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映画『HOKUSAI』映像の魅力(後編)歌麿と北斎の対峙

引き続き、
映画『HOKUSAI』の
映像の魅力について
書いていきます。

前の記事でも書いた
喜多川歌麿(玉木宏)が
引き続き登場します。

今度は、
葛飾北斎(柳楽優弥)が、

遊郭にいる
蔦屋重三郎(阿部寛)、
歌麿のもとを
訪れるシーンです。

北斎が家を空けている間に、
重三郎がやってきて、
部屋にお金を
置いていきました。

重三郎は北斎に、
絵を描いて
ほしかったんですね。

しかし、人に指図されて
絵を描くことに抵抗があった
北斎はこれを断ります。

それでも、重三郎は
諦めきれずに、
再び北斎のもとを訪れ、
お金を置いていったわけです。

北斎は、
お金を突き返すために
重三郎のもとを訪れました。

あいにく重三郎は、
出払っており、
店の者に聞くと、

歌麿のいる遊郭に
行ったというので、
北斎も遊郭へ行くことに
なります。

当時の喜多川歌麿といえば、
江戸中で大人気の絵師でした。

一方の北斎といえば、
まだ駆け出しで、
「北斎」という名前も
できていない時代です。

態度はつっぱっていますが、
北斎も歌麿を
尊敬していたんですね。

はじめて対峙する
歌麿に対する、
畏敬の念、緊張感が
よく現れたシーンでした。

北斎が歌麿の座敷に入り、
しばらく、重三郎、歌麿との
セリフのやり取りがあります。

このシーンでも歌麿は、
花魁をモデルに
絵を描こうとしていました。

しかも、この花魁は、
北斎が以前、描いたことがあった
モデルでもあったのです。

「お前のところでは
 絵を描かない」
とつっぱる北斎に対し、

重三郎は、
「まぁ、大先生の
 絵の描くところを見ていけ」

といった感じで、
諭します。

ここで歌麿が
北斎の絵について、
ちょっとした苦言を呈します。

歌麿いわく
「下手だとは言わないが、
 お前さんの絵には色気がない」

続けざまに、
皿に盛られた
鯛の表面を筆の枝で叩き、

「上っ面をなぞっているだけだ」
と、北斎の絵を酷評しました。

皿の上の鯛を映した
このカットから環境音のような
うっすらとした BGM が
流れます。

鐘をこするような
暗く冷たい音です。

ここから歌麿が筆を取り、
絵を描きはじめます。

歌麿は花魁の背後から
着物を大胆に肩まで
はだけさせ、
その手に鏡を持たせた。

鏡に映る花魁の顔は、
徐々に恍惚の表情を
帯びていく。

歌麿は、その姿を凝視しながら、
熱心に筆をふるう。

画面は、この二人の様子を
天上から見下ろす形で捉え、

徐々に画面が前方向に
転がるように回転し、
下から見上げるような形に
変化する。

(この間に、その光景を見る
 重三郎、北斎の表情も
 挟まれる)

引き続き、画面は、
鏡を持つ花魁、
熱心に筆をふるう歌麿を映す。

やがて、カメラの視点が
完全に一回転し、

その視点が二人の様子を
見ている北斎に
寄っていく。

その表情に、驚きは隠せない。

今度は、
北斎の表情のアップから、
逆さまに捉えられた
歌麿の横顔がアップになる。

これも時間にすると、
数分の短いシーンですが、

このシーンを観て、
私は息を飲みました。

最初に短いセリフの
やりとりはあるものの、

おもに映像の力によって、
歌麿と北斎の力関係を
うまく示しているんですよね。

歌麿の画力に圧倒された
北斎がどうなっていくのかが、
本作の見どころの
一つでもあります。

他にも紹介したいシーンが
たくさんある本作ですが、

そのすべてを
解説してしまっては、

映画を観る楽しさが
半減してしまうでしょうから、
この辺にしておきますね。

ぜひ、映画『HOKUSAI』を
ご覧になってみてください。

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※トップ画像は
 公式サイトからお借りしました。

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