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記事コメ:コロナワクチンは結局効果があったのか?

今日は下記の様な記事を見掛けたので科学的に間違っている点を指摘していこう。

もちろん重症化予防などに効果があるというのはそれで問題無いのだが、周辺の考察や解釈に関する記述には大きな問題がいくつもあるのでそれらに関してコメントしていきたい。

「mRNAワクチンは危険だ」という意見の根拠として、細胞表面にスパイクタンパク質という抗原が発現されるため、その細胞が自分の免疫細胞にアタックされてしまう危険がある、というものがあります。 確かに、細胞表面のスパイクタンパク質をターゲットに細胞性免疫は発動しますから、「自分の細胞」がいくらかは破壊されるかもしれません。しかし、そうした細胞は全身の細胞のごく一部に過ぎないので、ほとんどの場合は人体には大きな影響はもたらしません。

まずは上記の記述である。いつも言っている通り核酸ワクチンに特有のリスクのひとつである細胞性免疫による自己免疫応答である。文章を見ればわかる通り科学的な事実としては上記の自己免疫応答を認めつつ、科学的な知見は一切示さずに何となく大丈夫ですと言っているだけである。上の文章を同じ意味で書きかえれば、「自己免疫応答によって大きな影響を受ける場合は他のワクチン種よりも明確に多いだろうが、そういう人たちは運が悪かったですね」ということだ。しかし、いつも言っている通り、自己免疫疾患発症の機序は様々な要因の積み重ねであり、「自分の細胞がいくらか破壊される」という事自体が明確な自己免疫疾患リスクであると同時に、その一過性の破壊だけが問題ではなく、それに起因して自己免疫反応が成立する場合も含めたリスクの問題である。もちろん過去にいくつも紹介している通り、心筋炎や自己免疫性肝炎を中心として明確に細胞性免疫応答に起因すると考察されている自己免疫疾患の報告は100を超える。それらを全て紹介した上で「ほとんど居ないので大丈夫です」と言ったらどうだろうか。

自分の細胞がアタックされてしまうのは、新型コロナウイルス感染「そのもの」でも同じことです。ですから、「自分の細胞が破壊されて」というミクロな現象の有無で、ワクチンが安全だとか危険だとか言うならば、ウイルス感染も同様の理由でリスクがあると判断すべきです。

次は心筋炎などのリスクをウイルス感染と比較するいつもの言説である。これは私もいつも言っている通り、ウイルス感染が自己免疫応答のリスク要因となることなど大前提である。だからこそウイルス感染に対する感染対策はこの様な議論に含む必要が無い程の「大前提」であり、感染時のリスクをワクチン接種のリスクと短絡的に結び付けて考える事は大きな誤謬である。いつも言っている通り、特に新型コロナウイルスに関してはワクチン接種では防げない神経系感染および神経系症状という重大な問題があるため、感染対策の徹底は有無を言わさぬ大前提であり、それを前提にした感染リスクを感染時のリスクと掛け合わせて評価しなければ、ワクチン接種のリスクベネフィット比較は適切に行うことが出来ない。ワクチン接種は健康な人間に100%の割合で一定のリスクを負わせている訳だから、感染対策によって1%以下の感染率と見積もれる場合には100倍のリスクがあって初めてベネフィットと見合うということになるのだ。特に中枢神経系症状に何の予防効果も無い以上は、核酸ワクチンのリスクは明確に感染対策を徹底した場合のベネフィットに見合っていないのだ。

注射のワクチンもちゃんとIgAを作り、感染をブロックします。

次はIgAに関する記述である。これも大きな誤解を含んでいる。新型コロナウイルスワクチンにおいてもIgAの産生誘導は血中IgAに関してのみ認められており、粘膜IgAは誘導されないことが証明されている(EBioMedicine. 2022 Jan;75:103788.)。血中のIgAレベルというのは基本的に参考にならない程の低値であり、感染防御に重要なのは言うまでも無く感染部位である粘膜上のIgAである。基本的に感染予防に関するワクチン効果というのは議論の対象となるところであり、感染後の増殖抑制効果や一過性の自然免疫活性化などによって「感染していないように見える」ケースが含まれるために感染予防効果があるかのように思える場合もあるが、中枢神経系症状への効果の限定からも分かる様に「感染そのもの」には殆ど効果が無いと考察しておくのが無難である。

ワクチンを打った群と打たなかった群を比べて、どちらが×××だったか。その×××が感染でも、発症でも、重症化でも、死亡でも、他人への感染でも構いません。とにかく効果を調べるには「比較」が必須なのです。

最後に「比較」の群についてである。この著者はワクチン接種群と未接種群を比較することが重要だと言っているが、これも厳密には間違いである。コロナウイルス系統に対するワクチン戦略における最大の問題点はADEによる逆の作用である。そもそもRNAウイルスに対してワクチンで対抗しようという戦略はその変異の速さから不可能だと言われてきた。実際に核酸ワクチンによっても変異への対応速度は追いつけていないのが現実である。一方で、あたかも効果があるように見えるのは言うまでもなく液性免疫以外の、核酸ワクチンによる強力かつ危険な細胞性免疫および自然免疫活性化に依存する部分が間違いなく多い。にも関わらず抗体産生量などを中心に効果を強調したりする流れが、特に変異株対応型以降で酷くなっている。詳細は過去記事に譲るが、今回の様にADEのリスクが考慮されるべきケースでは「ワクチン接種を継続している場合」「最後のワクチン接種から一定期間が経過している場合」「未接種の場合」を比較する必要があるのだ。ワクチンを接種して一定期間以上接種していないケースでADEリスクが向上している可能性が適切に評価されていないのが現在の問題である。特に免疫回避によって免疫特権器官である中枢神経系における症状のリスクが上がっている場合などは非常に危険と言わざるを得ない。

必死に「嘘を言わない」ように文章を構成し、素人を騙すのに必死だが、正しい知識を持っていればこの記事の内容の大部分が都合よく作られたストーリー的記述であることが分かる。逆に言えばこれに騙される様な「大多数の素人」は碌な感染対策をしていないのだろうから、そういう連中は何も考えずワクチンを打っておけという傲慢さもあるのだろう(但し、そういう連中は考えずに打っとけと言うのは私も同じ意見である)。あらゆる情報を正しく理解するために知識が必要だというのはその通りである。そして大多数の医者や感染症専門家のレベルでは免疫学的な専門知識が不足しており、核酸ワクチンのリスクを正しく評価するには「知識が足りていない」ということを理解しておこう。皆さんが正しい知識を十分に身に付けて正しい判断ができるようになることを切に望む。


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