不耕起栽培の長所を生かし、土の機能を引き出す
不耕起栽培には、多くの長所があるにも関わらず、実施している方は限られています。そこで、不耕起栽培の長所を伸ばし、短所を小さくする方法を紹介します。
不耕起栽培の長所と短所
不耕起栽培とは、作物を栽培する際に通常行われる耕起を省略し、作物の刈り株、わらなどの作物残渣を田畑の表面に残した状態で次の作物を栽培する方法を言います。
不耕起栽培は耕起栽培に比べ、作業時間が短縮でき、省エネルギー的であるとともに、土壌浸食(風食、水食)を抑制し、土壌水分の湿潤性や保水性に優れるなどの長所をもち、しかも田畑に棲息する土壌動物群集が豊かになります。しかし、初期生育の遅れや減収、害獣の被害などの短所も指摘されています。
モグラの坑道を破壊する
不耕起栽培で有機物の被覆をしたところ(有機物集積層)にはミミズが増えるため、それを餌とするモグラも棲息するようになります。
有機物を直線的に被覆することで、被覆の下ではミミズの棲息密度も高まり、モグラの坑道も直線的になります(図1)。
このモグラの坑道を壊し、冬季間に緑肥作物を栽培することで、野ネズミの侵入を阻止し、圃場に有機物を還元できるようになり、獣害を回避できます。
不耕起栽培の短所を克服する
不耕起栽培の特徴とその改善策を整理しました(図2)。
不耕起栽培による有機物集積層の形成は、土壌構造(土壌の団粒化)を発達させ、生物群集の多様化を図るなど作物栽培に良い環境を形成し、地力を蓄積しながら作物を栽培する方法と言えます。
しかし、初期のころには肥効の減少などにより収量、秀品率の低下などが見られます。
先のモグラの坑道を破壊した例のように、不耕起部分を部分的に破壊することで栽培環境を維持することも大切です。
部分的破壊(部分耕起)は、土壌生物の避難場所(逃げ場)を確保し豊かな生物相の回復を早める効果もあります。
不耕起栽培の長所を伸ばし、短所を小さくすることが、今求められている環境を保全した農業にとって大切だと考えます。
参考文献
金沢晋二郎(1995)「持続的・環境保全型農業としての不耕起栽培 畑作物の収量と土壌の特性」日本土壌肥料学会誌, 66(3):286-297.
※「畑地の土壌生物群集を豊かにする有機農業・不耕起栽培のメカニズム」についても、参照ください。
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