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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.230 読書 飴村行「粘膜人間 」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 飴村行さんの「粘膜人間 」についてです。


噂には聞いていた強烈なほどのエログロ系のホラー小説。

ただ、単なるエログロならず抜群の筆力で面白くものすごくエンターテインメントになっているところが魅力的だ。

戦時中の日本の田舎が舞台。暴力的な巨漢の弟、河童、憲兵、非国民の娘などが出てくる。

時代設定がすごく良い。

ホラーには慣れていると思ったが、今作を読んで全然甘く、想像を超えて凄まじかったです。

特に日本軍が開発した幻覚の中で死をリアルに体験する薬「髑髏」で、拷問シーンがありますが、何度かページから目を離してしまうほど。

審査委員の林真理子さんが、この作者が喜んで拷問シーンを書いているのではと心配になったと後書きに書いてあり、

確かにこの本は危険なギリギリのところまで書いてあると思います。

子供には決して読ませたくないですね。

ただ、エログロの描写を置いておいて、ストーリー展開は案外しっかりとしているんです。



物語は、戦時中の日本の田舎、兄と弟の2人に義理の弟がいる。小学生なのに身長2m体重100kgの巨漢。

兄弟は次第に反抗的になり暴力的になってくる巨漢の弟に悩まされていた。

父親も暴力で服従され、兄弟たちは奴隷のように扱われていた。

その暴力に耐えられなくなった兄弟は、弟を殺害しようと計画する。

ただ圧倒的な体力の違いに、自分達には歯が立たない。逆に殺されてしまう。

そこで村はずれに住んでいる男に相談を持ちかけると、河童に頼むと良いと教えられる。

男に教えられ通りに河童にお願いに行くと、河童は3兄弟いて、交換条件で人間の女とグッチャネさせろと言ってくる。

兄弟の兄は知り合いの娘が兄が軍隊に行く前に逃亡して家族全員が非国民になっていることを知っており、その女なら河童に好きなようにさせても良いだろうと目論む。

殺害計画の当日、兄弟は2手に分かれて、巨漢の弟を連れ出す方と、河童たちと待ち伏せする方に分かれる。

だが河童の兄は欲に目が眩み、巨漢の弟を殺す前に、娘に合わせろという。

計画は狂い始める。

巨漢の弟を連れてくると思ったら・・・。

河童と巨漢の弟の壮絶なバトルが始まる。

一方、非国民の娘は憲兵から逃亡した兄について白状しろと拷問される。

肉体的に痛めつける拷問の後、精神的な拷問が待っている。

軍部が開発した幻覚剤、死を体験する幻覚剤で、これを体験すると二度と味わいたくないので誰もが自白する。

娘は世にも恐ろしい拷問を体験する。

兄弟、河童、巨漢の弟、非国民の娘、それぞれの運命は。



まあ確かに河童、巨漢、軍部の麻薬、という体があるので、あのグロい表現もまあ納得できる。

というか頭の中で、そういうものかもしれないと、読み進めることができる。

そう幻覚だから、と。

幻覚だからと言ってあんなことを・・・・。

もう文書にできません。

ただ、本当に描写、人間の心の内、人間の裏表、ストーリー展開などめちゃくちゃ面白いのです。

令和のドグラマグラと言っても良いほど。

河童が出てきても荒唐無稽で日本昔ばなしのようではありません。

すごくリアルで、平気で人を殺し力の強い存在です。

そして巨漢の弟、ものすごい暴力と怪力で、怪我をして記憶喪失になってからがまた面白いんです。

異常な世界なのに、河童と軍部のお陰で、もうその世界が完成されているのです。

だから怖く、だから面白い。

その世界ではエロもグロも何をやっても平気な世界なんです。

シリーズ化されているようなので、ぜひ読んでみたいです。

今日はここまで。





楽しみといえば、親の財布から金を盗んで映画に行くことくらい。あとは部屋に閉じこもってマンガを読んだり、西村寿行さんのバイオレンス小説を読んだり、ホラーのビデオを見たり。あの頃、現実逃避で妄想の世界にどっぷり浸っていたのが、作家としての財産になっています。中高時代にリア充な生き方をしてたら、まず作家にはなっていませんね。辛かった時期を、大人になった今なんとか取り戻そうとしているというか。
/飴村行

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