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苦しみを帯びたサンフレッチェ広島の2連勝。監督と選手の個性が出始めたってよ @セレッソ〜メルボルン戦

2019.3.9セレッソ大阪 0対1 サンフレッチェ広島 GOAL19分 エミル サロモンソン

2019.3.12 サンフレッチェ広島 2対1 メルボルンビクトリー GOAL 3分 東俊希 71分 本田圭祐 86分渡大生

セレッソ大阪に完勝ムードからの、、、

第3節に行われたC大阪対広島の一戦は、3-6-1のミラーゲームとなった。勝敗を左右したのが、このシステムの浸透度の違いであったことは、まず間違いない。決勝点となったエミル サロモンソンのゴールは、相手のビルドアップの拙さをついたものであり、セレッソには他にもいくつか危ないシーンが見られた。

最も大きな差となったのは、守備のポイントを作れたか、そうでなかったかである。かつて、広島対浦和でよく見られた試合の構図である。

広島は、対面する相手にしっかりと強いプレッシャーをかけることに成功した。ダブルボランチの松本泰志と川辺は、ブロックを押し上げるようにプレッシャーに行くことで、ボールマンの自由度を限定。2シャドー(清武、ソウザ)に対しては、佐々木と野上がマンツーマン気味で強くつき、何より野津田と柴崎によるスペースを埋める作業ボールマンへのプレスに関わる作業のバランスが絶妙であった。

一方のセレッソは、ブロックを作るものの、ブロックを崩さないことを優先させ、前と後ろの連動性も乏しかったため、広島としては、用意したことが出しやすい内容となった。

試合の味付けを変えるしかなかったロティーナと想定してワザと付き合った城福

セレッソの指揮官、ロティーナは後半早々に、試合の味付けを変えることを決断する。このまま試合を広島にコントロールされながら、終わる可能性が限りなく高かったからだ。

パワーの出る都倉の投入。そして、それに合わせて交代カードを切っていき、システムも4バックへ変える。

このとき、広島がこのまま勝利する為の選択肢として可能性が高かったのは、パトリックの投入でダメ押し点を奪う【パトリックプランB】の発動であった。

現にワントップで出場していたドゥグラス ヴィエイラはミッドウィークのアウェイ広州戦でもフル出場。また、パトリックの後半投入が効くことも第1節の内容からある程度予想できていたはずである。

しかし、城福は違う決断を行う。

この試合の主人公であった野津田を下げ、対都倉用に空中戦で闘える荒木を投入したのだ。それにより、広島の3バックは、佐々木翔 野上 荒木となり、吉野がボランチへ上がる。押し込まれても跳ね返す布陣に変えたのだ。

正直、この決断をしたのが61分であった為、嫌な予感がした。フットボールというのは、相手の矢印を受け止める決断をしたとき、その時間が長ければ長いほど、耐えきれないというシチュエーションが多くなることが多いからだ。また、この時は絶妙であったバランスを変えてまでの決断。正直、リスクは大きかった。

実際、セレッソは攻勢を強め、広島は防戦一方となった。ただ、広島は耐えた。城福のギリギリに見えた采配は、試合をなんとかウノゼロで終わらせるという結果を勝ち取り、貴重な勝ち点3を掴んだ。投入された荒木もエアバトルを怯むことなくこなし、貢献したが、何よりシャドーの柴崎が最後まで走れたことが大きかった。

充電バッチリのパトリックと日本のスター本田圭祐

セレッソ戦から3日後に行われたのがACL第2戦 メルボルンビクトリーとのホームゲーム。本田圭祐が来ることで、チケットは完売。広州恒大戦を落とした広島にとっては早くも勝利が絶対条件となる試合となった。期待がかかるのはこの試合の先発となったパトリックの活躍である。また、本田を含めたメルボルンビクトリーがどのようなチームなのか、単純にワクワクしたのである。

対戦相手:メルボルン ビクトリー

フォーメーションは4-3-1-2。攻撃時は画像のような狙いが多い。本田とワンボランチがボールを保持し、トロイージはセンターでの反転を狙う、バルバルセスは機動性を活かし右の裏に流れて、トイボネンはサイド攻撃に備える。まさに本田圭祐を中心としたカタチである。

また、守備はクリスマスツリー型の4-3-2-1。ボールによるコンパクト型で、バルバルセスが一列下がるカタチだ。守備が秀でて強い選手はいない。

一発目のパトリックと一発で決めた東

試合は開始早々3分に広島が先制に成功する。パトリックのオンザボールでの一番のカタチ、右に流れてからスペースを急襲するドリブル突破に対し、パトリックという選手を理解していなかったDFラインが後手を踏む。深くえぐる。グラウンダーのクロス。待ち構える東。利き足とは違う右足での合わせ。一発で仕留める!

Jリーグではなかなか見られない展開である。警戒すべきパトリックへのアラートが乏しく、しかもそれを一発で決めきる。今の広島に一発目で決める力を持っている選手がいるとすると、それは東俊希のみかもしれない。

コントロールできないセカンドチーム

この試合、早々に先制をし、楽な展開に持って行きたかった広島だが、実際はそうではなかった。本田に試合を支配されたのである。正直、この試合は、勝ち点3が厳しいか、と思うほどゲームをコントロールすることができなかった。

原因の一つは、本田を中心とする組み立ての掴み所を設定できなかったこと。パトリックがもう少し相手のボランチを消し、選択肢を限定することができれば違ったかもしれないが、対面の1vs1では止められない相手が多かった為、後手となり押し込まれる展開が増えた。

もう一つは、うまくポゼッションできず、ボールを捨て、時間が作れなかったこと。ポゼッション時に詰まった時に、ボランチと井林が作り直すシーンがほとんど見られなかったのだ。

解決策は、後ろに重心をとり、相手のプレッシャーをいなすというシンプルなものだったと思う。森崎和幸が得意としていた上図の赤矢印の動きができななった。また、詰まった時にボールを前に蹴ることしかできなかったのも、後ろで作り直すという選択肢があれば、相手は困ったはずである。

つなぎとめたキャプテン航平と最後の最後で渡

本田は流石である。当たり前なのかもしれないが、いまJリーグに戻ってきても十分スペシャルだということを証明した。特にその決定力。71分に奪った同点弾もそうだが、自分が決めることの展開にできる図を描く能力が恐ろしく高い。

このまま試合終了までやられ続けるのか。

そんな流れをギリギリで留めていた一番手は、キャプテン清水航平だった。やはりこの選手はACL向きの選手てあり、エンブレムを背負える選手である。球際で闘う姿勢とこのシステムのツボを押さえている。ギリギリでチームをつなぎとめていた。

そして終盤、柏と野津田を投入し、清水航平のサイドをパワーアップさせ押し返せたことが、この試合を決める決勝点に繋がった。

左サイドの柏から得点率の高いインスイングのクロスが上がった時に、ニアに飛び込んだのは、終始守備に奮闘していた渡大生であった。

よく走った、そしてよく決めた。

底とも言えた、広州恒大戦のパフォーマンスから精神的に立ち直り、最低限の仕事をしていた渡にご褒美が来た。そんなヘディングであった。

これで2連勝。

苦労しながらも全員で闘えている。全員で勝ち点を奪っていく。そんなチームを追求するための第一歩は、選手の個性を活かすこと。

城福監督が自分に言い聞かせながら、このチームは確か前進している。

次回のゲームに一言

ホームでの松本山雅戦は再びのミラーゲームになる見込み。セレッソ戦のように、守備で違いを出せれば、試合を支配できる可能性が高い。

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