【痛みの評価】遠位の関節から操作してみる。

「座ると腰がいたい」
このように訴える人をどのように評価しているか。
軟部組織に注目して書いてみます。

 まず実際に座ってみる。
①すぐに痛みが出る場合は、座っているその姿勢や関節可動域に依存しているということがわかります。
②反対に徐々に痛くなってくる場合、関節の角度などではなく筋持久力の問題が強そうだなと考えます。だんだんと重力に抗することができなくなっている可能性があるからです。

 今回は①の場合について説明します。関節の位置を変化させることで軽減要素を見つけていきます。ここでとても大事なのは「遠位」の関節から操作していくことです。腰椎より上位であれば頭部・上肢から、腰椎より下位であれば足からです。
※操作は自動と他動を必ず分けて見ます。ここからは他動的な操作の説明です。

 なぜ遠くの関節から動かすのか?それは筋膜や筋連結を想定すべきだからです。例えば頭部を屈曲したら、後頭部の筋群が伸びていきます。それらに連結している脊柱起立筋群が頭側に牽引されていき、腰部〜仙骨の軟部組織まで牽引力がかかります。
 もし頭部を屈曲しただけで腰痛が増悪する場合、頭頸部付近に一つの原因が隠れているかもしれない、と考えることができるわけです。

 腰椎よりも下位の操作を考えてみましょう。座っている状態でまず足関節を背屈してみます。「いや足関節が腰痛の原因になるわけないでしょ」「座ってるから下肢の影響は除けるはずだ」という声が飛んできそうですが、実際には足関節の底背屈で、座位中の腰痛が増減することがあります。
 わたしの経験上、足関節を底屈ではなく背屈をすると腰痛が増悪することがあります。それは腓腹筋 - 大腿四頭筋 - 大殿筋 - 胸腰筋膜の螺旋筋膜の関与が考えられます。(筋膜マニピュレーション理論編 原著第2版 p169 図137など)
 もし背屈のみで症状が増悪した場合、腓腹筋の硬さが原因で腰痛を引き起こしているかもしれません。実際に腓腹筋への治療で腰痛が軽減するケースを経験しています。反対に足関節の底屈にて増悪する場合は前脛骨筋などの背屈筋群に対しての評価、治療に進んでいきます。

 もうひとつ、遠位の関節から他動的に操作して行く理由を述べていきます。例えば、はじめに膝関節を操作することにしましょう。座った状態で膝を曲げます。そうすると足関節の位置も変わってしまうのです。床についている場合は背屈方向へ移動します。膝などの最遠位ではない関節では、どうしても2関節以上の動きが同期してしまうため、遠位の関節から操作するのです。※実際は最遠位の関節は足関節ではなくて足趾です。ここでは理解しやすい説明として足関節を取り上げました。

 今回は神経や椎間板、椎間関節などの影響を考えず軟部組織のみの評価を述べました。上記で述べたとおり軟部組織は全て連結しています。腰痛だからと、脊柱起立筋や広背筋など痛みの部位だけの評価に留まらず、全身のつながりを意識してみるべきだとお伝えさせていただきました。ぜひ遠位の関節から動かしてみてください。


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