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短歌見聞録 #8

おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃって生きてたらはちゃめちゃに光ってる夏の海
/青松輝(ネットプリント「第三滑走路 8号」)

現代短歌の象徴ともいえるこの歌。歌人界で賛否両論の激論が起こったのも記憶に新しい。私は衝撃を受けたとともに、短歌の可能性を目に見えて押し広げた歌として後世に残ると確信した。私は大好きです。

韻律のスピード感は言わずもがだが、読み手の感情、歌い手の感情で5・7・5のリズムが揺れる。そしてそれは、その人がどう「生きて」きたか、今はどう「生きて」るか、どう「生きて」いくのかということだ。

そういった観念的な上句に対して、「はちゃめちゃに光ってる夏の海」という、非常に具体的で情景が浮かぶ下の句が並ぶ。
リズミカルに、海風のように読み切ってしまった後に、引く波のようにはたと振り返って「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃって生き」るとは何か、と水平線を眺める。その時間性、空間性のバランスをリズムが支える。

この歌には以下の詞書がついている。

短歌、これくらいでいいですか?こっちも忙しいんで……

これが大激論の火種になったのだが(私は原文のこの表現も非常に好きなのだが)、青松さんは自身のブログで一連の騒動を振り返り、以下のように締めくくっている。

短歌のことを信じるがあまり、同時に短歌のことを疑い、否定したくなり、短歌に対して照れていた。世界や他人、友人や家族や恋人に対してもそうだった。

https://vetechu.hatenablog.com/entry/2021/04/27/220848

今は、いつか出すつもりの自分の歌集には、この歌は詞書なしで載せてもいいんじゃないか、と思う。はちゃめちゃに海が光ってもいい。それに見合うくらいに生きたなら、僕たちは報われてもいいはずだ。

https://vetechu.hatenablog.com/entry/2021/04/27/220848

その時まで、私たちは「生きてた」いと思う。

アオマツブログ「CRAZY FOR YOUの季節」
https://vetechu.hatenablog.com/entry/2021/04/27/220848

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