ほとんどのMMORPGがエリアチャット機能を実装していると思う。このチャットを使用して発信されたメッセージは現在自分がいるエリア内の全域、もしくはある程度近くにいる他のプレイヤーたちに届く。状況にもよるが、だいたい10〜20人くらいが対象になる。

エリアチャットで交わされる知らない人同士の会話を見るのが好きだった。街の喧騒を聞いているかのような趣がある。自分でも意識的にエリアチャットを使うようにしていたが、それを快く思わない人たちもいた。

いつも同じ時間帯に同じ場所で話していたので悪目立ちしたのだろう。迷惑集団の筆頭として匿名掲示板に晒されたらしい。まあ、そういうこともあるかと僕は気にしていなかったが、それを教えてくれた知り合いがある提案をした。

エリアチャットで自然に集まった仲間でギルドを結成しようというのだ。ギルドチャットであればギルドのメンバーにしか届かない。晒される心配もなくなる。

それはそれで楽しいかもしれないが、クローズドコミュニティは僕の趣旨と異なるので辞退した。来る者は拒まず、去る者は追わず。入退会が必要なギルドでこの距離感は難しい。

結局、引退するまでエリアチャットを続けることになる。あの場所にまだ喧騒が残っているといいなと今でもときどき思う。

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