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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.085 映画 山田洋次「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は山田洋次さんの「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」(1983/日)についてです。

今までこの「男はつらいよ」シリーズを23本見ていますが、ベスト5に入るのではと思うほど良い作品でした。

なぜかというと、寅さんがお坊さんになるというあまりにも突飛な設定でそれがものすごく面白く、

サイドストーリーでマドンナの弟さんがカメラマンを目指して東京に来るというところが、同じカメラマンとして大いに共感しました。

そしてマドンナが当時お嫁さんにしたい女優ナンバーワンの竹下景子さん。

ラストの柴又駅でのシーンは人の感情のやりとりがお見事でした。



物語は、旅の途中、博の実家の岡山へ立ち寄った寅さんは、博の亡き父の墓参りに行く。

そこで寺の住職と出会い、意気投合する。

その和尚の娘に出戻りの美しい(竹下景子)がいて、一目惚れ。

和尚が二日酔いの時、寅さんが代理で口八丁手八丁で適当な法話を聞かせたら大いにウケて、寺に住み着くようになる。

さくらたちが岡山に3回忌で来ると、そこになんとお坊さんの姿をした寅さんが。

何か悪いことをしているのではと思って心配したさくらだが、寅さんはこれには訳があるんだと、さくらたちを柴又に返す。

お寺では長男(中井貴一)がいるが、大学を辞めてカメラマンになると言い、家を勘当されてしまう。

その長男には恋人(杉田かおる)がいて、彼女を置いて東京へ旅たつ。

寅さんは入浴中の和尚がマドンナに「寅さんを婿養子にもらうか」と聞き、

寅さんは書き置きをして東京へ帰る。

寅さんは真剣に仏の道へ入るべきか考える。



この作品はダブルイメージというか、構造がものすごく上手くいっている。

寅さんとマドンナ、若い中井貴一と杉田かおる、のバランスがとても良い。

出だしとラストのレオナルド熊の家族はまさに寅さんの夢。

おいちゃんとおばちゃんの馴れ初めまでもこの構造にきっちりハマっている。

お見事な脚本です。

そしてやはり今作がすごいのは、今まで寅さんは振られることが多かったが、

今回は相思相愛なのに、相手のことを考えて、あえて身を引くという、本当に”男はつらいよ”な部分が心に沁みました。

もし寅さんが竹下景子と結婚したら、実家のお寺は潰れてしまいます。

だからこそ竹下景子さんには、お寺を守ってくれる良い人と結婚してほしい。

だからこそ、身を引く。

寅さんって、すごい!



それが如実に表している名シーンがラストの柴又の駅のシーンです。

それも二人ではなく、寅さんと竹下景子とさくらの三人なんです。

岡山に帰る竹下景子を柴又駅まで送っていく。

寅さんはどうでもいいお土産を取りに戻る。

さくらと竹下景子が駅のホームへ歩いて行く。

ホームからどこかの家の洗濯物が見える。

竹下景子はじっとそれを見つめる。

寅さんとやっときて一瞬しか話せないが、寅さんの袖を掴む。

さくらはそれを見て背を向ける。

竹下景子がお父さんが寅さんを婿養子にと言ったことを謝ると

寅さんは俺が本気にするわけないじゃねえか、と誤魔化す。

マドンナは「じゃあ、・・私の錯覚・・・」

と悲しそうに電車に乗って去っていく。

ホームでさくらと寅さんの2人きり

「へへへ、というお粗末さ」

この3人の感情のやりとりが、もう素晴らしすぎる。

この男はつらいよシリーズの中でも、屈指の名シーンでした。

今日はここまで。




大丈夫、そんなに心配するこたあ、ありませんよ。
男の子はね、おやじと喧嘩して家を出るくらいでなきゃ
一人前とは言えません、私が良い例です。
/「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」より

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