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目立ちたがり屋なオーケストラ部員の反省

吹奏楽部だった中学時代。
オーケストラ部だった高校時代。

中学の時は、コンクールの舞台にのるのにオーディションがあって、ソロを持つのにもオーディションがあった。

選ばれる、ということの難しさやその快感を覚えたのはその時だと思う。

高校の時は、コンクールのようなものはあったけれど、オーディションは無く、
選抜制度さえ無いに等しかった。

「全員がレギュラーメンバー」というのが
部活の売りであり、
新入生歓迎のときには、それを私は繰り返しアピールしていた記憶がある。


ただし、そんな私は生粋の目立ちたがり屋である。

中学の吹奏楽部では楽器や編成の特性上、チューニングのときの基準音になったり、
最前列に座ったり、ソロが多かったり、と
私の目立ちたい欲求は満たされていた。

ソロのときに立ち上がって、ソロが終わった瞬間に拍手をもらえるのは吹奏楽ならではじゃないかな。


しかし、高校でオーケストラ部なると、
そもそも自分の技術の評価が実感できる場所が無くなって、不安になった。

座る場所も弦楽器群たちの後ろ。
チューニングは私の担当楽器の仕事ではない。
ソロも比較的少なめ。


目立ちたい!目立ちたい!目立ちたーい!目立たせろー!!!!!


たしかに部活は、部員たちは優しいし楽しいし、大好きだったよ。
でも、自己表現をするには、私には物足りないように感じる時期もあったんだ。

私は副部長に立候補して、実際に副部長になった。
それには目立ちたいから、という理由もあったかもしれない。
黒髪の部員が多い中、一番のあっかるい赤茶髪に染めていたのも、もちろん目立つため。
いやいや…目立つならなんでもいいんかい君は…、、、トホホ
ガキだぁ…。

当時の私には、オーケストラというチームで数多くの音の中に溶け込み、一つのものを作り上げる良さがあまり分からなかった。

なによりも演奏で一際目立つこと、ソロやアンサンブルが好きだったし、大事だった気がする。

そんな私が変わったのは、現役最後の本番、
定期演奏会だった。

私は前プロと中プロで1stのトップで、二つの曲ともソロがあった。

ほぼ戦略的に目立とうとした。
特に中プロは『仮面舞踏会』で、私の担当楽器であるクラリネットのソロは、とても美しいメロディで目立つんだ。

私は中プロの極募集の時から、『仮面舞踏会』を第一希望として提案していて、運良く中プロとして演奏することになった。

しかもソロもやることになった。
同期の同じパートの子もやりたそうだったけれど、なんとか説得…というか強奪した。
(すみませんでした。)

定期演奏会、現役最後の本番。
私は、中プロのソロの一つを失敗した。

もともと、本番にはとても強く、失敗などほとんどしたことなかったはず。
それでも、音が裏返り、音が出なくなり、誰が聞いても失敗と分かる失敗をした。

休憩時間のアナウンス。
はける部員たち。

私も何事もなかったように舞台上を去った。
でも、一緒に練習をすることが多かった、指揮者とコンミスの顔を見たら、涙が止まらなかった。

二人には「次の交響曲で頑張ればいい」と言われた。
でも交響曲では、私は2ndでソロもない。
目立たない。

「どんなに頑張ったって、もう挽回できないよ」
二人にはその言葉を発した気がする。

目立ちたいという欲求は
自己表現をしたいという欲求でもあり、
私が映像監督として今、熱意を持って仕事をできているモチベーションは、この欲求からきていると思う。

ある意味ではこのnoteを書いているのも、目立ちたいから。
目立ちたいということは、全てが悪いことではないはず。
自己表現によって、私は心が救われてきたから。

交響曲の演奏。
私はノーミスだった気がする。
休憩中に泣いていた割には、心に余裕があった。

難易度的な理由もあるが、ほかの部員たちの音が耳に入ってきて、そのオーケストラというチームの一つのピースとして音を重ねる行為がとても心地よく感じた。

くさいことを言うけれど、
思い返せば部員一人一人のことが大好きで、
それぞれが大切だった。

そして、そのオーケストラ部という世界で一つのチームといつ存在が愛おしかった。

ずっとそれは分かっていた。


交響曲を演奏しているとき、音楽も一緒なのだとようやく気付いた。

一つの一つの音がチームにはかけがえがなくて、重なることで世界で一つの音楽になる。

私だけでは、なにもできない。
そのとき、そのときようやく気付いたんだ。

アンコールも終わり、鳴り止まぬ拍手。
その代の音楽は完全に終焉を迎えた。

もう全員は集まれないこのチーム、もう響くことのない”私たちの音楽”、
世界にひとつだけで大切なもの。

あーあ。
もっと昔にこの大切さ、愛おしさに気付いていればな。

あーあ。
もっともっと、音楽は、部活は、高校時代は、楽しかったのに。

今日はね、幹部のグループLINEで、集まろうよというメッセージが動いたんだよ。

あのときの記憶が少し思い出された。
目立ちたがり屋のとんでもない自己中心的な私をチームの一人として見捨てないでくれて、音楽の一つの音として迎え入れてくれて、
本当にありがとうね。

色々と悔いは残るけれど、今思い返して、「楽しい」と思えるだけでも十分な青春時代だよね。きっと。
本当に楽しかったよ。

来年になれば、殆どの部員たちが大学を卒業して就職する。
今年中に、みんなとまた会いたいな。

世界中探してもどこにもいない、あのチーム、「私たち」にまた会いたい。


今井友梨
映像まわりのクリエイター
contact ▷ imaiyr.36@gmail.com
twitter,instagram ID ▷ @imaiyr

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