見出し画像

Filemakerは中小企業のレゴブロック

FileMakerは、Claris社(Appleの子会社)が提供するデータベース管理ソフトウェアの一つです。

データベース管理ソフトウェアといっても一般の人にはあまり馴染みがないかもしれません。 データ管理というと一般にはエクセルなどを利用した一覧表(スプレッドシート)ではないかと思います。

例えば従業員の名簿を作成すると、従業員の氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどの情報を記載した一覧表を思い浮かべる方が多いと思います。

私も当初、取引先名簿をエクセルで作成して、更新しては社内に配布することを繰り返していました。 取引先と直接やりとりするのは私が一番多かったことからその役割も自然と担うことになりました。

部署が変わったり、新たに担当者が増えたりするたびに更新が必要です。なかなか大変で時間も取られました。エクセルファイルをネットワークドライブ上に置くようなこともしましたが、誰かがうっかり開いたままにしていると、他の人が開けないといったことも頻繁に起きていました。

なんかないのかなと思い、たどり着いたのがFilemakerでした。元々はクラリスワークスという名前でカード型データベースソフトとして販売されていました。 当時の私はデータベースという言葉すら理解できてはいませんでした。それでも名刺の画面に各項目を入力すると、検索が一瞬できます。また同時複数人でアクセスしても検索、閲覧が可能でした。画面デザインもシンプルで、カスタマイズも容易でした。

これでいいかもしれないと思いました。

エクセルで作成していた顧客名簿をFilemakerへインポートをしました。

「そんなのこと誰でもできることではないでしょ」と思うかもしれませんが、エクセルで作成した一覧表などであれば、Filemakerにドラッグ&ドロップするだけでものの数分でデーターベースが完成します。Appleの子会社ということもあるのでしょうが、画面のレイアウトはAccessなどよりずっと洗練されたテンプレートが用意されていました。もちろんWindowsでも動作します。

出来上がったものを自分で使用してみて、その後すぐに社内に共有の設定をしました。変更があればみんなで寄ってたかって変更していくようにしました。 私が更新作業をしなくても良くなり、常に最新の顧客情報を全員で共有できるようになりました。

Filemakerは強力な検索機能を持ちます。

必要な電話番号を探したりするのは画面上で一瞬にでき、操作は誰にでもわかる容易なものでした。そうしたFilemakerの操作性を一度覚えてしまうと、何でもかんでもデータベースに入れれば良いのではないかと思い始めました。

エクセルで作成し、ファイル名で管理していた見積書や生産管理などの一覧表などを一つ一つFilemakerへ移行していきました。

気がつけば社内で管理しているかなりのデータをFilemakerへ移行し、ちょっとした基幹システムとなっていました。

従業員数名〜数十名の中小企業にとってシステム開発にまとまったお金をかけることは容易ではありません。そもそもどこに依頼すれば良いのかもわかりません。

うまく依頼先を見つけられたのしても、仕様の決定や、その後のメンテナンス、バージョンアップなど社内、社外で管理していかねばならないことは意外と多いものです。とにかくハードルが高いわけです。

Filemakerの導入は容易なものでした。自分たちがデータ化したいところだけで作成でき、その後、拡張したければ、レゴブロックのように拡張することができました。しかもその間、運用を止める必要もありませんでした。

面倒な作業はスクリプトで自動化

Filemakerにはスクリプト機能があります。エクセルのマクロのようなものです。 Filemakerのスクリプトはノンコードのプログラミングです。すでに用意された命令文を並べていくだけで完成します。

例えば、見積書を送付する場合。

従来は見積書をエクセルで作成し、PDFに変換して、メールを立ち上げて、宛先を入力、件名を入力、本文を入力、PDFを添付する、といった一覧の動作が必要です。しかも添付ファイルはつけ忘れがちです笑。

Filemakerでは、見積書を入力後、ボタンを押すと見積書をPDFに変換し、メールに添付した状態まで自動化できます。メールには取引先のアドレスも、件名も本文も定形で記載されています。 あとは送信ボタンを押すだけです。瞬殺で終わります。

私自身が欲しい機能を自分でチクチクと構築していく。こうしたアジャイル開発を進めて来たことで、仕事のかなりの部分を自動化することもできました。

社員もその操作に慣れてくると、ここにこんなボタン作ってくださいとか、これは自動化できませんか?とか、さまざまな要望が上がってくるようになりました。社員が自ら効率化を図り始めるようになりました。めんどくさいことはPCにやらせれば良いわけです。

  • 見積書をPDFに変換して、メールに添付して、取引先に送る。

  • 生産工程表で予定から遅れているものを、検出してアラートを出す。

  • 納入日が近いのに納入先が決まっていない時に、担当者へ確認を催促のアラートを出す。

  • 売上高、受注金額、月別の推移、3年間の数字の比較、などを集計して、毎日出力する。

ほんの一例ですが、今までだと、誰かに頼んで手作業でやってもらっていたことを次々と自動化することができました。社長の私がわざわざやっていたことを少しづつ、Filemakerで自動化していったのです。

余談ですが、映画アイアンマンを見た時に、ペッパーのような秘書がいたら、ジャービスのような人工知能がいたら、と憧れていました。大富豪でも天才でもない私にはどちらも実現はできませんでしたが、Filemakerのスクリプトは私にとってのジャービスのような気分でした笑

ポケットは一つだけ

データベースにするメリットはもう一つありました。 データの格納先を一つにすることができました。

データは案件や製造番号の紐付けを持ち、全て1箇所のポケットに放り込みます。 必要な時は検索して閲覧します。

社員全員が、そのルールに従って使用しました。 電話の際に紙にとったメモはテキストで、受信ボックスのメールはテキストやPDFで、エクセルファイルはそのまま、Filemakerに保存しました。

「あの見積書どこ?」「Filemakerで見て」
「あの図面どこ?」「Filemakerに入ってる」
「この製品納期いつまでだっけ?」「Filemakerに書いてある」
「この時に取引先の要求仕様は?」「Filemakerに入ってる」

全部これで行けるようになりました。情報が1箇所にあるというのは重要なことだと思います。

社内の共有情報が、一つのポケットに入りました。

社内システムって結局使う人が作るのが一番早くて、便利だよねというのが私の感想です。そんな時間が取れないとか、PC全く苦手という人もいると思います。その場合には外注のデベロッパーを探す手もあります。

M&Aの際に私が構築してしまったシステムをどうやって保守していくかを検討した際に、外注のデベロッパーを探しました。Filamekerには認定デベロッパー制度があり、複数のデベロッパーが存在します。

例によって私は全社をリストアップして連絡をとり、今後の状況やシステムそのものを見てもらい、デベロッパーを選定し、保守を依頼しました。

私は会社から離れてしまいましたが、構築したシステムは現在も使用されているのです。


この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?