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前回、新人職員が更衣室で泣いていた話をしました。他部門の新人さんだったのですが、今回はお昼休みに一緒にお菓子を食べた時のお話です。

ポッドキャストのラジオde経営学でお話させていただいている看護師の今川です。前回は「新人職員の早期離職の原因」という記事を書きました。‟新人職員が入職後に様々なギャップに苦しみ、不安に感じる状態に陥りやすいこと”を心理学ではリアリティショックと言います。対処法などは前回の記事をご覧ください。

今回は新人さんの気持ちを聞いてみて、わかったことや考えたことを色々書いてみようと思います。もし、職場に適応できていない、あるいは適応していけるか心配している新人さんを抱えている職場の方がいらっしゃれば、1つの事例として参考にしていただけると嬉しいです。

1)新人さんとの対話


先日の新人さんが来週も職場に来ることができるだろうか?と思い、土日に入る前に声をかけました。「お昼ご飯を食べ終わったら、おいしいおやつがあるから食べにおいで」…そう話すとお昼休みに来てくれました。

新人さんとガトーフェスタハラダのチョコレートラスクを一緒に食べました。そして、「1週間どうだった?」と聞くとすぐに泣き始めてしまいました。前回も本人に聞いたけれどハラスメントを受けて辛くなっているわけではなく、リアリティショックで大きな不安を抱えているのだろうなぁと思いました。「リアリティショックの原因は色々あるだろうけれど、こういう場合は新人さん本人も何が不安なのかわかっていない場合も多いんだよなぁ…少し話しただけで涙が出てしまうし…どうしようかなぁ」とちょっと私も困っていました。

※生活状況の確認


とりあえず、食事や睡眠に影響があるような緊急な状況(病院受診するほど深刻な状況)なのかを判断するために、生活状況の確認をしました。食欲は落ちていない、食べる量も普段と比べて減っていない、睡眠もとれている…そこは大丈夫でした。
職場での状況がそこまで深刻そうに見えなくても、実は食事や睡眠が全くとれなくなっている状態の人も稀にいます。我慢強いため限界に達するまで周りがあまり気づかない新人さんもいると思うので、家での生活がいつも通りできているのか?を聞くのはおすすめです。
ときどき手っ取り早く終わらせたいから、自分の聞きたいことだけ聞く上司はいませんか?
面談などの場で唐突に「食事食べてる?睡眠とれてる?」と尋問のように聞くよりは、「仕事大変だよね?元気あるかい?お家でご飯食べれてるの?」とか「一人暮らし大変だよね。掃除・洗濯・自炊大変だよね?」とかそんな風に日常会話の中で聞くことがおススメです。

今回の新人さんのように泣く表現ができる場合は、早期に話を聞くという介入ができます。しかし、表現しない我慢強い子は要注意なので、生活状況をこちらから聞いてみることは早期離職防止の対策になると思います。

※仕事(実務)で困っていることの確認


新人さんは数日前にまだ独り立ちするような仕事はしていないようだったし、ハラスメントなどの問題もなさそうだったけど、一応確認してみました。特別まだ困っていることはないようでした。

周りから困っているように見えなくても、本人はちょっとしたことでとても困っていることがあります。

本人の主観として困っていることはないか?を聞くことは大切だと思って、いつも確認します。
また、とても沢山の不安や不満などを訴えてくる場合は、一番困っていることは何か?どうして一番困っているのか?を聞くと解決の糸口が見えてくることがあります。

※いままでの経験を聞く


生活状況は大丈夫、仕事(実務)で困っていることもなさそう…何か本人も表現できないような漠然とした大きな不安がありそう。「(泣いて)すみません。」と謝ることが多いし、泣いている理由が本人もよくわかっていなさそうだなぁと感じました。
そこで、今までも今回のように泣いた経験があるかどうか聞いてみました。「今まで、アルバイトしたことある?その時はどうだった?」と確認してみました。すると、アルバイトした時も同じ状態になったことがあるということでした。それでアルバイトは辞めたのか、継続できたのか?を確認すると、アルバイトは継続できたということでした。

なるほど!それはいい経験。どうやって乗り越えたのかなぁ?と思い、新人さんに聞きました。
すると徐々に慣れて大丈夫になったと話してくれました。
その中で同学年の人とは話しやすいけれど、年上の人は怖いという話も出てきました。アルバイトの時は時間の経過とともに年上の人に対しても慣れていくことができたということでした。

アルバイトと正職員で働くのは重複する役割もありますが、異なる部分も多いこと、また今回は専門職種ということでアルバイトの経験がそこまで活きてくるわけではないことを考えると、仕事(業務内容)が出来るようになるには時間がかかることが予測されます。今の時期の新人は実務を行うよりも先輩についていって仕事内容を見学している要素が多いため、仕事について早急に周囲が支援できることはあまりなさそうだと思いました。もちろん、仕事をどんどん覚えてほしくて早急に独り立ちをすすめようとすることがあれば、それは丁寧に進めた方がいいと思います。しかし、現状では無理な進め方をしている訳ではなさそうなので、新人さんには場数を踏みながら誰がどう動いているのかを見慣れていってもらうしかないと思いました。

そういう中で、今、本人の不安を軽減するためにできそうなことは、職場の人に早く慣れていくことだと思いました。年上の人と話すのに不安があり、怖いようでした。仕方ありませんがほぼ全員が年上です。さらに新人さんの部署は4月から法改訂により業務内容の変更があったり、会社としても新しい事業を始めたことによって影響のある部署でした。実は先輩たちに全く余裕がなくなっており、お昼休みなどでも忙しくしていたり、いつも走り回っている先輩がいてほとんど部署にいないということもある状況でした。このような状況では先輩と会話する時間がかなり少なかったのではないか?と予測されました。

※私生活で相談できる人はいるかの確認


新人さんに相談する人がいるか聞いてみると「あまり相談できません」と話してくれました。「迷惑になると思ってもともと友達とかにもなかなか相談できません。」と話され、ご両親にも相談はあまりしないタイプの子のようでした。また、私と今話していることも「ご迷惑ではないですか?」と聞いており、周りの人のことをともて気にしている子でした。

新卒の新人さんは、悩みや困っていることを相談できる人がいるかによっても職場のストレスへの対応能力が変わってくると思います。特に一人暮らしを新しく始める新人は慣れない一人暮らし周りに頼れる家族がいない友達も新生活で忙しいと、職場で相談する人もいなくて一人で悩んでつぶれてしまうケースがあると思います。
また、迷惑をかけてはダメと周りの人に頼ることが下手な子は職場の支援も受けにくく、一人で解決しようとするけれど経験的にも難しく、自力で乗り越えるのは難しいと感じます。

2)対話の結果で見えるもの~新人さんが泣いていた理由

※人としての繋がりを必要としている


ひと通り新人さんと話してみて、ざっくり全体として言えることは孤独で不安だったということじゃないかと感じました。

年上の人と話すのが苦手な新人さんは、忙しそうにしている先輩を見ていたと思います。余裕がない現場では、おそらく新人さんに丁寧に対応できない時もあるのではないか?と予測されます。先輩たちが冷たく見えたり、自分のことを歓迎していないのではないか?と不安になることもあるかもしれません。
まだ仕事を覚えていない状況の新人さんは、自分は職場に迷惑をかけているのではないか?と自分を責めてしまい落ち込む状況もありそうでした。

入職して1~2週間でこのような反応をみせる新人さんに対しては、早く職場の人に慣れて、日常の会話をして、人としての繋がり、温かさを感じることで、少しずつ職場の中で自分の新人としてのポジションに落ち着いて座ることが出来るのではないか?と思いました。新人のポジションの心地悪さが減ってくると、先輩たちから嫌われている?とか歓迎されていないのでは?等の被害的な考えも減って、不安も減っていくのではないかと思いました。

この記事を読んでくださっている先輩あるいは上司のみなさんはいかがですか?
ときどき、「そんなの面倒くさい!」「忙しすぎてそんなことやってられない!」と嘆く方もいるように思います。(それだけ私は大変で余裕がない!という叫びだったりもしますよね)
しかし、新人への丁寧な対応はよく考えてみるとものすごく当たり前のことだったりします。誰でも周りの人に大切にされたいものじゃないかなと思います。

私たちが忙しい中で捨ててきた…本来は大切にしなければならないものが新人さんの丁寧な関りには沢山詰まっていたりします。
「そんなことやってられない!」と嘆く人は、その人自身が自分の身を削って仕事をこなしているということはないでしょうか?
新人さんへの丁寧な関りが苦手な方はまずは自分に優しくしてあげること、自分を大切にすることをおすすめします。
仕事の中でたくさん努力されてきたことはとても素晴らしいことだと思いますが…自分のことを大切できなかった、自分に厳しくしすぎたことも沢山あったのではないでしょうか?
今の若者は大切に育てられてきた世代です。新人さんからも学べる事、また私たち自身が忙しい中で捨ててしまった何かを取り戻すチャンスをくれているのかもしれません。

3)その後の新人さん

※明るくなった新人さん

新人さんから色々な話を聞いた後に、新人さんの職場が今とても忙しいことを説明しました。そして、忙しくて余裕がなくて配慮できないことがあるかもしれないことは謝りました。
そして、実は私たちは新人さんが来てくれて一緒に働くことをとっても楽しみにしていて、新人さんを歓迎していることを伝えました。
また、年上の人と話すのが苦手だったようなので、先輩たちと会話する機会が増えてくると徐々に不安が減っていきそうだ感じること、新人さんの過去の経験(アルバイト)からも慣れてくると乗り越えられるかもしれないねと話しました。そんな話をするころには少し笑顔もみられるようになりました。

新人さんと話した翌日にそこの部署の管理者に新人さんが更衣室で泣いていた話を共有しました

そして、翌週は出勤できるかなぁと心配していましたが、朝に会った時に可愛らしい笑顔で「おはようございます!」と元気に挨拶してくれました。
そしてその後、新人さんの部署に用事があり訪ねた時に表情が明るく、私と先輩たちとの会話を聞いて笑ったりしていたので安心しました。
また、時間外ですが月に1回の苦労や悩みを語る会(職種関係ない、酸kな自由の交流会)があるので、気が向けば参加どうぞと伝えていたのですが、新人さんは参加したいと言われて参加していました。

※まとめ

今回は新人さんは先輩と話す機会が増えて不安が減ったのではないかなぁと思います。放っておいても、自然と先輩たちと会話できた可能性もありますが、このような不安がたまたま積み重なると早期退職につながると思います。自分で乗り越えることを求める場合もありますが、ほんの少しの配慮やお手伝いで、どんどん自信を取り戻していく場合もあるのではないのかなぁと感じます。
個人的には早期発見・早期対処をしておくと後が楽です。若い人はのびしろも大きいので、早く成長してほしいと思う場合はなおさら最初の1年を丁寧に関わることをおススメします。

今回も最後までお読みくださりありがとうございます。
では、また次回!

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