あわげんた awagenta

京都嵐山出身。 関西でロックバンドGOZORO'Pのボーカルとして活動。 バ…

あわげんた awagenta

京都嵐山出身。 関西でロックバンドGOZORO'Pのボーカルとして活動。 バンド解散後、単身上京しソロアーティストとして一から東京で挑戦を始める。 趣味は散歩と読書。

マガジン

  • 音楽と凡人

    初めて人前で歌った自分の曲は"凡人"という歌だった。天才だと思って声を枯らしながら歌った。バンドを始めたのは十代の終わりで、バンドを諦めきれない今は二十代の終わりである。 
この連載では、頭を抱えながら過ごしたこの十年を小説のように掘り返しつつ、また、自分だけの日記のようにかっこわるい部分もさらけ出して書けたらと思う。毎週日曜に週間連載で、ありとあらゆることを書いていきたい。

最近の記事

再現できない瞬間を

 今やほとんどの人がスマートフォンを持っている。そしてそれには高性能のカメラが搭載されている。解像度の高い写真や映像を手軽に大量に残すことができるようになった。ただ自分の心に残るのは、その場所へ行けば誰でも撮れてしまうような写真よりも、二度と戻らない瞬間を切り取ったような写真である。  音楽は時間がなければ存在しない持続的な音の現象であり、写真は時間が存在しない瞬間の光の現象だ。とは言っても実際には時間が止まるということはなく写真を撮っている時にも眺めている時にも時間や光は

    • ザギンでメンラー

       東京に住んで二年になるが比較的いろんな場所へ足を運んでいるように思う。しかし銀座へ行くことはあまりない。用事がないからである。一度友達に銀座のbarに連れて行ってもらったくらいで、銀座という地名を聞いた時に感じる距離感は上京前と相違ない。  ただ銀座に一つだけ気になる店があった。ラーメン屋である。それは本店が京都にある店が東京に初めて出した店舗で、自分が以前働いていたラーメン屋の師匠の系列店だ。  とても旨かった。思えばこっちへきてからほとんどラーメンを食べていなかった

      • モウ春ヤネ

         漱石や熊楠の様に、グローバルな視点を持ちながら日本の土を踏みしめてたたかったかつての巨人たちが好きだなぁとしみじみ思いながら、都営大江戸線の深い地下へ潜って勝ちどき駅で電車を降りた。  最近は日銭を稼ぐ関係でタワーマンションからの眺めを見ることが多いが、一旦見慣れてしまうとこの鉄の山には生理的な感動はない。しかしそれを選択できるということに意味は存在していて、そのような意味は意図的にこの都会にばら撒かれている。  季節の変わり目の心をたてかける故郷の景色は私の中にありな

        • 100記事目

           4年前の2020年の7月7日に初めてこのnoteに投稿した。  4年前はコロナが本格的に始まった年であり、その2020年4月にバンドを解散した。それから数ヶ月経った時にこれを書いたようである。  結構あとになってから気づいたが、私はなかなかに傷ついていた。或いは今もそうかもしれない。過去形にするのは前を向いて歩いていきたいからだ。  私にとって書くことは救いである。このnoteもそうであるし、この先も人の目には触れることない無数のノートが自宅にはある。  子供の頃か

        マガジン

        • 音楽と凡人
          21本

        記事

          ふくらむ手の中に

           警備員のおっちゃん、おそらく62,3歳。都立明治公園の清潔すぎるトイレで手を洗いながら同じく横で手を洗う自分に話しかけてきた。  「これあったかくて気持ちいいですねえ。ありがたいありがたい」 と永遠に手を洗っている。自分は笑って同意し、今日は寒いですからねと挨拶をした。  教科書で読んだ日本国憲法の条文、いつかの派遣アルバイトの契約書、ライブハウスの精算でお互い苦い顔をしながら受け渡す諭吉やらそんなものが脳内を駆け巡りながら自分はトイレを後にした。  外では同じ警備

          ふくらむ手の中に

          読書note|『翻訳語成立事情』

          柳父章「翻訳語成立事情」 岩波新書1982年4月20日発行 222ページ  日本語とひとくくりに言ってもさまざまなものがある。大和言葉と漢語、外来語そして混種語。その中でも最近気になっていたのが明治の近代化にともなって西洋から新たな文化や思考が一気に入ってきた時に作られた翻訳語である。  ほんの軽い気持ちで翻訳語について知りたいと思い適当な本を検索してこの本を見つけたが、読んで途方に暮れた。いかに言葉が流動的であるかをまた思い知らされたからだ。  この本で取り上げら

          読書note|『翻訳語成立事情』

          言葉の作用

           シンナーを嗅ぎながらこの文章を書いている。外壁工事の為に有機溶剤のにおいが部屋に充満している。築年数の古い賃貸マンションに住んでいる自分は自宅をどのように扱うか意思を尊重されることもなく、ただ掲示板に貼り出される紙で進捗を確認するのみである。家が綺麗になるための工事であり、オーナーには部屋の設備不良を何度か迅速に対応してもらったので不満はないが匂いに敏感な自分にとってあと二ヶ月これが続くのはなかなかにつらい。  この話はもうこれ以上はくさいのがつらいよという以上のことは無

          鳩の餌

           不忍池の周りを歩こうとすると鳩が多すぎて趣を感じる暇がない。自分が鳩が苦手すぎるのか常人であっても許容できぬ数かはわからないがまぁとにかく多い。  しかめ面で鳩を避けながら公園の中を歩いていると同じようにしかめ面の男が前から歩いてくる。40代、173センチ、少し太ったその男がすれ違いざまに自分の脇へ何かを放り投げた。途端に大量の鳩が集まってきた。  男が投げたのは鳩の餌である。  鳩に餌をやる心理というのはなんとなく推察ができる。偏見であるかもしれないが、しかし鳩に餌

          driveしていく現実の中で

           家の外から聞こえてくるクラクションが何かの曲のイントロに聞こえた。暴力的な正義感より健気な優しさなんかを感じながら芝生の上で春の光を浴びたいなぁ、などと考えながら冷えた足先を宙に浮かす。  2020年のあたまあたりから自分の人生から現実味というものが失われ今日まできている、と書こうとしたがその頃起きたことは明確に現実である。それはやはり一種の現実逃避として脳が自ら別アングルのカメラを我が身に埋め込んだのだろう。  あの頃の自分はどう考えていたっけ、どうしていたっけと今頃

          driveしていく現実の中で

          労働と凡人 まえがき

           去年は「音楽と凡人」というタイトルで自分のこれまでのバンド人生を振り返った。そして今年から新たにバンド活動を始める。  音楽で飯を食えていない自分はアルバイトをしている。高校一年生で始めたアルバイト。気づけばそれから人生の半分くらいアルバイトをしているらしい。大学受験の時に半年ほど辞めていた以外はシフト量に差はあれどずっと何かしらのアルバイトをしている。その年数と職種の豊富さは知らぬ間に平凡でなくなってしまった。  契約書と給与明細以外には何の記録も残っていないので、自分

          労働と凡人 まえがき

          もともと世の中は公平ではない

           炎上、というネーミングのおかげで間違ったものが正義の業火に焼かれるようなイメージが起こる。  インターネットの書き込みは自分の生活に不満がある人間の暇つぶしである場合が多いが、意外と本人は自分が悪に対して心の底から腹を立てている正義感の強い人間であると信じている場合も多いようだ。    自分もこのままこの下にいかに世の中がおかしいか、みたいなことを書き連ねていけば立場が違うだけでやっていることは同じだろう。  人間のフィクションを作る能力とインターネットの仮想空間がリンク

          もともと世の中は公平ではない

          夜明け、嵐山の美しさ

          空が少し明るくなっていくのだか 俺の目が慣れていくのだかわからぬ ちろちろと水の流れる音 世界には俺しかいないようだ 肌にぴっとりとまとわりつくような 心地よい湿度を含んだ冷たさ つがいの鳥が夜を追いかけて西へ飛んでいった 俺も昇り始めた陽を背に追いかけた 山に入る 街灯はほとんどなく 朝の6時でも星がよく見えた 無音の山の中にしばらくいると 時おり風のかたまりが通り抜けていくのが 木の葉の揺れでわかる なかなか明るくならないので ベンチに腰掛け

          夜明け、嵐山の美しさ

          謹賀新年 2024年

           あけましておめでとうございます。  年明けから新たなバンドで活動します。  ライブは春ごろからになると思います。  よろしくお願いします。

          青春18きっぷ東京〜京都

           年末年始の帰省に青春18きっぷをつかったのでレポートします。  乗れる電車はJRのみです。最初深く考えずに新幹線と特急以外なんでも乗れるという勘違いをしてました。今回の旅の詳細はこんな感じです。 料金:片道2410円(5回分1セットの販売で12050円) 日付:2023年12月27日 出発時刻:新宿駅9:20 到着時刻:京都駅19:12 所要時間:10時間(途中小一時間のご飯休憩有) 乗り換え回数:7回 座っていた時間の割合:6割くらい 感想: ・夜行バスより体力的には

          青春18きっぷ東京〜京都

          バス停で日本の縮図を見た

           バスを待っていた。文京区の古い住宅街である。Googleマップを見るとちょうど前のバスが出たばかりで、次のバスまで少し時間があった。7分遅延しているようだった。  バス停にある表示板は数字の一桁分だけを表示し、バスが近づくと3つ前の停留所から3.2.1と表していくようである。4つ前までは全て0と表示されバスの所在はわからない。その時の表示は0であった。  なんとなくイヤホンを外し、携帯も見ずにぼーっと立っていた。停留所には二人分座れる場所があった。するとそこに二人連れの還

          バス停で日本の縮図を見た

          James Brown

           amazonで注文しようとするとたまに出てくる無料のプライム期間。登録すると意外とプライムビデオに見たいものがあることに気づく。YouTubeの10分くらいの動画に慣れていたためかしっかりしたコンテンツを観ると満足感がすごい。  「すごいな…」「かっけー」と一人で観ながら呟いてしまうほどにJames Brownは最高のエンターテイナーであった。当時を知るものが語るエピソードに何度か部屋の中で声を出して笑った。もっとこの男のことを知りたいと思った。公民権運動、現実問題として