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お金を受け取らない息子

新学期を迎え一ヶ月半ほど経った5月の中頃だったと思う。突然息子が、
「これから定期券代とコンタクトレンズ代、自分で払うわ。」
と言ってきた。
驚いた。

スマホの通信費、遊びに行くお金や洋服代は息子本人が出していたが、昼飯代、床屋代、病院代……他すべては私が払っていた。
「え、大丈夫なの?」
「うん」

一体どうしたのだろう。
大学の友人やバイト先の歳の離れた様々な人と付き合うにつれ、自分がいかに甘えているか気づいたのか?
私がコロナ後遺症になり働けなくなって、私立大学の学費の工面に苦労しているのを目の当たりにしたからか。

それ以上は深く語らず終わっていた。

でも所詮、大学生のアルバイトだ。去年、自動車の教習所に通った費用もローンで本人が毎月払っている。毎月の固定費用を引いたら大して残らないのでは?と思い、彼は今、宅建の資格を取るために勉強しているが、先日その受験料を出してあげようとしたら
「いや、いいです」と断られた。
私の手から息子に渡ることなく行き場を失う一万円札。
仕方なく「そう」と言い、お金を財布に戻した。
それから何回か名目を変えて渡そうとしたが、一向に受け取らない。

そして最近、二人で話してるとき、彼は
「経済的に自立してない今の状況がツラいね」とこぼしていた。

もう小さなこどもではないが、まだ完全に自立できていない自分が嫌なんだろう。
そういう感覚を持っていてほっとする。
オジさんになっても実家暮らしで親にご飯を作ってもらい、家に一円も入れない人、それで平気な人がいるんだから。

息子が離れていくのを、ありがたいのと寂しい気持ちと両方で、見守っている。




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