衣を着たかをよく覚えている。
白地に色とりどりの花の浴衣、藍色の朝顔の柄のもの、そのあとは母の紺の浴衣を着たと思う。
着道楽の素養も多少あって、たぶん好きだったのだと思う。
浴衣には短い夏の思い出がよく馴染んでいる。

思春期は部活や勉強で忙しかったり、引きこもり生活を満喫していたせいでお友達と出歩く生活もしていなかったせいか、夏に浴衣を着て出かけ

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着物は業のようなもの③(終)

着物は業のようなもの③(終)

いけばなと道具

私が母の着物を丁寧に扱うようになったのは、いけばなを始めたことと無関係ではない。
実のところ所属している流派では着物を必要とする機会はそんなに多くないのであるが(全くないとは言わないが、いちおうmustでもない)、必ずしも着なければいけないものではないということは書き添えておきたい。

いけばなは基本的に花をいける技術を身につけるものだ。
センスを磨きたい、花をいけるコツを知りた

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着物は業のようなもの②

着物は業のようなもの②

振袖の記憶

成人式の頃は特に着物に(というか洋服全般と自分の外見に)興味がなくて、式に出るのもめんどくさいし振袖も着なくていいよ、という女子に見事に育っていたのだが、20歳になった時に母に写真は撮ろうよ、と言われた。
家に振袖あるし撮った方がいいというのでまあそれでいいか、と思って着たのが最初。
ひさしぶり振袖を引っ張り出してみると、ずぼらな保管をしていた割には胴裏のシミはあちこちにあるものの、

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着物は業のようなもの①

着物は業のようなもの①

着物は業

女性にとって、着物はある種の業のようなものではないか、と最近思う。
たかが服。
されど服。
新しい服は新しい世界に連れて行ってくれる扉なので、たかが、とは言えないのだけど。
着物は業が深い、と思う。
母から子や伯母/叔母から姪などの関係性で受け継いだりして、物を繋いでいくからだろうか。

下世話なことを承知で言うと、七五三や成人式、結婚式や入学式/卒業式以外の場で、誂えられた着物をきち

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着付けを習い始めた話

着付けを習い始めた話

はじめに着付けを習い始めた。
そのこと自体に深い理由はない。

どちらかというと不可抗力(ってほどでもないが)に近くて、少々着物を自力で着られないとちと困ることが増えてきたな、という感じで、たまたま、母が着付の教室に通い始めるけど一緒にどうかと誘われたので、乗っかった、というのが実情である。

実家のタンスに着物がそこそこ眠ってるのも知っていて、またちょうどパートタイムで働いている仕事の勤務日では

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