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ベトナム人口最新事情:若い?高齢化?日本の人口を越えるのはいつか?

経済成長が続くベトナム、そして日本では「若い国ベトナム」として紹介されることも多いこの国。そのベトナムでは今年4月に10年に一回の人口センサスが行われ、その結果が報道ベースで紹介されるようになってきました。12万人近くが動員された大規模調査で、我が家にも調査員の方が訪れました。そこでその結果速報値と関連報道から、ベトナムの人口最新事情について紹介してみようと思います。

2019年最新の人口は9620万人!

まずは総人口、2019年人口センサスの速報値では総人口が9620万人と発表されました。この数字は東南アジアで三番目、世界で15番目という人口規模になります。1億人直前、ベトナムは人口の面ではすっかり大国の域に入っていますね。

増える人口で、当然増える人口密度。やはり人口密度が多いのはハノイとホーチミンなわけですが、ハノイが2,398人/㎢、ホーチミンが4,363人/㎢と意外と差は歴然。ハノイ市の場合は2008年に隣にあったハタイ省を合併して大きくなったことで、数字の上での人口密度はだいぶ緩和されましたが、市街地区の過密振りはどんどん増しています(このあたりについてはこちらのnote記事もご参照ください)。ちなみに東京都は約6,300人、大阪府が約4,600人とのこと、大阪とホーチミンがかなり近い数字なんですね。

知られざる人口男女比率のアンバランスさ

このように成長する人口は、社会インフラに圧力を与えつつも、経済成長への人口ボーナス期として喜ばしいこと。ただ、あまり知られていない問題点が、それは男女比率のアンバランスさです。通常はこの比率は男女比率が105:100が正常とされる中、2018年の新生児性別比率は女性100人に対して115.1人。しかも一人目の子供の場合男児の数が109.7人、二人目が111.9人、三人目ではなんと119.7と、どんどん男の子の数が増えてくるという不自然さです。しかも、教育程度の高い母親の場合「様々な科学的方法を利用できるので」より男児を産む率が高いという傾向と解釈も紹介されています。この因果関係はやや「?」ですが、ともあれ男女バランスが将来更に悪くなることが懸念されるのは間違いありません。

男女人口比のアンバランスは今でも、特に農村部・山間部で残る男児を重んじる考え方が影響しています。ソンラ省は山岳地域で少数民族も多いエリア、後継ぎを望むといった観念がいまだに強く残っているのでしょう。近い将来には女性が230~430万人足りなくなるとの予測も紹介されており、ベトナム人男性の結婚は難しくなるのかも!?

意外と近い、高齢化社会?

「若いベトナム」「平均年齢31歳」などといった、若者があふれるベトナム社会という報道のされ方が多く、それ自体は今は間違っていない活気があります。ただ一方で、アジアの他国の例に漏れず、ベトナムも急速な高齢化社会を早く迎えるという予測があります。人口センサス速報値を受けた、ベトナム保健省人口家族計画委員会の予測によると、2018年に11.95%に達し、2038年には20%を越える「高齢社会」に入るとしています。2049年には同数値が25%を超えるともあり、来るべき高齢化社会への警鐘を鳴らし始めています。

ベトナムも昔は子だくさんの時代がありましたが、中国の一人っ子政策にならってか、1980年代以降「二人っ子政策」を取り始め、3人目以上の出産には厳しい罰則を科しました。特に共産党幹部、行政幹部、国家公務員などは家族計画が厳格に実施され、筆者知人でも三人目を産んだがゆえに一年間定職にされた学校の先生などもいました。

ただ最近では、都市部を中心に沢山の子供を産みたいという家族は減り、晩婚化傾向も顕著、一人っ子も多く見かけます。ベトナムでも合計特殊出生率は国の平均で2.09、ホーチミン市では1.36とかなり下がっています。中国の例を見るまでもなく、急激な人口構成の高齢化は将来的に問題だという風に人口政策が大きく変わってきています。二人っ子政策もすっかりトーンが変わり「二人以上は産んじゃダメ」から「二人は産みましょうね」に意味合いが180度変わってきました。

日本の人口を越えるのは2040年?

このベトナム人口の話題を日本人とすると必ず出るのは「人口規模はもうすぐベトナムに追い越されちゃうね」という話。確かに今の趨勢からするとそうなる勢い。そのX年は果たしていつになるのでしょうか?

人口予測は色々な仮定の置き方で色々あるでしょうが、この10年間で約1000万人増えたベトナム人口、国連の人口成長予測ですと2040年頃には1億1100万人レベルになることが予想されます。日本の人口は、国立社会保障・人口問題研究所予測によると中位値で2040年には1億1100万人を割ることになります。つまり、2040年くらいに人口逆転のターニングポイントが来そうです。意外と時間がかかるなあ、と思われる方もいるかもしれません。ただベトナムの今後の人口の伸び方はこれまで程は速くない、ということもあるかもしれません。

(出典:日本人口⇒国立社会保障・人口問題研究所、ベトナム人口⇒国際連合「World Population Prospects」)

人口ボーナス期と高齢化社会への入り口の狭間で

というわけで、ベトナムは現在人口ボーナス期と高齢化社会への入り口を同時に迎えているよう。そして、その中で急激に進む都市化は、大都市インフラ整備には大きな圧力となっています。とは言えそれらが、生む時に乱暴ながらも、街に満ちわたる活力、これは引き続き多くの外国人・外国投資をひきつけるでしょう。

ただ、若年層人口が無尽蔵に増えていくわけではない今後、「ベトナムから若い労働力を」と日本の労働力ニーズ解決をベトナムに頼むためには、きちんとした覚悟が必要です。中国、韓国、台湾なども日本と同じ状況でベトナム労働力市場を見つめ、更にはベトナム国内の製造業も今後労働力確保のため賃金含めた待遇改善を迫られるであろうところは明白。日本もきちんとした受け入れ態勢を用意しないと、「日本なら黙っていても来てくれる」時代はもう終わりつつあることをきちんと認識しなければいけません。

11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。