ブルシットなジョブを後回しにしよう
Audibleを聞くのが日課なのであるが、最近は自己啓発系を何冊か聞いている。今日は「後回しをしない技術」的な本を聞いていて、なるほどそれができれば苦労しないねというような技術がふんだんに書かれていてモチベーションアップにつなげている。
「効果的な人生を生きるために効果的なことを行う」というこの本のエッセンスのような言葉がふと耳に入り運転中に急ブレーキを踏みそうな勢いだったので、Audibleを止めた。
「効果的な人生」とはなんだろうか。
どうでも良い一言で考え込んでしまうくせをやめられないのはきっと効果的ではない人生を生きてきたからなのだろう。
脇道に逸れることの無意味さを説くこの本を、脇道に逸れることでしか自我を保てない私との相性があまりにも悪いことを、7時間中6時間聞いてからようやく気付くのであった。
効果的な人生、効果的に成功する。
町にあふれるタイパやコスパのワーディング。
コスパ良く生きて何がしたいのだろう。
そもそも私たちは一日8時間も仕事していて、それはコスパがいいのだろうか。タイパがどうなんだろう。
私たちは何のために毎日毎日仕事をしているのだろうか。
お医者さんや警察や、消防士やごみ収集の仕事などのエッセンシャルワークを除いて、私たちの仕事は本当に必要なのでだろうかといつも思う。
私は毎日六時間も七時間もパソコンの前に座り、売れない製品を売るためのプレゼンを作ったり、本当に地球をよくできるかわからないサステナビリティーに関する資料やデーターを作成したり、十年先も右肩上がりの成長を、理論上正しいけど中近東の石油カルテルのくしゃみ一つで消し飛ぶような図を描いている。
為替で売り上げが上がったときは自分のおかげだと言い、為替で売り上げが下がった時はマクロエコノミーのせいだと理屈づけるスキルは人一倍に高いけど、家庭菜園でジャガイモすらロクに育てるすべを私はもっていない。
後回しをしてしまうのは、自分がしている仕事は本当は意味がないということを知っているからではないのか。
資本主義が成熟していって、私たちは物理的にすでに満たされている。私は来年飢饉になったらどうしよう、風邪で突然死んだらどうしようとおびえたりはしない。
きれいな水を汲むために峠を三つ超える必要がないし、15歳ぐらいで48歳のおっさんの後妻にされることもないし、雨が降らないからと言って河伯の嫁として河に投げ込まれて生贄にされることもない。
日本にいれば必要最低限の生存のために奮闘する必要がさほどない。生きるのに困らないのだ。生きるのに困っていないのになぜずっとカイゼンを続けなければいけないのだろうか。なぜずっと成長を目指さなければならないのだろうか。
無限の成長という夢
より良いの未来の定義もないまま、私の会社、私の会社が所属しているこの社会は無限の成長を望んでいる。システムとして無限の成長を前提にしないと崩壊するからだ。
毎年要らぬマイナーチェンジをする車、毎年微々たるアップデートをするスマートフォン。五年で壊れるように出来ていて買い替えを促す白物家電。使えば使うほど検査の値段を高くすることで新車の購入を強制させる自動車。サステナとうたっていながらどんどん新品を買ってもらわなければ会社が存続できないという矛盾。
私たちのいう成長は自己目的化している。無目的な目的に向かっている、ハムスターのあの丸い車と同じだ。
だから企業の間でパーパス経営が流行る。自明のパーパスがもう残っていないし、見つからないからだ。
炭酸飲料なんて飲まなくても死なないし、チョコを食わなくても腹は減らないし、毎日柔軟剤や漂白剤や洗剤をガンガン使って洗濯しなくても服はそんなに汚れないし、トイレを拭くのにわざわざ流せる厚手の紙はいらないし、インスタでおしゃれな料理をアップしなくても病気にならない(むしろアップしない方が病気にならない)。
企業のパーパスは「豊かな未来を作る」だの、「共に生きる社会」だの、「スポーツを通じて地球環境の改善」だのほとんど何を言っているのかわからない長ったらしい美辞麗句ばかりになる。本当の目的は無目的に利益を上げ続け成長し続けることなのに。
いやそんなことないぞ、豊かな未来を作るというパーパスを持ちながら会社が存続しているんだらという反論を持っている人もいるかもしれないが、社会に真に豊かになりもはや改善の余地がほとんどない時代になったら(もはや今がそうなんだけど)その会社を閉める用意ができているのか?
いや閉めないよね。会社を閉める代わりにパーパスを別のものに変えたり、社会はまだ十分豊かになっていないと主張をズラすに決まってる。会社の存続が何よりも真の目的なのだから。
私たちはお金を稼いでいらぬことをしてさらにそれを続けるためにお金を稼がなければならないことになっている。タイパをあげて余った時間を別の要らぬ仕事に充てている。
そしてその無意味さがわかっていながら子供に再現させ再生産させている。この永久機関が永久に続けられるように。
ベストセラーの「ブルシットジョブ」は会社の中でどうでも仕事をブルシットジョブと定義したが、ほとんどの会社そのものが全体的にブルシットジョブを手掛け・再生産している可能性だってある。経営者も分かっているはずだ。
そしてnoteのAIに締めくくりを頼んだらこんな回答が返ってきた。Bullshit!笑
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