見出し画像

プロモデラーの師匠と情けない俺の話 第十四話~弟子でいていいんだ~

何度か話してきたことだけれど師匠に言われた言葉は印象深いものが多く自分の人生観に大きな影響を与えてくれた。その中でも一番嬉しかった言葉は
「弟子とは名乗っていいけど一番弟子だ!とか言わないでくれよ」
という言葉である。

繰り返しの話になるがこれも師匠の作業場にほとんど行かなくなっていた時期の事。作業場に行っても間が一か月ぐらい空いたりするのがざらで、申し訳無さも感じ始め自分の中では少しだけ気まずくなり師匠と接するのがぎこちなくなっていた。正直本当にプラモデルを教わりたいのか作業場が楽しいかったけど飽きてきたのか折角プロが教えてくれてるのに申し訳ないという義務感だったのかわからないが罪悪感なんかも感じ始めていた。この時期の俺にすら優しくてホームセンターで偶然会った時も師匠から声を掛けてくれたり
「徹夜作業だけどデンドロビウム(凄くでかいガンプラ)をプロモデラーが何人か集まって作るから観に来るかい?」
とか師匠から電話くれたりすることが度々あり嬉しかったけど誘いを断ったりするうちに自分がしたいことがわからなくなり自分の性分の悪いところを思い知り自己嫌悪になっていた。それは未だに続いている。

そんなある日、イエローサブマリン宇都宮店に遊びに行ったときに師匠の事務所BFCの模型製作補助のバイト募集のお手製のチラシを見つけた。イエローサブマリン宇都宮店との繋がりは聞いた事が無かったので少し驚いたがスタッフの誰かに知り合いがいるんだろうと思った。後日師匠の作業場に行ったときに
俺 「このまえイエローサブマリン行ったらBFCのバイト募集のチラシ見つけましたよーー!」
師匠「そうなんだよー、ちょっとチラシ貼ってもらってるんだ。お店の人に自分のことBFCの人間て言った?」
俺 「言ってないですよー!俺なんか言えないっすよー!」
師匠「弟子とは名乗っていいけど一番弟子だ!とか言わないでくれよ!」
俺 「わかってますよー!そんな嘘つかないっすよー!」


師匠にとっては何気ない冗談のつもりだったんだろうけど俺には一生心に残る嬉しい言葉だった。自分の気分次第で教わりにくるような俺でも弟子って思ってくれてるんだと思えた。師匠からしたら以前話した自分のプラモデルを見せに来る小さい子供を褒めるのと同じ感覚で、一番歳下の出来の悪いガキンチョだったから可愛がってくれてたのかもしれない。
弟子でいていいんだと思えた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?