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「黄金の三角地帯」の消費地&経由地へ:大規模化するベトナムにおける麻薬・薬物問題

基本的に治安の良いという評判のベトナム社会。ただ、若者を中心に麻薬・不正薬物にまつわる多くの問題は後を絶ちません。最近でも薬物を使いながらの運転で自動車事故を起こしてしまったドライバーのニュースなども多く報じられ、「単に中毒者の問題」では済まされない社会問題です。

対策も多く出されていますが、実際には問題は深刻さを増すばかりのよう。VN Express記事に近年の薬物摘発増加を巡る記事がまとまっていましたので、以下それを抄訳しながら、ベトナムにおける麻薬・薬物問題の一端を紹介したいと思います(以下グラフもVN Express記事から)。

タイ、ラオス、ミャンマーの国境地域を麻薬の一大生産地ということで「黄金の三角地帯」と言いますが、ベトナムは広い海岸線ゆえの海運の便利さ、そしてベトナム国内にも相当な薬物常習者がいることから、さながら「黄金の三角地帯・営業部」:海外への販売、そして自らも一大市場となっています。最近は大規模な摘発が相次いでおり、4月には「アイス」と呼ばれる覚せい剤1.1トンが摘発。更に、今年5月11日にケタミン(幻覚剤の一種、麻酔薬としても使われる)500kgが摘発された事件、この市場価格は5000億ドン(約25億円)、ベトナム史上最大の額だと言います。密輸売買の大規模化が顕著です。

上記図の左グラフがヘロイン、右が合成麻薬の摘発量(右グラフの2018年摘発量は140万錠)、共に2016年から比較しても2018年は2~3倍になろうという勢いです。ヘロインの今年1~5月摘発量も、既に昨年の半分を上回っていますね。(ちなみに日本は平成30年の不正薬物全体の摘発量が1493kgということで、ベトナムではヘロインだけでこの量を超えていることになります。)

上記左グラフは摘発件数、右は摘発者数、これもそれぞれ増加傾向です。

現在、黄金の三角地帯からベトナムに入ってきている不正薬物の内、20%が国内消費、80%は中継地点ということで、ベトナムの南部、中部の港からアジア各国、世界へ運ばれています。現在ベトナムの人口の0.2%が薬物中毒という数字もあり、その数字さえも「氷山の一角」という評価もあるそう。

実は筆者も最近薬物更生センターで医師として働いていた方の話を聞く機会があり、そこで彼は現在のセンター収容者数は「減っている」と言ってました。意外に思って理由を聞くと、以前は薬物使用者は「やたらめったら捕まえて」センターに入れることができたが、現在では手続きが正式になったので、きちんと裁判所からの命令がないとセンターに入れられないからだそう。手続きがしっかりして進歩した部分もありますが、意外な負の側面も。家族が自発的にセンターに薬物使用者を送ってこない限り、今は公安も「面倒くさがって」薬物常習者を積極的に捕まえようとせず、時にセンターや公安にお金を払って(!?)子供を更生させるために捕まえてもらうケースもあるのだとか。「中毒者は決して減っていない、センターを出て行ってもほとんどが戻ってきてしまう」と彼は言います。

1997年に筆者がベトナム北部のサパをバックパッカーで訪れた時、レストランで現地のモン族の物売りが、お土産物でも売るかのように「アヘンいかがですか?」と売りに来たのは衝撃的で、今でもとても鮮明に記憶に残っています(周辺バックパッカーたちがそれを普通に品定めしていたのに更にビックリ)。そこまでの堂々と売り買いされる場所はもうないでしょうが、それでも地下に潜り大きな問題としてあり続ける薬物の問題。死刑まで適用できる厳罰主義で臨みながらも減らない問題は、ベトナム政府としても頭が痛いでしょう。

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11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。

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いまじゅん

12年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)で働いたり、勉強したり。noteではベトナム情報や中国とベトナムの関係を中心に、語学好き高じて勉強してきた英語、中国語(普通話、広東話)、ベトナム語を鍛えながら、各国メディアや各国の方との話から色々発信していきたいです。

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