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返報性の原理

年賀状が楽しかったのは何歳ぐらいまでだったろう。

たしか小学校も高学年になったころには面倒臭いと思い始めていて、中学生の時には貰った分にだけ返信していた。最終的にそれも煩わしくなって、この文化とは完全に決別したのだった。

何かしてもらったらお返ししたくなる心理のことを返報性の原理というらしい。原理というくらいだから遺伝子レベルで人間に備わっている特性なのだろう。それがどうも僕の場合は違うような気がするのだ。

お返ししたくなる気持ちはたしかにある。ただ、心の奥から湧いてくる願望ではない。そうしなければならないと後付けで刷り込まれているのだと思う。年賀状のような慣習によって、幼い頃から親や社会に調教されている。

お返しするのが人間の原理だとしたら、他人に何かをあげる人間は原理的に見返りを期待していることになる。原理を持たざる者からすると、それはただの貸借関係に見える。それも頼んでいないのに貸し付けてくるタチの悪いやつだ。

他人の厚意を負債と捉えるようになったら人間おしまいである。物欲しそうにしたり、弱っているところを人に見せたりして、親切にされる隙を作ってはならない。

みんなは俺みたいになるんじゃねえぞ……パタリ