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中小企業経営、キャリアパスや給与制度ってどうしてる?


「色々あって社員ゼロの状態で制度づくりを始めた」

はじめの自己紹介記事でそんな風にご紹介しましたが、第3回目の今回は僕たち今村不動産の社内制度についてお話ししたいと思います。

(私の自己紹介記事は以下からどうぞ)


例えば給与体系。一般的なイメージで不動産業界の営業といえば、なんとなくインセンティブがついて結果次第で給与がガンガン上がりそうだと思われるかもしれませんが、すべての会社がそうだという訳ではありません。

僕が32歳で起業するまで務めた会社でもインセンティブ制度自体はありましたが、実は明確なルールや基準は設けられていませんでした。評価面談なんて、もちろんありません。3社目に入社した不動産ディベロッパーの会社も営業成績が良ければもちろんインセンティブは付与されましたが、その率はまちまち。おそらく会社全体の業績なども考慮されながら決められていたんだ思います。

当時は「まあ、そんなもんか」と思っていましたし、実際に周りを見渡してみても同じようなものでした。従業員だから会社の経営や制度に対してとやかく言える立場じゃないとも思っていました。けれど、長く働き続けるうちに「よくよく考えるとこれって制度としてどうなの?」と、だんだん考えるようになりました。

給与体系以外にも「何をしてどんなスキルがあれば成長したと会社に評価されるのか」。将来に向けたキャリアパスが見えないことにも不安感を感じるようになっていきました。少なくとも20年ほど前の不動産業界、特に中小零細企業や地場のディベロッパーでは給与やキャリアを体系的に制度化している会社は少なかったんじゃないかと思います。

・ルール化されていないとインセンティブ制度があっても意味がない
・目先の目標が明確じゃないと、何を頑張ればいいのかわからない
・それが続くと同じ会社でキャリアを築くのが不安になってしまう

ぜんぶ当たり前のことかもしれませんが、僕自身が働く側として感じたこの感覚は、今村不動産として制度や仕組みを整えるベースになっていると思います。

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正解がないからこそ実行・改善を繰り返す

そんなわけで、弟と二人で会社を設立して従業員がゼロの状態だった頃から、働く環境整備やキャリア・給与制度づくりについては力を入れていこうと考えていました。とはいえ、はじめは手探り状態。機会があるごとに同業の先輩や営業職の人に職務体系や福利厚生について聞いて回ってみたものの、大手企業を除いてはっきりと体系化されていることはほとんどなく、手本になるものはありませんでした。

ないなら、つくろう。

もちろん初めから完璧な制度なんて構築できない。まして、キャリアパスや給与体系なんて会社によって考え方も違うし100%の正解なんてない。けれど、とりあえず制度化して運用しながら改善を続ける方が、何もしないよりもずっと意義があるはず。会社として明確なキャリアパスや給与体系を制度化する姿勢があるとないとでは雲泥の差だし、まだまだ制度が整っている中小規模の不動産ディベロッパーが少ないからこそ、中長期的に考えると会社の成長や将来の人材獲得にとって強い切り札になると確信していました。

そうして、キャリアや等級制度、給与体系の書籍を読み漁り、組織作りのコンサルティングなども取り入れながら少しずつですが現在のキャリア評価制度を確立させていきました。

せっかくなので、具体的な制度についても少しお話ししたいと思います。

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等級と号俸を組み合わせた明確な給与体系

今村不動産の給与体系は「等級に応じた基本給与」+@で決定しています。具体的には…

といった具合です。

【基本給を決める等級】

「能力評価」と「リーダー性評価」のふたつの視点から、各5項目の合計10項目に会社として取り組んでもらいたい内容を割り当てて、年1回の面談を通してスタッフ個人で目標を設定してもらいます。それをもとに期首の時点で評価者である役員と内容のすり合わせを行いながら、具体的な年次の行動目標を決定していきます。10項目は以下のような項目を設定しています。

能力評価

  1. 顧客との関係構築

  2. 商品開発のアイデア量

  3. 仕事の優先順位と計画性

  4. 専門知識の取得

  5. 交渉力

リーダー性評価

  1. 誠実さ

  2. 社内コミュニケーション

  3. 業績・コスト意識

  4. 実行力

  5. 人材の管理・育成

いずれも定位的な内容になっています。等級の査定に関しては業界を問わず「等級決定の妥当性が見えない」という問題がしばしば起こりがちですが、今村不動産の場合はここも明確な基準を設定することで、評価者と非評価者の認識のすり合わせを大切にしています。10項目ある各評価項目は「-5から+5の10段階のポイント制」にしています。この全10項目を評価していき、最終的なポイントによって等級=役職を決定します。

重要なのは「マイナス評価もありえる」ということ。はじめて制度をつくった時はマイナス評価はありませんでしたが、運用しながらマイナーチェンジをしてマイナス評価も加えるようになりました。

ポイント総数によって等級が決まります


【営業インセンティブの決め方】

営業のインセンティブに関しても明確な基準をもとに制度化しました。冒頭にあったように、いくらインセンティブが制度としてあっても会社の全体的な業績によって金額が決められてしまうと、働く側からすると不条理に感じてしまうからです。

正直なところ、これにはかなり悩みました。会社の利益だけを求めるのではればインセンティブに明確な基準を設けない方が、経営全体を見た場合に何かと融通が効くからです。けれど「僕自信が働く側として感じた感覚」を優先して、インセンティブに関しても制度化する決心をしました。

具体的には、等級に合わせて利益分のインセンティブの割合を決めています。いちばん低くても5%、高い等級だと15%にもなります。実はこれ、業界的に見ても破格な数字なんです。

等級に合わせてインセンティブ率を変える


不動産の取引はひとつの売買金額が大きいものですが、例えば1億円の利益が出る契約が取れると、主任クラスであっても1000万円のインセンティブが付きます。役職がなくても500万円。この計算でいけば、営業成績さえよければ役職の低い人でも驚くほどの給与を得ることだって可能になります。

実際に専務とふたりで制度設計をしながら「こんな会社なかなか無いよな」なんて冗談まじりに話していたくらいですし、転職してきた営業スタッフもはじめは半信半疑だったと思います。ただ、結果的には明確な基準でインセンティブが設定されているからこそ営業もモチベーションを高く保つことができ、会社自体の業績も毎年向上しています。

営業担当の売上数値目標は、期首に営業スタッフと営業統括役員である専務が話し合って決めるようにしています。スタッフだけに決めてもらうとどうしても目標設定が低くなりがちで、逆に会社側は高く見積りたくなってしまう。だからこそ、お互いに数字をすり合わせて納得のうえ1年間の営業活動を行うようにしています。

結果的に会社全体で見た事業計画も立てやすく、インセンティブに関してもルール化しているので販管費としてある程度の金額を織り込こんで運用することができています。

ただ、これは現在の営業チーム体制に限った制度だとも思っていて、これから採用する人によっては「営業インセンティブよりも安定した基本給を重視する」人だって出てくる可能性があるし、将来的には営業職のタイプによって選択制の制度を導入しようかとも考えています。いずれにせよ、現場の声を聞きながら柔軟に制度改革していきたいと思っています。

【管理部の評価】

営業職であれば「売上」という絶対的な指標がありますが、財務・会計・事務などの職員はその限りではありません。こちらに関しても、各スタッフに求める専門性・スキル・資格などに関して定量的な指標を設けることで、基本給+@の報酬を決定できるように制度化しています。


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個人の目標とキャリアパスを毎年すり合わせる


「等級」で会社として社員に期待する動きを定性的に評価しながら、上位役職に上がるために求められる働き方を軸にキャリアパスを描いてもらう。「インセンティブ」などで具体的な目標を定量的に評価しながら、個人目標を設定してもらう。この組み合わせを期首と期末に面談を通して繰り返して行うことで

・ルール化されていないとインセンティブ制度があっても意味がない
・目先の目標が明確じゃないと、何を頑張ればいいのかわからない
・それが続くと同じ会社でキャリアを築くのが不安になってしまう

と僕自身が従業員として疑問に感じていたことは、いまの時点ではある程度はクリアできているんじゃないかと思っています。

もちろん、将来的に人が増えて組織が拡大するにつれて現在の制度じゃ対応できないことも出てくるはずですが、運用を通して見えてきた課題や現場の声に耳を傾けながら都度見直していければいいやと思っています。


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給与やキャリアは大切だけど
もっと大切なのは働きやすい環境づくり


こんな風に今村不動産ではキャリアや給与体系を整備していますが、いくら制度が整っているからといって魅力的な会社だとは思っていません。僕が社会人になった頃と比べても労働環境はずいぶん変わりました。世の中的にも働き方は多様化していますし、人によって仕事に対する考え方もさまざまです。それこそ、僕の社会人1年目のような睡眠時間3時間以下の超絶過酷なスタイルは、いまの世の中ではまかり通らないでしょう(僕自身は振り返ってもいい経験だったとは思いますが…)

考え方は色々ですが「お金」は仕事を選び、続けていくためのひとつの指標に過ぎないと僕は考えています。今後の会社の規模拡大や人材獲得を考えると、はじめは給与面に魅力を感じて入社してくれたとしても、もっと良い条件の企業があれば簡単に転職してしまうでしょう。そうなると、会社として中長期的に考えている組織体制をその都度見直さないといけないし、そっちの方がよっぽどコストがかかると思います。

給与制度より大切なのは、スタッフがいかに長く自分らしく働ける環境を提供できるかどうか。労働環境がグダグダだと退職要因になってしまう。そう考えて、キャリアや給与制度だけじゃなく労働環境の整備についても社員がいない状態からずっと考えてきました。
売上や利益はさておき、労働環境の整備はどんな会社だってやろうと思えばできるもの。いちばん経営者の考えや企業努力が現れやすいポイントだと思います。

もちろん、環境整備も手探り状態からのスタート。スタッフに子供が生まれることがわかれば産休や育休制度を整え、働く環境が違うスタッフのためにフレックスタイムを導入したり。そうやって徐々に環境を整備していきました。

極論を言えば、僕は仕事をしっかりやって結果さえ出してくれるなら、働き方なんて自由でいいと思っています。創業当時からそんな企業風土があったからこそ、設立から離職者をほとんど出さずに今日までやってこれたんじゃないかと思います。

関わりあるすべての人を幸せにする


会社のビジョンとして掲げているこの言葉は、お客様だけでなく会社の仲間に向けても発信しているメッセージです。仕事はもちろん大切ですが、スタッフそれぞれに生活があり家庭がある。だからこそ、お互いを尊重し合いながら、事業拡大やビジョンの達成に向けて全員で今村不動産としてチャレンジしていきいな、と思います。


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