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NewsPicksの無断転載事件

経済ニュースサイトである「NewsPicks(ニューズピックス)」は他の報道機関の写真などを無許諾で掲載していたとして、謝罪のコメントを出しました。これは、一般社団法人日本新聞協会から著作権侵害の指摘を受けた結果です。

NewsPicksは国内外の報道機関やメディア100社以上の記事を掲載していますが、利用許諾を受けていないコンテンツを掲載していたとのことで、主に写真のトリミングが行われていました。他人の著作物のトリミングは「同一性保持権の侵害」です。

ニュース記事の著作権問題で思い出されるのが「ヨミウリ・オンライン」事件です。この事件では、読売新聞が自社のニュースサイトに見出しと共にニュース記事を掲載し、Yahoo! Japanにこの見出しと共にこの記事が表示されるように契約していました。 
被告会社は、自社のサイトで「Yahoo! ニュース」にリンクを張り、そのリンクボタンの多くは、この見出しと同じ語句を使用していました。
これが著作権侵害か否か争われた事件です。つまり、ニュースの見出しに著作物性があるかどうかが争点です。

著作物と認められなかったタイトルは例えば、つぎのようなものです。
「「喫煙死」1時間に560人」
「マナー知らず大学教授,マナー本海賊版作り販売」
「スポーツ飲料,トラックごと盗む…被害1億円7人逮捕」

これらはいずれも「ありふれた表現で創作性なし」と判断されました。そもそも、著作権法10条2項には「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」は著作物ではないとの規定があります。例えば、「○○氏○歳で死去」などの事実のみの報道は著作物性がないということです。ニュースタイトルは事実の報道が多く、そこに執筆者の創作性が入り込む余地は少なく、著作物とは認められないものが多いです。

ヨミウリ・オンライン事件では、ニュースタイトルはこれと変わらない、だから著作権は発生しないと判断されました(平成16年3月24日、東京地裁)。

しかし今回のNewsPicksの事件はこれとは全く異なり、他社の写真のトリミングです。だからこそ、これほど問題になったのだと思われます。

参考サイト
https://news.yahoo.co.jp/articles/19f0cb29b9c8db6ed426d7d8daed03267bc189c6

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。