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映画「ぼくたちの哲学教室」 ボクたちはよく「考える」と言うけれど


□「平和の壁」の国

今朝もスキンヘッドの校長が
エルヴィスを口ずさんで登校してくる

ここは北アイルランドの小学校

この国は福島県と同じくらいの
国土面積と人口(約188万人)を有する

カトリックとプロテスタントの対立
イギリスとの連合と独立をめぐる衝突

これらの問題で国内紛争が長期化し
多くの命が失われてきた国だ

今も禍根は残っている
両派を分断するための「平和の壁」がある

壁には銃を構えた兵士が描かれている

登校する子どもたちを
この皮肉な名前の壁は見下ろしている

□対話とは他者を待てること

校長自らが受け持つ哲学の授業
これは「対話」と「思索」を深めるものだ

たとえばこんな命題を投げかける
「怒りがわいたら相手を攻撃していいのか」

生徒たちはそれに対して考える
そして言葉にして自分の意見を表明する

教師も生徒もその発言を遮ることはしない
次の生徒が「ボクは違う意見で…」と話し始める

まとめ役の生徒は「さまざまな意見が出た」と
ふりかえりをするが結論を出すわけではない

議論を見守るオブザーバー役の生徒も選ばれる
「賛否両方の意見が出たことはよかった」と評する

もちろん校長も議論の結論を出すことはしない
みなで素晴らしい議論ができたことを讃え合う

この街では今も迷彩服を着た団体が
自らの党派に勧誘しようと練り歩いている

相手の存在を受け入れることができなければ
すぐにでも内戦を始められるのがこの国なのだ


□衝動から自分を取り戻す

喧嘩したり暴力をふるった生徒は
ホワイトボードの前に呼び出される

ここでも思索する

なぜ相手を殴ったのか
そのとき自分はどう思ったか
それは本当に正しいことだったのか
いまから取るべき行動はなにが適切か

ボクたちはよく「考える」というけれど
それはどうすることを指すのだろうか

考えるというのは言葉を使わないとできない
AだからBで...BならばCだし…それならば…

もし脳内で言葉を使わない動きをするならば
それは「感情」であり「衝動」だ

言葉という小さなブロックを積み重ねて
自分自身や自分の行為を振り返る
そして本来の自分を言葉で規定する

怒りや欲望はうねりのように押し寄せて
自分を意思の力が通じないところへ運んでしまう

もしそんなとき自分が自分でいられるとしたら
単語をひとつひとつならべ言葉を紡ぎ
自分と対話していくしかない

 オレは本当は何がしたい
 そのとき相手はどう思う
 社会にどんな影響をあたえる
 ほかに考えられる選択肢はないのか

それが「考える」ということだ

衝動という感情はあまりに強い
他者は決定的に自分とは違う

だから「思索」と「対話」
それしかないんだ

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