『作文指導を変える つまづきの本質から迫る実践法』を上梓しました。
新しい本を出すことができました。
この本は、30数年掛けて書いた本ということが言えます。
大学を出て中学校の国語の教師になってから、ずっと指導をして、考えて、改善してとしてきたことを全て書きました。
私が指導してきた子供たちは、私の知る限りでは全員が書けるようになりました。その指導の仕方を書きました。
この指導方法をもとに、免許更新講習でも講座を担当してきました。そこでもお陰様で高評価を受けました。
作文の指導の仕方は、なぜか習わないまま教員になっているという先生たちが多くいます。しかし、中学高校では、作文を国語の教員以外が、担任として行事の後に書かせることが多くあります。本書は、そこで困っている先生にも助けることができると思います。
以下に、本書の「はじめに」を載せます。
多くの方に届きますように。
はじめに
「作文って楽しいね」
1人でも多くの児童・生徒*1が,この言葉を言えるようになってほしい。このような作文の授業を作り出せるようにと,大学で学生たちを指導しています。
しかし,作文の指導は難しいものです。理由はいくつかあります。ありますが,最大の理由は,作文の指導の仕方を指導者が知らないことでしょう。
私は,教員免許更新講習で「体験作文の書き方」という講座を担当してきました。その講習では,受講した延べ400人以上の先生方にアンケートを取ってきました。その結果,作文の書き方や,作文の指導の仕方を,大学や研修で習ったことがあるという先生には,お会いすることはありませんでした。
教師の仕事のメインは,授業をすることです。その授業では,習うものに関して「つまらない,分からない,できない」という思いをもっている子供が,「面白い,分かった,できた」になるように指導していきます。
授業では,泳げなかった子供が泳げるようになり,解けなかった問題が解けるようになり,歌えなかった歌が歌えるようになります。これは,指導者である教師が指導の方法を身につけているから可能になります。しかし,作文は指導者が指導の方法を知らないまま,指導しているという実態があきらかになりました。これはかなり問題ではないでしょうか。
また,面白い事実もあります。子供たちは,必ずと言っていいほど行事の後などに作文を書かされます。ところが,平成10年,平成20年,平成29年度版の,約30年間の小学校・中学校の学習指導要領には,「作文」という言葉は出てきません。それはなぜでしょうか。この解説は,本書の「学校でなぜ『作文』をするのか」でしていきます。そこにたどり着くまで少しお考えください。
「じゃあ,あなたは最初から作文の指導ができたの?」
…と思われるかもしれません。中学校の教員になった時,作文の指導法は,私もよく分かりませんでした。国語の教師なのに?ではなく,国語の教師だからだと考えています。
国語の教師になるには,国語が好きで国語ができることが必須です。小・中学校レベルの国語は,授業で教わらなくてもできる力をすでにもっています。作文も書けます。
そんな私が中学校の教師になった時,子供に国語に関して何が分からないかを確認すると,(え,そんなところが分からないの?!)ということがたくさんあったわけです。
そこから,私の作文指導の修行が始まりました
作文なんて指導を受けなくても書けていた私は,自分がどうやって書けているのかをメタ認知する必要がありました。また,子供たちの実態を観察し,問題を発見し,解決するための指導方法を開発することをしていきました。
私が児童・生徒・学生の頃は,自分自身では無自覚のまま,言語化されることなく,作文を割とうまく書き上げていました。しかし,教師は,それを言語化して,子供たちに説明できて,子供たちが書けるようにできなければなりません。それが教師の仕事だからです。
本書は,私が中学生への作文指導をどう開発してきたのかの過程に従って書き進めていきます。どうぞ,お付き合いください。
なお,GIGAスクール時代である今,子供たちの手元に文章作成のためのディバイスがあるのに,これを活用しないのは非常にもったいないと思います。本書は手書きの作文指導をベースに書いています。しかし,本書で説明していることは,様々なディバイスを使って作文をする時にも活用ができます。手書きにこだわることなくご活用ください。
演習1
では,早速演習を始めていきましょう。原稿用紙を用意してください。以下の指示に従って,作文を書きます。これは誰に見せる必要もありませんから,安心して書いてください。この後,作文の指導方法を考えていく上で大事な資料になります。書いて,取っておいてください。
①「まずは書いてみてください。テーマは,『夏休み』。時間は5分です。しっかり書いてください。終わらなかったら宿題ですよ。では,どうぞ」
執筆中
②「5分です。やめてください。では,隣の人と交換して読み合ってください。嘘です。やらなくていいです。これで演習を終わります」
演習2
①演習1で出された指示で,(それはちょっとおかしいんじゃないの?)と思った指示がありましたら,それを原稿用紙の裏側に書き出してください。いくつ書き出しても結構です。
準備は整いました。さあ,体験作文の指導の仕方について,学んでいきましょう。
本書を読み終えた時,みなさんが,
(ああ,早く子供たちに作文指導をしてみたい)
という思いになられたならば,私は幸せです。
そして,みなさんの教室から
「先生,作文って楽しいね!」
という声がたくさん聞こえることを願っています。
2023年1月 /池田 修
*1 児童・生徒のことを本書では,以下,子供と表記します。
よかったらサポートをお願いします。いただいたサポートは、アーティストとしての池田修の活動費に使わせていただこうと思います。