映像化

それでも、いつの日か  #9

*わたし(娘)の視点や気持ちを綴っています。

再会の1時間前は緊張で何も手につきませんでした。家の中を歩き回っていると、ピンポーン…!

鳴って欲しかったのに、欲しくないような、あべこべの気持ちを抱えて、玄関へ向かいました。

緊張して扉を開けると、そこには最後に会った記憶の中にある父とは全然違っていました。以前は澱んで真っ黒に見えていた姿がスッキリして、脳梗塞を患ったのに以前よりも元気に見えま

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それでも、いつの日か  A面 #8

*A面はわたしの視点や気持ちを綴ります。

彼との結婚を考えていた時が、特に苦しい時期でもありました。それは「結婚式」への恐怖心でした。街中や雑誌で見かける度に、真っ白なウェディングドレスを着て、教会や式を挙げたい気持ちはずっとありました。でも、一緒に歩く父の姿を想像できなかったのです。憧れの気持ちだけ大きくなっていくばかりで、叶わない夢を想いを馳せるだけ。

結婚する前に彼に父を会わせなければな

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それでも、いつの日か  A面 #7

*A面はわたし(娘)の視点や気持ちを綴ります。

社会人になり、わたしは実家を出て1人暮らしを始めました。

父が出て行ってから5年以上会いにせず、連絡先も知りませんでした。ふと考えると、家族の理想の姿と比べてしまう自分がいるため、なるべく考えずに生活をしていました。この頃は家族の話や、結婚式など何か絆のようなものに纏わる感動的なドラマや映画、書籍を見るのがさらに苦手になりました。

そんなある日

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それでも、いつの日か  A面 #6

*A面はわたし(娘)の視点や気持ちを綴ります。

わたしが大学から帰宅すると、玄関の目の前に父の背中が立ち塞がっていました。玄関からすぐ前にダイニングキッチンがあり、引っ越してきた荷物の大半もまだ玄関付近に山積みになり、部屋へ通る隙間がありませんでした。毎回帰宅する度に「どいて…」とため息混じりで声をかけて、場所を空けてもらうのです。

そして、帰るとすぐ目に入るのは「競馬」。

イラストの仕事も

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「○玉出るかも」 -男子発言ノート46

「彼女欲しいよ、おーしまさーん。結婚したいよ、誰か紹介してよー」

事あるごとにそう訴えてくるアラフォー男子が、お茶をしながら報告をしてきた。

「最近、俺モテてるかも」

なになに、よかったじゃないですか〜! と称えると、「でもなんか、ちょっと違うんだよね……」とスマホの画面に目線を落としながらうなだれている。

見せてくださいよ〜と彼のスマホを覗き込むと、画面越しにも伝わるノリノリのテンション

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それでも、いつの日か  A面 #4

*A面はわたし(娘)の視点や気持ちを綴ります。

この頃、わたしはきちんとまだ「死」について理解できていませんでした。マンガやドラマ、映画のシーンを見ても、リアリティもなく想像すらできません。これは「マンガやドラマは作り話だから、お姉さんは病気を治し、やがて元気になる」と思い込んでいたのです。

家族で霊安室に行った時の父が泣き崩れている場面は、今でも目に焼き付いています。いつもふざけて遊んでくれ

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