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原作と脚本の関係について(芦原妃名子さんの死に接し)

漫画家 芦原妃名子さんの死に接し心を痛めております。
同じ歳の作家として、
テレビドラマ『セクシー田中さん』の大ファンとして、
この世から自殺を減らしたいと思っている身として、
受け入れ難いニュースでした。
彼女の事は知り合いでも何でもありませんが、何か自分に出来る事があったのでは、と自分を責める事もあります。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。このような悲しい出来事が続かないようにと願うばかりです。

彼女の死が発端となり、私達が何気なく見ている原作物の映画やテレビドラマの制作現場で、このような問題が度々発生している事が露呈しました。

芦原妃名子さんと出版社やテレビ局側の間で、いったいどのような事が起き、どんな経緯で最悪の事態を招いたのかを、憶測で話しをするのはやめておきます。しかし原作と脚本の関係については思う事があります。
物書きで食べてはいない中途半端な作家の意見ですが、聞いて頂ければ幸いです。

まずは原作者や原案者の想いについて書きます。
僕自身はどのような作品においても映像化する側は、原作者や原案者の想いを最大限に尊重するべきと思っています。訳があって変更が必要な場合は、ちゃんと説明をして承諾を得ないといけない。原作者や原案者の考えを尊重出来ない者に作品を預かる資格は無いと考えています。
そもそも原作や原案を好きで映像化するんでしょ?なのに何故変更するの?という疑問が浮かびます。
今回の事で沢山の作家さんから同様の声が上がっています。現在も係争中であったり、訴えが通り二次使用が止まっているケースも多いのです。
こういう事態を避け、原作の提供を断っている作家も沢山いるそうです。
言うまでもなく、その作品がどう届いて欲しいか、一番知っているのは原作者や原案者です。
原作者、原案者の想いを尊重出来ない方々に映像化はして欲しくない。心の中に『俺らがお前の作品をブラッシュアップしてやるんだ』『映像化する事でお前の作品は売れるんだから感謝しなさい』という気持ちが少しでもあれば、原作物に手を付けないで欲しい。
僕自身も何度かそれに近い状況が起きた事があります。書いた脚本が、知らされないまま変更されていたり、原案の世界観が変えられて発表された事がありました。原案、原作者でる僕にとってそれは耐え難い屈辱であり、怒りで震えた覚えがあります。もし問題への関心が拡がり、誹謗中傷を受ける事があれば芦原妃名子さんのような行動をとっていたのかも知れません。

一方で全く違う見解を示す作家もいます。僕が好きなある作家は『例え自分の書いた作品でも映像化等で自分の手から離れた場合(承諾の上)、その作品はもう自分の作品ではない』と仰っていました。つまり『小説○○○』と『テレビドラマ○○○』は全く違う作品という事です。その作家は内容が変更されても全く平気だという事でした。
漫画や小説が映像化される事は名誉な事であり、その影響で原作が売れ、同時に原作者の名前も売れる。多少の変更は目を瞑るべきで、後は読者や視聴者が判断する事である、いう意見もある。
先に自分が述べた意見と矛盾があるかもしれませんが、僕は今上げた全ての意見が正しいと考えています。
原作者や原案者が変更を許可しているのなら、何をしてもいいと思います。芦原妃名子さんや僕はそうでないというだけの事です。
原作者や原案者には色々な考えを持っている方がいるので、それを理解して頂き、双方が納得がいくまで話し合いをして欲しいです。どちらかの考えに少しでも引っ掛かる部分があればやめるべきです。どちらかが我慢(妥協)してまで作品を映像化する必要はない。視聴者が幸せになる事で、原作者や原案者が不幸になる事なんてあってはならないのです。

続いて原作と脚本との関係についてお話しします。
僕は若い頃、脚本家を目指して勉強していました。インディーズ映画の脚本を書いた事もあります。ですから漫画や小説の映像化の難しさを少しは理解しています。
僕のざっくりとした計算では、長編小説一冊だと二時間の映画にするには情報量が多い。逆に10話のテレビドラマにするには情報量が少なすぎる。
週刊誌に連載している漫画の一話分で作れる脚本は、せいぜい5~10分程だと思います。
テレビドラマの場合、CMに入るタイミングも考えないといけないし、一話毎にオープニング、エンディングのピークを作らないといけない。スポンサーの意向も入るだろうし、放送される時間帯の制約もある。視聴率が悪いと打ち切りもしないといけない。
そもそも原作物の映像化には脚本家や演出家の脚色(シーンやセリフを加えたり削ったり、登場人物を加えたり削ったり)が加わって当然なのです。
漫画原作だと特に大変でしょう。キャラクターに対する明確イメージを読者が既に持っているので、それを大きく崩す訳にはいかないので。イメージに合わないと、原作ファンから袋叩きにあう恐れがあります。
実際に漫画の映像化でがっかりした事ありませんか?僕は何度もありますよ!
『セクシー田中さん』のように連載の終了していない作品を、連ドラでどう終わらせるか至難の業だと思います。

僕は映画の脚本家をめざしていましたが『ひとの考えに合わせる事が苦手な僕に、こんな作業は到底無理だ!』と思って逃げ、制約も原作ファンから叩かれるリスクも少ない原作者(小説家)を目指したという経緯があります。
原作者や原案者をリスペクトして欲しいという願いに併せて、原作物を映像化するって相当大変なんだぞ!という事もお伝えしておきたいです。

以上
亡くなった方の名前をあげる事が不謹慎ではないかと迷いましたが、このような不幸な出来事が二度と起きないようという想いで名前をあげて書く事としました。

この記事にia19200102様のイラストを使わせて頂きました。素敵なイラストをありがとうございます。原作者の意志に添えた使い方になっていたでしょうか?
このタイプライターも可愛いですが、覗いてみたら他にも可愛いイラストいっぱいありました。是非、皆様も覗いてみてください。


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