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36-1.使える!役立つ!質的研究法

(特集:今求められる心理職の技能を学ぶ)

下山晴彦(臨床心理iNEXT代表/跡見学園女子大/東京大学)

Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.36-1

新規ご案内の研修会

「質的研究法の基本を学ぶ」
−論文作成のための始めの一歩−
 
【各回タイトルと日程】
第1回 「質的研究法の基本からデータ収集まで」
4月30日(日)午前9時-12時
 
第2回 「データ収集から分析、そして評価まで」
5月7日(日)午前9時-12時
 
【講師】谷口明子(東洋大学教授)

【申込】
[臨床心理iNEXT有料会員]:https://select-type.com/ev/?ev=colUkcPaqn4
(オンデマンド視聴付で第1回と第2回を合わせて2回分1000円)
⇨オンデマンド視聴の期間:5/17(水)17:00~5/31(水)17:00
 
[iNEXT有料会員以外・一般]:https://select-type.com/ev/?ev=Gwszf22nY8k
(オンデマンド視聴付で第1回と第2回を合わせて2回分3000円)
⇨オンデマンド視聴の期間:5/17(水)17:00~5/31(水)17:00


谷口明子先生

<ご案内中の研修会>

「マインドフルネス」講習会−改めて基本を学ぶ-

【日程】4月15日(土曜)午前9時−12時

【プログラム】
1)マインドフルネスとは何か   
2)マインドフルネスの基礎と背景  
3)マインドフルネス実践の心構え     
4)呼吸法を習得する          
5)マインドフルネスを体験する 
    
【詳しい内容と申込】
https://note.com/inext/n/n9a3848c1db97


1.今、質的研究法が注目されている!

近年、心理学だけでなく、教育学、社会学、看護学や福祉学など、人間科学の様々な領域で質的研究法が注目され、発展しています。人間の心理や行動を幅広く研究していくためには、量的研究法だけでは十分でないことが指摘され、質的研究法の意義は益々重要となっています。
 
心理支援実践の事例検討会に提出する事例報告は、心理支援の経過を質的に記述し、分析するものです。その点で質的研究法は、心理支援実践の技能向上にも役立ちます。しかも、第7回公認心理師試験は、2024年3月に実施されます。そのため、公認心理師カリキュラムの進行が以前より早まります。そこで、院生だけでなく、学部学生も早めに論文執筆の準備をする必要が出てきました。質的研究法は、心理職を目指す学生が論文を書くためにはとても役立つ研究法です。
 
したがって、心理職だけでなく、心理支援や臨床心理学を学ぶ学生にとっても質的研究法はとても重要な方法となっています。そこで、臨床心理iNEXTでは、冒頭に示したように2回から構成される質的研究法の研修会を企画しました。


2.「質的研究法」研修会がこんなに安くていいの?

本研修会は、第1回と第2回を合わせて視聴していただく構成となっております。そのため、2回連続参加を前提とし、2回分を一括してお申し込みいただく形式としました。しかし、そのようにした場合、スケジュールの調整が難しく、2回連続して参加できないという人が多いと思います。
 
そこで、研修会を実施する4月30日(日)と5月7日(日)の午前中に都合がつかない人のために、申し込まれた方にはもれなく一定期間オンデマンド視聴ができる特典をつけました。当日参加できなくても、後日オンデマンド視聴ができるようになっています。4月30日(日)と5月7日(日)の両日とも参加できなくても、2回いずれもオンデマンド視聴で学ぶことができます。誰でもいつでも質的研究法をしっかり学ぶことができるように学習環境を整えました。
 
また、本研修会は、修士論文や卒業論文の執筆準備をしている大学院生や学部学生に多く参加していただきたいと願って企画しました。しかし、2回分の費用をいただくとなると、学生にとって高額の出費になって参加を控えるということも出てくると思いました。
 
そこで、学生や若い心理職の皆様が、費用負担を考えなくて済むように、参加費については、申し込まれた方にはもれなく2回分を1回分の廉価で提供させていただくようにいたしました。ぜひ多くの方にご参加いただきたく思っております。


3.実践のための質的研究法入門

研修会は、「質的研究法の基本を学ぶ」をテーマとして、実践に関する質的研究法のエキスパートである谷口明子先生を講師にお迎えしました。谷口先生は、実践に関する質的研究の第一人者です。質的研究法の理論と方法について詳しいだけでなく、ご自身も教育分野でのフィールドワークなどの質的研究を実践し、論文や書籍を執筆されています。下記に谷口先生が関わっている書籍の一部をご紹介します。
 
副題を「論文作成のための始めの一歩」としたように、修士論文や卒業論文の執筆に役立ちます。論文執筆の準備をしている大学院生や学部学生の皆様に多く参加していただきたいと願っています。研修会の内容は、次項以下に示したように、初心者でも分かるように基本から実施までを体系的に学ぶことができるように構成しました。多くの方のご参加を期待しております。

■「臨床実践のための質的研究法入門 」(金剛出版)

■「長期入院児の心理と教育的援助−院内学級のフィールドワーク」(東京大学出版会)

■「心理学の実践研究法を学ぶ」(新曜社)



4.第1回「質的研究法の基本からデータ収集まで」プログラム

①  研究とは
「研究」とはどのような営みであるのか、あらためて振り返って本研修をスタートし、質的研究の特徴や研究倫理について概説します。

②  リサーチ・クエスチョンを絞る
研究設問をどのように絞ったらよいのかわからないと感じられる方もあるかもしれません。このセクションでは、リサーチ・クエスチョンをどのように絞っていくかを実践的にご紹介します。

③  データを収集する(1):インタビュー
質的研究の主要なデータ収集法であるインタビュー法(面接法)について、インタビュー・ガイドの作り方やインタビューの際の留意点を解説します。


5.第2回「データ収集から分析、そして評価まで」プログラム

④データを収集する(2):フィールド観察
フィールド観察は、現場に長期間身を置くことで、one shot survey では見えてこない知見を得ることのできる手法です。記録の取り方やフィールドにおけるロール・マネジメントなどフィールド観察の基本を概説します。

⑤データを分析する
質的データの分析法にはさまざまな手法があります。本セクションでは、各手法のベースともいえる素朴な「カテゴリー生成」について、公刊された論文を参照しながら学びます。

⑥質的研究を評価する
質的研究の評価基準は、どのように研究を進めればよいのか、また論文中に何を含めなければならないかと直結しています。質的研究をどのように評価するのかについては1990年代から長らく議論されてきましたが、現在いくつかの国際的なスタンダードが提案されています。本セクションでは、まとめとして、質的研究の評価について検討します。


6.谷口明子先生からのメッセージ

質的研究は、「現象の詳細を主に言語的に記述し、そこでの直感を含めた検討を行うことにより、現象を解明する研究」と定義されています※)。
 
卒業論文や修士論文執筆にあたり、「現象解明にチャレンジしてみたいけど、なんだかよくわからない…」「難しそう…」と、尻込みしてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。本研修は、そうした初学者の方の“後押し”となればと考えています。
 
本研修では、実際の研究進行プロセスに沿って質的研究の基本を確認していきます。質的研究の魅力は「データからのオリジナルな発見」です。お聴きくださる方の「オリジナルな発見」のお手伝いとなれば幸いです。

※)『質的心理学辞典』(新曜社)p.136
https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b455405.html 


7. 質的研究法は、心理支援技能の基本です!

質的研究法は、エビデンスベイスト・プラクティスの基本となっている」と言ったら、驚く人が多いと思います。それは、「エビデンスとは、心理統計で扱う量的データのことだ」と信じている人が多いからです。しかし、心理支援は数量データを用いて実践(プラクティス)されるのではありません。

エビデンスベイスト・プラクティスにおけるエビデンスの第1段階は、事例のプロセスを記述する質的データから始まります。それは、事例検討会(カンファレンス)やスーパービジョンにおいて事例報告として提出されるデータです。そのような事例の質的記述を抽象化し、極度に記号化したデータである数字に加工したものが量的データとなります。

したがって、量的データに加工される前の、出来事の質的記述データを分析する質的研究法は、エビデンスベイスト・プラクティスの基本でもあるのです。そのため、質的研究法の方法と技術は、心理支援の基本技能と重なっています。その点で質的研究法は、臨床技能を養う上で役立つのです。


8.質的研究法を基本から体系的に学ぶ

質的研究法は、量的研究法に比較して新しい方法だけに、基本から体系的に学ぶことができる大学は少ないのが現状です。そこで、本研修会は、質的研究法をやってみたいのだけれども、具体的にどのようにしたら良いのかとわからないでいる人、あるいは既に質的研究法を実施したことがあるけれども、どうも上手く行かないという人のために企画しました。

その点でこれから修士論文、あるいは卒業論文の執筆に向けて研究を始めようとしている人には、ピッタリの研修会です。あるいは、改めて質的研究法の基本を学び直し、質的方法を用いて、より良い研究を実施し、より良い論文を書きたいという人にとっても、とても役立つ研修会です。

また、心理学だけでなく、社会学、看護学、福祉学などの学生や研究者の皆様にとっても参加いただければ、多くのことを学ぶことができる研修会です。


9.質的研究法が論文執筆の学生を救う!

第6回までの公認心理師試験は、大学院修了後に行われていました。しかし、第7回以降は、大学院修了前の3月に実施されることとなっています。そのため、2023年度新学期を修士課程2年生で迎える院生は、修士論文研究を早めにスタートし、早めに論文を執筆してしまい、早めに公認心理師試験の準備をしなければいけなくなりました。

また、それにともなって公認心理師カリキュラムの修士課程や学部の教育課程も早めに進むことになります。したがって、院生だけでなく、学部生も含めて、早めに研究法を学び、早めに卒業論文や修士論文の準備を開始しておく必要が出て来ました。本研修会は、そのような皆様にとっては、とても役立つ研修会です。

質的研究法は、心理支援の事例研究法とも重なっており、実践技能を高めることにも役立ちます。実践と研究の両方に役立つ一石二鳥の研究法が質的研究法なのです。したがって、心理職を目指す学生にとって質的研究法は、実践のためにも研究のためにも必須テーマです。ぜひ本研修会で多くの皆様に質的研究法を学び、使えるようになっていただきたいと思っております。


■記事制作 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)
■デザイン by 原田優(公認心理師&臨床心理士)


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臨床心理マガジン iNEXT 第36号
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.36

◇編集長・発行人:下山晴彦

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