ふくらむ手の中に

 警備員のおっちゃん、おそらく62,3歳。都立明治公園の清潔すぎるトイレで手を洗いながら同じく横で手を洗う自分に話しかけてきた。

 「これあったかくて気持ちいいですねえ。ありがたいありがたい」

と永遠に手を洗っている。自分は笑って同意し、今日は寒いですからねと挨拶をした。

 教科書で読んだ日本国憲法の条文、いつかの派遣アルバイトの契約書、ライブハウスの精算でお互い苦い顔をしながら受け渡す諭吉やらそんなものが脳内を駆け巡りながら自分はトイレを後にした。

 外では同じ警備員の格好をした別の60過ぎのおっちゃんが友達を待つように彼を待っていた。

 政治はデザインだなぁ。阿呆な感じで端の方で転がしてやりたい。人生のメインテーマではないけれど、今週だけ給食当番、みたいなノリでやりたい。もうこの歳じゃあ参議院も行けるね。

 とかはもう思いつきであってとりあえず俺は笑いたい。おかしなことをおかしいなあと思いながら怒り笑いたいだけのようである。

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