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営業ステージの転換に伴い、営業責任者は変遷していく(appendix)

アルー株式会社の起業・経営の経験に基づき「スタートアップ営業組織作りの教科書」と題した営業組織開発ノウハウとして、企業の成長ステージ毎に発生する課題に関する記事を書かせていただきました。スタートアップ起業家の方(特にBtoB)のお役に立つ内容であれば幸いです。

さて創業からプレIPOまでの各ステージの記事は前回で完結しました。
今回は付録として「営業責任者の変遷」という観点から、各ステージに必要となる人材像について解説をさせていただきます。


①ステージ毎に営業責任者は変わっていく

営業責任者に求められる能力、資質、行動は企業のステージ毎に変わってきます。

「営業活動」のゴールが、顧客に価値を提供することで自社としての業績目標を達成し、継続的な成長の基盤を作るということは、全ステージにおいて共通です。

一方で、各ステージ毎に、
(1)顧客への価値提供手段
(2)業績目標達成手段
(3)継続的な成長基盤構築手段
の3点に関して注力すべきポイントが異なってきます。

各ステージ毎の勘所を押さえた営業活動を行うことが、最も効率よくゴール達成に繋がってきます。

営業責任者を務める方は、一般的にその企業において、営業活動のベテランであり高い営業力を持った方であることは前提になってきます。
しかし、営業責任者にも個性がありますので、各ステージ毎に求められる営業活動の要諦を一人の営業責任者が継続して取り組むことは難しいのではないか?と私は考えています。

もちろん、人は成長・変化をします。一人の営業責任者の方がステージに合わせて、自らを成長させて対応をして行くことも出来るかと考えています。

本記事では、人の交代・人の継続があるかどうかはさておき、各ステージ毎の営業責任者像を解説していきます。


②シード期~アーリー期:スーパー剛腕ワンマン営業

シード期・アーリー期の営業活動は、組織で稼ぐというより、力のある営業個人が成果を出す世界です。

プロダクトについても、完成度が低くPMF(プロダクトマーケットフィット)がされていない状態であることがほとんどです。
そのため、営業が売りながら顧客の声(クレームを含む)を改善をしていくケースが多いでしょう。プロダクト開発技術責任者の支援を得ながら、営業がハンドリングする必要があります。

こうしたステージの営業責任者は、ゼロから売上を作れる「スーパー剛腕人材」です。また売上の9割を責任者が担うケースも多いでしょう。

継続成長に向けては、営業メンバーを採用し営業組織化に取り組む必要があります。
しかし、営業メンバーを採用しても上述の通りプロダクトが未熟であり、マーケティング的活動・支援もほぼない中で、すぐに売れるようになりません。
営業責任者は、顧客向け業務で忙しすぎるため、営業メンバーの育成に時間が取れません。またご自身が「能力が高すぎて売れる」ため、売れない人の育成に向いているとも言えません。

この時期の最大の限られたリソースは営業責任者の時間であり、最大のリスクは営業責任者の退職です。

営業組織化を進めるためには、営業責任者以外の経営メンバーが組織化を支援することが大切です。


③ミドル期:成功の型を展開する指令型管理者

一定の業績とプロダクトマーケットフィットがあり、組織の成長に向けて拡大投資をする時期であるミドル期では「組織統制ができる指令型管理者」が営業責任者として必要になってきます。

ミドル期は業績拡大に向けて投資をしますので、組織人員数が一気に増加をします。スタートアップでは中途採用で人数増加をはかることも多いかと思います。中途採用で入社をした人材は、営業経験・スキル・スタイルはバラバラです。

営業活動といっても、個人向け・法人向け、定額商材・高額商材、有形商材・無形商材などの事業特性により全く求められるスキルが異なります。

比較的近い業種から転職をしてきた営業の方は早期活躍が見込める一方で、遠い業種から転職してきた方はかなり苦労をされるケースを見てきました。

また営業経験・スキル・スタイル以上に大きな問題となるのが「組織観」の違いです。皆、前職の影響を受けていますので、自社の考え方・事業特性・組織運営とマッチをしないことがしばしば発生します。人によっては、声を上げて現状を否定する方も出てくるでしょう。

こうしてミドル期の営業部は、営業活動面でもバラバラ、組織観でもバラバラ、という状況になりますので「カオスの極み」の状態となります。

この状況の中で、営業責任者は自分で売ることよりも(まだ大切なのですが)、自社において培ってきた「自社における売れる営業手法」を展開することが大切なのです。

組織に統制を掛けますので、反発も生まれるでしょう。そのため営業責任者を経営トップがバックアップをすることが大切です。

「売れる営業手法」を仕組化して、新規入社営業メンバーへの育成活動を行いながら、もう一つ大事なのは「育成をできるミドルマネジャー」を育てていくことです。


④レーター期~:仕組みで管理する組織経営者

ミドル期までは、営業責任者・営業ミドルマネジャーという人の力にまだまだ頼るところが大きな状況でした。
レーター期以降は、一定の事業が確立し、いよいよ組織として仕組みでの営業活動を行っていく段階です。

レーター期以降における営業責任者は、間接マネジメントを推進する「組織経営者」であるべきです。個人として事業に対するベテランであり営業力があることはもちろん望ましいですが、自分で売って歩くよりも、組織を作ることに時間を使うべきであり、その方が組織全体の高いリターンにつながります。

レーター期以降においては、営業組織もプロダクトも、また開発部門などの支援部門も、一定の成熟を遂げています。ここから更に進化をさせて、生産性を向上させるために必要な企画・仕組み・情報システム等をスピーディーに整備をして行くことが必要です。

営業責任者の下には、複数のライン営業部長と、営業企画スタッフ組織があることが望ましいです。顧客向け価値提供活動は、ラインの営業部長の部署が担います。このライン部署がより活躍できるように、営業企画スタッフ組織の力を活かしていきます。

組織経営者である営業責任者には、ヴィジョン構想力、戦略構想力、そして組織推進能力が求められてきます。


⑤営業責任者の発達

企業ステージ毎の営業責任者に求められる人物像について記載をさせていただきました。

シード・アーリー期、ミドル期、レーター期以降で、それぞれ異なることを記載しましたが、必ずしもどのステージの営業責任者が一番偉い・能力が高いというものではないと考えております。あくまで、ステージの特徴ごとに求められるものが「異なる」だけであり、個々人としての向き不向きが存在する世界であると考えています。

より重要となってくるのは、営業責任者として、営業組織に向かう中で仕事を通じて「精神的な成熟」をしていくことができるか?ということではないでしょうか。

成人発達理論においては、人の成熟(精神的発達)は4段階があると語られています。
(以下、当社代表落合作成スライドを借ります)

第1段階の「利己的段階」は、自分のニーズを満たすだけのために行動します。こうした精神発達段階の営業責任者は、自分さえよければ、自社さえよければ・・・と行動をしますので、結果的に顧客からの信頼を得られない、メンバーからの信頼を得られません。当然、営業結果もついてこないでしょう。

第2段階の「環境順応型知性」においては、周囲の期待を満たすために行動をします。多くの社会人に求められる行動であり、営業として顧客に貢献するためには必要なマインドセットでしょう。
営業責任者にベースで必要な精神発達段階ですが、この段階においては周囲の期待に応えることだけに追われてしまうと、自分の内面のエネルギーが失われていってしまうことがあるでしょう。また営業メンバーに内面からのエネルギーに基づく行動をしてもらうことの重要性に気づかない可能性があります。

第3段階の「自己主導型知性」においては、自分や自組織よりも大きな何かのために、自分とつながっていく行動を取ります。私自身もまだ理解をし切れていない段階です。自ら内面から湧き上がるエネルギーを、よりよいもの・ことの実現のために向けていくレベルになると、営業責任者は組織全体にエネルギーを与える存在になれるでしょう。

第4段階の「自己変容型知性」においては、地球システム全体に当事者意識を持ち、全体のために自分を使うという行動があるようです。研究によれば、世界中の人に1%も存在しない精神発達だそうです。歴史上の宗教家、偉人などの段階です。一つの企業・スタートアップで、この精神段階を持ち得る方がいるかはわかりません。しかしこうした視座で世界を見据えた起業家が存在し、事業を通じて世界を幸福にしていくことができれば素敵だなと考えています。


スタートアップは小さいながら人の集まりであり、人の夢の集合体です。
その中で営業という「顧客に価値を届ける素晴らしい仕事」に対して、責任を持つのであれば、私は人として成熟をしていきたいと思います。そして少しでも周囲に、社会に貢献をしていくことができれば嬉しく思います。


追記:
リーダーとして精神的に成熟するためには何が必要なのか?については、
当社代表落合さんがnote記事を書かれていましたので、ご紹介をいたします。


本記事のまとめ

◆営業責任者に求められる能力、資質、行動は企業のステージ毎に変わっていく
◆シード期・アーリー期:ゼロから売上を作れる「スーパー剛腕人材」
◆ミドル期:「組織統制をできる指令型管理者」
◆レーター期以降:間接マネジメントを推進する「組織経営者」
◆人は成長・変化する。一人の営業責任者の方がステージに合わせて、自らを成長させて対応をして行くことも出来る


次回の記事は・・・・

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