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博多三名娼

江戸時代に栄えた博多の遊廓、柳町には三名娼と呼ばれる三人の女性の名が残されています。

小女郎(こじょろう)、明月(めいげつ)、染衣(そめぎぬ)の三人です。

小女郎は博多小女郎波枕という歌舞伎の演目にもなっています。

三名娼の中でも人気なのは明月です。

博多のお土産で一番人気、博多通りもんを販売している会社の名前も明月堂ですね。

昔は明月堂の饅頭の包装には、着物の女性が描かれていました。

明月は本名をお秋と言います。

明月を有名にしたエピソードがあります。

騙されて柳町に売られたお秋は、遊女となってからも殺された許婚の弔いの為、毎晩萬行寺(博多区祇園町にあるお寺)に詣でていました。

時間がなくてお寺に行けない日は、お寺までの歩数を歩いて賽銭を奉げていたそうです。

病気で亡くなった後、明月は萬行寺に葬られます。
すると数日して、明月のお墓から蓮の花が咲きました。

不思議に思って墓をあけてみると、その蓮は明月の舌から生えていました。

仏教では蓮の花というのは、重要な意味を持ちます。

蓮の花には「汚泥不染」の徳があると言われています。蓮の花は汚れた泥の中で、綺麗な花を咲かせます。

汚れた泥が現世の痛みや辛さを表しており、その中からでも綺麗な花を咲かせる(花を咲かせるのは、悟りを開くことを表す)ことができるということです。

明月は遊郭という女性にとっての苦界に落とされました。そんな境遇でも、信心を忘れなかった彼女だからこそ、蓮の花が咲いたのだと思われます。

口蓮華(くちれんげ)と呼ばれるこの蓮の花は、今も萬行寺に残されています。

昔はいつでも見ることができたそうですが、今では毎年5月に行われる明月の法要で、5年に1度公開されています。

実は今年がその年で楽しみにしていたのですが、中止になってしまいました。

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