カープダイアリー第8479話「限りなく透明に近いドジャーブルー…染まる時、日本最強は世界最強となり、そして大谷翔平は…」(2023年12月31日)

2023年大晦日。TBS系、午後5時からの生番組「WBC・ザファイナル」を“紅白そっちのけ”で視聴した人はどれくらいいるだろうか。

過去のWBC大会をなぞったあと、午後6時を回って栗山ジャパンの話になり、宮崎キャンプでのダルビッシュ有を中心にVTRは進んで行く。

これまで栗山英樹さんに関する特番も、NHKなどが数多く放送してきた。そのチーム作りの軸になったのはダルビッシュ有。指揮官のそんな思いを、TBSも年内最後の6時間45分の長尺特番に込めたのだろう。

日本時間の12月28日午前8時過ぎ。ドジャースタジアムでの入団会見に臨んだ山本由伸は、その中でこうも話した。

「19歳の時に、ここでプレーオフを観戦して、そこで前田健太さんが登板しているのも実際に見ましたし、やっぱりその時からメジャーへの思いはすごく強くなったとお思います」

カープのマエケンからドジャースの KENTA MAEDAへ。実はその話の原点もまたダルビッシュ有だった。

高卒2年目の2008年に初めて一軍で投げていきなりの9勝(2敗)。09年8勝(14敗)と足踏みしたマエケンは迎えた2010年、開幕投手に指名されいきなり序盤3回はパーフェクト。8回1失点で白星発進した。

同年5月15日のマツダスタジアムで、すごいことが起こった。

このシーズン最多の3万1842人で埋め尽くされたスタンドの、ファンの視線はマウンドに注がれた。すでにメジャー挑戦を視野に国内頂点に立つダルビッシュ有と、躍進著しいカープの18番の投げ合いが、現実のものとなったからだ。“敵”は連続無失点イニングを、20まで伸ばして広島に乗り込んできた。

カープのスタメンマスクも同じく4月で22歳になったばかりの曾澤。ふたりで2歳上の、推定年俸3億3000万円の大きな相手に向かっていく…

戦況を見守る一塁ベンチのマーティ・ブラウン監督はこの日を前にこう言った。

「ダルビッシュが優れているのは、球速やキレだけじゃない。どういう目的で何を投げるか、1球ごとに考えている。彼ほど自分の球に自信を持っている投手はいない」

試合は1対0、カープのサヨナラ勝ち。マエケンvsダルの勝負は痛み分けに終わった。マエケンは9回121球完封、ダルビッシュ有は8回を投げて記録を28イニングまで伸ばした。さらに、置き土産はもうひとつ。マエケンの打席で、すべての変化球を披露したのである。

交流戦防御率1・05(12球団トップ)をマークしたマエケンは前半だけで二桁勝利、オールスターゲームファン投票トップで初の球宴出場が決まった。

迎えた7月23日の福岡ヤフードーム、オールスター第1戦。セ・パ両軍合わせて2回を投げた投手が4人いたが、パーフェクトピッチングマエケンだけ。球宴初登板初勝利にベストピッチャー賞もついてきた。
 
試合後、福岡の夜の街にマエケンは消えた。目的はただひとつ、ダルビッシュ有と食事するため、だった。
 
ダルビッシュ有-マエケン-山本由伸。
 
TBS「WBC・ザファイナル」には残念ながらマエケンは”出演“していないが、栗山ジャパンWBC世界一への様々なエピソードの中にドジャーブルーに仕舞ったマエケンや黒田博樹さんも絡んでくる。

そして大谷翔平も…

リアル二刀流のデビュー戦は10年前の2013年、6月18日のマツダスタジアムだった。7月が誕生日の大谷翔平はこの時点でまだ18歳だった。でも、すでにマツダスタジアムに隣接するトレーニング施設で、前日入りしたあと独自メニューに黙々と向き合っていた。そんなNPB選手は他にその施設で目撃されていない。

TBS「WBC・ザファイナル」の番組内では、高校1年生当時の大谷翔平が書いた目標達成シートも紹介された。

「ドラ1・8球団」を中心とした「キレ」「スピード160㎞/h」「変化球」「運」「人間性」「メンタル」「体作り」の8項目に関する具体的な“指針”が書かれたものだ。先日、オンエアされたNHKスペシャル「メジャーリーガー大谷翔平2023伝説と代償そして新たな章へ」の中での、つい最近の大谷翔平はまったく同じことを言っていた。

山本由伸の受け答えをよくよく聞いているとやはり大谷翔平との共通点が多いことがわかる。いつか山本由伸の目標達成シートもメディアによって紹介される日が来るかもしれない。

野球、ベースボールといかに純粋に向き合うか?ドジャーブルーに染まる時、日本最強は世界最強となり、そして大谷翔平は…


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