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栽培方法の違いが作物の細胞形態にも影響する

栽培環境の違いが、作物の細胞間の隙間すきま細胞壁さいぼうへきの厚さにも関与していることを紹介します。


栽培方法の異なる畑の管理

長野県松本市(黒ぼく土)の1970年に区画整備事業を実施して以来、化学肥料、農薬は一切使用せず、1999年より不耕起で栽培した有機農業畑および隣接する1970年より化学肥料、農薬を継続して使用している慣行農業畑で、大豆を栽培しその品質を比較しました。

有機農業畑では多種多様な土壌動物が棲息

不耕起・有機農業畑では四季を通じて多種多様な土壌動物が多数見られましたが、慣行農業畑では秋季に植食者であるコガネムシが見られたのみでした(図1)。

図1 栽培方法の異なる畑の大型土壌動物群集の比較

栽培方法に違いが種の組織に影響

外観による違いが見られない種の組織切片を作成し、光学および透過型電子顕微鏡で観察しました(図2)。
有機農業では内部を保護する種皮(CS)が厚いのに対し、慣行農業では子葉細胞(C)に隙間が多く細胞壁が貧弱であることが分かりました。これは、栽培方法の違いが種の組織の特性に影響を与えることを示しています。

図2 栽培方法の異なる大豆の細胞形態の比較 (Nakamura et al. 2007)

作物の品質の向上に、ミミズなどの土壌動物のはたらきが影響していることが知られています。土壌生物相の違いが、作物の保存性や栄養成分の向上のみでなく、細胞間の隙間や細胞壁の厚さにも関与していることが示唆されます。

なお、有機農業米では炊き増えする量が慣行農業米より多いと言われています。このことは、ここで紹介した細胞間の隙間の違いと関係するのかも知れません。

※「作物の品質向上のメカニズム」も参照ください。

参考資料

Nakamura Y-N, Fujita M, Nakamura Y, Gotoh T (2007) Comparison of Nutritional Composition and Histological Changes of the Soybean Seeds Cultivated by Conventional and Organic Farming Systems after Long-Term Storage -Preliminary Study-, Journal of Faculty of Agriculture, Kyushu University 52:1-10.

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