医師の勉強は終わらない〜学会に参加する意義とは〜

はじめに

医学は日々進歩している。
新しい薬、新しい治療法、新しい手術機会、新しいエビデンスに伴うガイドラインの変更、などなど、どんどん前に進む。

医師が医師であるためには、もっと言えば臨床医が第一線の臨床医であり続けるためには、常にそこにアンテナを張っておく必要がある。
もちろん、医学全般に関してとは言わない。
せめて自分の専門分野だけでも。

僕の立場で言えば、肺癌や肺の手術に関しては、プロフェッショナルであるというプライドを持って勉強する必要がある。
それが僕の医師としての価値。

一方で他分野、例えば血液内科領域に関しては、僕は完全に素人。
それでも良い、僕に求められているものはそこではない。

プロであり続けるためには学び続けることが必須だ。
でもこれって医師に限ることではない。
どんな仕事にも当てはまるだろう。
だから、医師の勉強の話を通して、自分自身を見直すきっかけになれば嬉しい。

こんな人は必読

・医師はどんな勉強してるのか疑問を持ったことのある人
・医師の『学会』というものを覗いてみたい人
・医師免許持ってれば一生安泰なんでしょ、と思っている人
・自分自身がプロであり続けているか、今の自分を見つめ直したい人

久しぶりの学会参加

医師の学会には2つのシーズンがある。
ざっくり言えば春と秋。
まさに今である。

コロナ前は、学会は必ず現地参加。
会場に足を運んで様々な発表や講演を聴講するのが当たり前。
ただ、コロナによってオンラインが急速に普及し、今ではハイブリッド開催が主流となった。
僕もこの3年間はwebで参加することが多かった。

最後に現地で学会に参加したのは昨年12月。
この時は、医師の立場ではなく、医療機器ベンチャーの一員として参加。
3日間、企業マンとして立ち振る舞いました。

ということで、久しぶりに医師として現地参加。
参加したのは外科学会。
消化器、呼吸器、心臓血管、乳腺甲状腺、小児外科などなど、多数の分野の外科医が集まる学会。

久しぶりの現地参加であり、新鮮な気持ちで刺激を感じることができた。

井の中の蛙にならない

外科の学会ではいろいろなことが議論される。
治療方法について、臨床成績について、基礎研究について、そしてもちろん手術について。

手術に関するセッションでは、実際の手術ビデオが流れることが多い。
他施設の手術を見る貴重な機会だ。

今回も多くの施設の手術ビデオを拝見した。

その中で感じたこと。
常に外に目を向けることの大切さ。
それは良い意味でも悪い意味でも。

まずは良い意味。

手術が上手な先生がいる環境で数年間育ったとする。
自分では意識していなくても、いつも見ている手術がレベルの高いものだと、目はどんどんその手術に慣れていく。

それが当たり前だと思って育つと、後々その環境に感謝することになる。
他の施設の手術を見たときに、違和感を感じるようになる。
もっとこうすればいいのに、これは危ない操作だな、僕の上司はこんなことは絶対にしない、自分がこれやったらひどく怒られるな、、などなど、色々と感じるだろう。

これってすごく大事だし、外科医として成長している証拠。

一方で悪い意味。

容易に想像がつくと思うが、先ほどとは逆。
悪い手術に目が慣れ、それが当たり前として育つと、そこから抜け出すのは大変だ。

外科医にとって若い時の教育って本当に大事。
子供の成長と一緒で、自分のいる環境にどんどん染まる。
一度染まったものを、違う色に染め直すのは大変。
だから白いうちに、正しい教育、上手な手術に触れる必要がある。

今回の学会でも、良い例、悪い例をたくさん見た。
上手だな、なるほど、こんなことを意識しているのか、と感銘を受ける手術。
まずいでしょ、普段こんな手術してるの?しかもそれを学会で出すって、ちょっとびっくりなんだけど、、と思ってしまう手術。

上手な手術に触れなくなれば外科医の成長は止まる。
井の中の蛙になってしまわぬよう、学び続ける姿勢が必要だ。

新しい知見を得る刺激

手術だけではなく、基礎研究の発表も聞いてみた。
普段自分では絶対に調べないような内容も、発表という形であればなんとか聞くことができる。

今回興味を持ったのは人工赤血球の話。
赤血球とは、いわゆる血である。

手術ドラマでよくありますよね。
輸血はまだか、院内の輸血をかき集めろ!
これです、これ。

この輸血を人工赤血球で代替できるという。
しかも輸血に比べて保存方法や保存期間などの取り扱いが容易。
なんて画期的なんだ。

恥ずかしながら、人工赤血球なんか聞いたことがなかった。
でも、研究は20年以上続けられていて、動物での研究結果はかなり良い成績。
さらには臨床試験(第一相)も始まっているらしい。
僕が医師である間に、臨床の現場で人工赤血球が使われる未来が来るのだろう。

こういった自分のド本名でない知見を得ることができるのも、現地学会参加の魅力。
オンラインだと、事前にチェックした興味のある演題しか聞かないから。

とは言え、人工赤血球に関して詳しい知識を得られたわけではなく、研究の要点を聞かせて頂いただけ。
それだけで勉強したつもりになって満足する自分もまだまだだなと反省。
本当に興味があるなら、すぐに自分で論文を調べて、貪欲に知識を積むだろう。

知的好奇心って本当に大事。
自分の成長のため、後で論文を検索しよう。

学会参加のもう1つの刺激

学会はもちろん勉強の場。
だけど、もう1つの側面が。

それは、日常診療から少し離れて気分転換すること。

医師は常に患者さんと二人三脚。
自分の意思で日々の忙しさをコントロールできなかったりする。

だけど学会に参加している間は、臨床現場から離れることができる。
もちろん、その間病院に残って診療をしてくれている同僚がいてこそ成り立つ。

例えば地方学会であれば、学会終了後に地元の美味しいご飯を食べに行ける。
発表が夕方に終われば、まだ明るいうちからお酒を飲んだりできる。
専門分野が同じであれば、普段は会えない大学の同級生にも会える。

学会に参加して、発表もしくは勉強した特典みたいなもの。

今回の外科学会でも、四国で勤務している同級生外科医に久しぶりに会うことができた。
良い気分転換だね。

一方で、学会会場が都内だとすぐに病院から呼び戻される環境にあるので、それほどリラックスはできない。

だから学会に参加するときは、開催場所が大事。
地方学会は喜んで参加するけど、東京横浜の学会には興味がない、なんて話もあるあるだ。

最後に問題

学会に参加するとき、必ず会費を払って参加証となるカードをもらう。
カードケースを首からかけて集団で移動するスーツ姿のおじさん軍団、見たことありません?
THE学会、って光景。

ところで、わざわざお金を払ってまでゲットする学会の参加証、学会終了後にその使い道ってあると思います?
実はあれ、当日必要なだけでなく、大事に保管しておかないと、後で泣きを見ることになったりする。

僕もつい最近、、、、
さてさて、学会終了後の参加証の使い道は??


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