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祝!MIKADZUKI MINI、グッドデザイン賞

地元に良いニュースです!石川県白山市にある会社、イナバエンジニアさんのアウトドア用品ブランド「INAVANCE」から出ている、MIKADZUKI MINIが2023年度グッドデザイン賞を受賞しました。さらにさらに、審査員個人が選ぶ「私の選んだ一品」にも選出いただきました!うわーい!うわーい!

MIKADZUKI MINI

なぜこのグッドニュースを私が(まるで自分が受賞したかのように嬉々として)自分のnoteに書いているかというと。。。
一次審査を通過した時点で、「二次審査はブースを作って展示をせにゃならんらしいぞ」と、しかも「単に商品を並べればいいというものでもないらしい」ということで・・・・・・・急遽集められた「二次審査を勝ち抜くためのチーム」のメンバーに私がいたからです。(チーム構成は、CD兼デザイナー、映像クリエイター兼写真家、モデルさん、ディスプレイ会社、そしてコピーライターの私。ほぼ全員ハジメマシテ。)
そう、つまり。それまで私はイナバエンジニアさんとは全くお付き合いがなかったところに、晴天の霹靂でお声がかかってからの、超濃密な数日間からのお盆明けの受賞連絡!!!気がつきゃ社長さんとも仲良しでぃ!という、なんや賑やかで楽しい夏だったわけです。

私の書いたコピーが受賞にわずかでも貢献できたのであればとても嬉しいですし、石川県も銀行さんも今回の受賞に大変沸いておりましてね・・・しかも小規模事業者でこれは快挙・・・!
せっかくなので、きちんとご紹介したいと思います。いやー、めでたい!


そもそも、MIKADZUKI MINIとは?

まずは、これですよね。受賞したプロダクト。見た目としてはコレなんですが。


ゴールドタイプのMIKADZUKI MINI

うん。かわいいけど、なんだろう?って感じかと。
実はこれ、「アウトドア用の蚊取り線香ホルダー兼お香たて」なんです。
使用時はこんな感じです。(※動画担当キザワ氏のInstagramより)

https://www.instagram.com/reel/CvW_xPSNGkg/?igshid=MzRlODBiNWFlZA==

で、先に明言しておきたいのが、MIKADZUKIはキャッチコピーも特別な宣伝広告もないうちから、販売すれば即完売するほどの人気商品でした。(20分で200個完売した。)逆に言えばそれだけ人気があるから、宣材がほぼ存在しておらず、今回急いで作る必要があったのです。
いやはや、イマドキ商品力だけで売れるモノってあるんやー。。。と驚いちゃいます。一つ10,000円以上するのに・・・!

これを製造販売するイナバエンジニアさんは「切削加工」のプロフェッショナル集団。素材の塊から複雑な形を精密に削りだす会社といえば伝わるでしょうか。三次元方向でビャーッと完成形を直接削り出すので、継ぎ目がなく、美しい。
小さな町工場から生まれる数々の部品が医療機器や航空機の部品、果ては宇宙機器のパーツにまでなっていく。いやもう世界観下町ロケットですやん。かっこいい。

ほいで、ほいでな。その技術を使って、「アウトドアのギアとか作ったらかっこいいんじゃない?」と思った社長さんが、数年前にINAVANCEというアウトドアラインで商品展開を開始。これがまたデザインも機能も良くて、キャンパーたち(特に男性)の心を鷲掴みにしたもんで。大変有名なブランドになっていったのです。
(私はキャンプをしないので知らなかったのですが、私がINAVANCEに関わった時点でインスタのフォロワーも1万人以上いた。今1.5万人くらい)

INAVANCE製品の何がいいって、見た目もそうなんだけど、動きなのよ。ギミック。「小気味いい」の。本当は動画で見てもらった方が伝わると思うのだけど、「あ、そこ動くの!?」みたいなところが動いたり、その時の音や感触が良かったり、めちゃくちゃ小さく収納できたり。「INA HANGER」という折りたたみ式ハンガーもオススメなんやけど、これも私、用もないのについシャキシャキやりたくなるのよね。楽しいから。

ハンガーなんですよ。マグネット内蔵で吸着しながらこの状態まで畳めて、ポケットに数本忍ばせられる
シャキシャキ!と展開すると、ハンガーになります。

ということで、イナバエンジニアとINAVANCEの魅力はなんとなくわかってもらえたと思う。
問題はここから。グッドデザイン賞や。どうすれば少しでも受賞確率を上げられるだろう? と、それが私の仕事の焦点だったわけです。章を分けます。

言葉の力で、「見た目」に「見た目」以上の価値を。

キャンパーたちには大人気のMIKADZUKI MINI。でも審査員はキャンパーではない。デザインのプロフェッショナルです。

正直、受賞するかどうかは9割が「見た目一発」なんじゃないかと思っています。ただ、残りの1割をどう作るかで、9割を構成する「見た目」に「見た目」以上の価値をつけられるのではないかと、そんなことを考えていました。
そのためにつける言葉が「これは蚊取り線香ホルダー兼お香たてです」ではだめ。
なぜ「このカタチ」をしているのか、ストーリーと、ムードが欲しい。もっと言えば、この商品があることで人間や社会の何がデザインされ直したのか、書きたい。

なんでそこにこだわるかというと、今回のグッドデザイン賞のテーマが「アウトカム」だったからなんですよ。簡単にいえば、その「モノ」があることで、どんな「コト」が変化したのかという”結果”に重点が置かれている。アウトドア用の蚊取り線香ホルダー自体はこれまでも世の中にありました、が、MIKADZUKI MINIはそれらとはどんな異なる「行動的違い」を生み出したのか。これを書かなきゃいかん。逆に言えば、そこをちゃんと書ければ受賞への決め手の一つになりうると、そう思ったのです。

社長に聞いてみる。
「なんでこのカタチにしたんですか?」
(↑社長が直接デザインしています)
答えは「え、たまたま。色々いじっていたら、これカワイイんじゃね?ってなった」とのこと。まぁ、そんなもんですよね・・・!いやそれでセンスがいいんだから羨ましい。天才。っていやいや、多分言語化していないだけでちゃんとあるんですよ。直感で把握していることを、いかに言葉が後追いできるかが勝負やねんな。

しかし、そうね、社長からはヒントはもらえないわけで(笑)・・・MIKADZUKI。三日月。月かぁ。
月の満ち欠け。潮の満ち引き。一ヶ月。カレンダー。周期。月面探査。ロケット。フック。ドリームワークスのオープニング。花王。横顔。祈り。光。
キャンプ。アウトドア。チル。大自然。冒険。休日。リラクゼーション。週末。
蚊取り線香。郷愁。記憶。夏。おばあちゃんの家。縁側。花火。恋。
お香。おしゃれ。一休み。瞑想。

・・・このへんの言葉とイメージをぐるぐるしつつ、現物を見た翌日がコピーの締め切りだったのもありもはやイナバエンジニアさんの会議室ですぐに書き始めなきゃ間に合わない感じだったのもありで(「お客さんの前で書き始める人いるんですね」とデザイナーさんに言われた。笑 ちなみにデザイナー兼CDの宮下さん、超優秀で弟子入りしたいくらいでした)、ほぼ現場で完成形まで書いてざっくりとOKをいただきました。それがこちらです。

満ちてゆく時のそばに。
三次元切削加工を駆使して造られた、三日月型のアルミ製蚊取り線香ホルダー。手のひらに収まるサイズと19グラムの超軽量で、キャンプや登山など様々なアウトドアシーンに「絵になる快適」を実現します。まるで月の満ち欠けのように形状を変化させて、スタンドからハンギングへと設置方法を変えられる上、専用のホルダーを付ければお香立てにも大変身。いくつもの顔を持つ「ミカヅキミニ」で、満ちてゆく時をお過ごしください。

・・・まぁ、普通っすね、ドヤるほどのもんじゃなかったわ。笑
とにかく月の満ち欠けと心が揺蕩いながら満たされていく時間をかけつつ、モノの形状が変化しながら使い方を変えられるところも月が形を変えていくのと重ね合わせました。私はアウトカムを「行動的変容」ではなく、「時間の質の変容」として描いたことになります。

これがデザインやムービーなど他の要素と統合されて一つのブースの世界をつくり、幕張メッセで審査に臨んだわけでございます。
結果、受賞ということで、嬉しや嬉し。社長もメンバーも取引先も大いに沸いたのでございました。

ところで、今回の仕事を通して、改めて「中小企業のお手伝いはめちゃくちゃ楽しいな」と思ったんですよね。
もともと「中小企業さんのサポートが私のライフワークなんですわ〜」と周りに明言していたので、そこそこ意識的にやってはきたけど、いま一度「なんで好きなんだろう」を考えてみました。ちょっとイナバエンジニア個社の話題からは離れますが、次の章に続けてみます。

「職業選択の自由」は、幸福の必須条件なのか。

なんで小さな会社さんのお仕事が好きか。理由は色々あるけど、最たるものは「仕事と人」の関係の面白さにあると思う。

そもそも私は、かつて、いわゆる日本の新卒一括採用で採用され、その後採用担当者として学生に向き合ったことのある人間であり。
日本の(あるいは当時いた会社の)採用のあり方には大いに疑問を持っていたものの、大筋では「人間は自分の意思に従って自己決定して進んでいくのが幸せなのだ」と思っていまして、学生に向き合うときには「何を望んでいるか」「どんな価値観を持っているか」を一緒に探るようなスタンスでいました。私と相手のミクロレベルでその探究が進めば、双方にとって幸せに結びつく採用(就職)というのはちゃんと可能だと思っていました。(一人一人に時間かけすぎていた傾向はあったけど、しゃあない。)

そこにきて、中小企業の社長さんって、「その家の息子や娘に産まれついちゃったから」継いでいるっていうケースが非常に多いわけで。能動性と受動性の間にいるような感じなんですよ。
もちろん、意識の上ではお一人お一人は主体的に継いでおられるのだけれど、どちらかといえば責任感みたいなもので継がれるケースも実際多いし、もしそれが縮小傾向にある業界・業種の会社だと心情的なキツさはあると思う。それでも踏ん張って継いでいく彼らに対し、「偉いなぁ」と同時に、「モチベーション、どうやって保つのかな」とか「ご本人のポテンシャルを活かしきれる場所になっているのかなぁ。向き不向きもあるやろうに・・・」・・・なんて、だいぶ余計なお世話な疑問も持っていました。いやホント、余計なお世話なんだけども。

ところが、だ。
私の出会ってきた社長さんは、継いだ当初こそ100%前向きじゃなかった人でも、どこかで親の世代にはない新しいことに挑戦して、結果的には面白い世界をつくっている人が結構いるんですよね。地方で、かなり分の悪い勝負を強いられることも多い中でさ。蛙の子は蛙で、結局は親と似た才能や資質を持ってました、っていう結論なの?うーん、そんなに上手くいくかい?・・・ということを私はずっと疑問に思っておりました。で、もしかして、もしかしてさ、創業者よりもやや距離のある二代目、三代目の方が、批判の目を持つからこそ事業の本質をよく捉えているってことはあるのかもしれないなと。だからこそ大胆に社会にフィットする組織やビジネスに変えて行けるってことがあるのかもしれないなと(辻ちゃんのアンチが辻ちゃんのことをファンより熱心に観察&分析しているように、、、ってそれは違うか)、そんなことを思ったりしたのです。あるいは若い時から「家業」という無視できない存在と共にある中で、自分の人生や世の中についてよく悩み考えていたのかもしれない。そっちの哲学性が芽吹いて事業に生かされている、ような。そう感じる事例をいくつかみているうちに、不自由からもぐいと芽を出せるほど人間の可能性ってのは力強いものなんだと妙に感嘆したり、職種や業種・立場が指すものと「そこで”何を為すか”」はまた本質的に異なる(つまり”仕事”は結局自由なんだ)と考えてみるきっかけを私は得られたのです。その面で中小企業、小規模事業者のお仕事は面白い。ダイナミックだし、とてもリアルに、示唆がある、と思う。

イロイロコハコさんなんかは、四代目社長さんがこれまでの疑問をぶつける形で新事業を打ち出して有名になられました。素晴らしい理念をお持ちの会社なので、ぜひ動画をご覧になって!)

いやはや、受賞にかこつけて自分語りしちゃってすみません。


イナバエンジニアさん、MIKADZUKI MINIのグッドデザイン賞受賞、本当におめでとうございました!どんどん有名になってください!どちゃくそ面白いことやっちゃってください!そしてまた私を仕事に呼んでください!笑 今後ともよろしくお願いいたします。

MIKADZUKI MINI ブランドサイト

MIKADZUKI MINI 商品ページ


バイカラーのMIKADZUKI MINI(特注品)。受賞の記念に。
名前の刻印まで!(T T) 一生の宝もんや・・・!


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