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想像は創造

ありがたいことに天候は、夏日から春の爽やかさを取り戻した。雨が降るとのことで少し大きめのビニール傘を手に家をでた。傘のせいか思いの外到着が遅れ、ギリギリに改札を抜ける。身体の中心を風が割り込もうとするけれど、グッと踏ん張って6号車へ乗り込む。

地下鉄に乗れば、時間軸が迷子になって眠くなる。学校まで数駅を乗り過ごしてはいけないので、慌てて小説を開く。文章、言葉が入ってこない。何かがおかしい気がする。そう思って、小説を閉じ車内を見回してみる。

ない、広告がない。中吊りも、窓上も、ドア横も、ステッカーも。

真っ白な車内。景色は変わらず暗い車窓。
どこかのパラレルワールドに飛ばされてきたような気分だった。
もしかして、広告を無くそうとする組織が買い取った逆の意味での広告なのか。それとも、私の思い込みで、ここには無言の圧というどこかの企業の思いがこもっているのかもしれない。

そんな妄想のおかげで、睡魔からは逃れられた。きっと、この車両には何らかの意味と答えがあるのだろうけれど、奇妙な妄想は大事にしていきたい。ウェブで検索しようとした画面を閉じる。広告がないだけで、こんなにも日常は楽しい。今日くらいは、ぼんやりとしてみようか。

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