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 息子が入院した。そして、コロナ禍のせいで、僕は彼のそばにいてあげられない。妻からの連絡を待つしかない。この状況は、ある種のサスペンス映画のようだ。主人公は閉ざされた環境で、外部との接触が限られる。でも、残念ながら僕にはハリソン・フォードのような冒険が待っているわけではない。ただの待機。

 点滴から栄養をもらっているので、成長に問題はないだろうとはいえ、息子はお腹が減って泣いていると妻が言う。僕が想像する限り、それは確かにつらい。そして、それをあやす妻はもっとつらいだろう。それはまるで、ずっと聞きたくない曲がループで流れ続けるようなもの。

 しかし、妻が病院のコンビニで見つけた新兵器、その名も「おしゃぶり」。これが息子の新しい友達になったらしい。妻が息子にそれを口に入れた瞬間、泣き声は止み、一時的な平和が訪れた。息子とおしゃぶり、まるでビートルズの初期メンバーのような良好な関係が築かれた。

 そして何と、病室には他に誰もいない。そう、息子の深夜のコンサートは、少なくとも他人に迷惑をかけることはないとのこと。それだけで僕は、一瞬「幸運」を感じる。妻に息子の様子を尋ねると「今は落ち着いてる」という報告が入る。息子とおしゃぶり、今や名コンビに。

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