見出し画像

【読書感想文】現代医療の要:エビデンスベースドメディスン

(参考書籍:『代替医療解剖』 著者:サイモン・シン、エツァート・エルンスト 青木薫 訳)

『エビデンスベースドメディスン』とは、『科学的根拠に基づく医療』と訳され、「科学的に効果が証明されている治療をしましょうね」という医療を行う上で、最も重要な約束事の一つです。

本著内の『人類が治療効果を科学的に評価する方法(エビデンスの作り方)を発明するより前の時代は、医師が治療介入したほうが患者が死に至る可能性が高かった。』という一文に、その重要性を再認識しました。

その昔の医師も患者を救おうと思って一生懸命治療に当たったことは間違いないでしょうし、その時代にはその治療が最善だと信じられていたのだと思います。

でも、のちに科学的に当時の治療法を評価したところ、患者を救うどころか、危険に晒していたということが発覚したのだそうです。

一方現在はどのようにして、科学的に治療効果を評価するのでしょう。

それは『比較試験』という手法です。

1.ある病気に対する治療薬Aと治療薬Bの治療効果を評価したい場合、まずは、その病気にかかってしまった患者さんに集まってもらう。

2.治療薬Aで治療する患者さんと治療薬Bで治療する患者さんに分ける。

3.一定期間治療した後に、それぞれの治療薬が効いたかどうかを判断する。

下の図は、治療薬Aでは16/20人に治療効果があり、治療薬Bでは10/20人にしか治療効果がなかった状況を示していて、この場合、治療薬Aの方がこの病気を治療する効果があったことが分かります。

画像1

こういった作業(臨床試験と言ったりする)を、世界中の沢山の患者さんに協力してもらって何度も何度も繰り返して、常に治療薬Aの治療効果が高いことが示せて初めて、『この病気は治療薬Aで治療するのがよい』というエビデンス(科学的根拠)が出来上がります。

約300年前のこの手法の発明こそが、現代医学を前に推し進め、発展させてきた原動力であると『代替医療解剖』の筆者らは語ります。

二章以降では、様々な代替医療を紹介し、その治療効果を科学的に評価していくのですが、本書を読んでとても印象的だったのは、その昔、代替医療的な治療だったものも、科学的根拠が示されると通常の医療に速やかに取り込まれていった歴史があったことです。

例え、どうして治療が効くのかが現代の医学で十分に説明されなくても、治療効果が証明された場合には、代替医療は積極的に通常医療に取り込まれる可能性があります。

本文を引用すると、

医療においては、治療の有効性を示すことが最優先とされる。基礎となるメカニズムの解明は、のちの研究にゆだねればよいのだ。

ということでした。

あえて誤解を恐れずに書くと、「医療者がこれから行う治療がどのように病気を治すのか、いくら美しく説明出来たところで、効かなければ意味がない。」という言い方もできるかも知れません。

現代医療、代替医療という枠組みにとらわれず、科学的根拠(エビデンス)を大切にしなくてはいけないと肝に銘じた一冊でした。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?