不器用でやさしくて真っすぐなキミへ。
その日はいつもより中学生の息子の帰宅が遅かった。
あと10分経っても帰って来なければ、学校に連絡でもしようか。
そう考えてから数分後に息子が帰って来た。
「ただいま…」
帰って来た息子の顔はいつもより疲れていた。
「おかえりー。いつもより遅かったんやね」
そう声を掛けると、息子は塾で部活を早退した友達が水筒を忘れてしまっていたので、その友達の家まで水筒を届けてから帰って来たとのことだった。
その日は金曜日で翌日部活が無いため、我が家よりも学校から離れている友達の家まで、つまり自分の家の前を通り過ぎて、わざわざ水筒を届けてから帰宅したとのことだった。
金曜日で息子も疲れていただろうに。
そう思いながら、
「よく頑張ったね」
と息子に声を掛けると、お疲れ気味の声で
「うん…」
と返事をして自分の部屋に入って行った。
ほどなくして息子がしょんぼりしながら伝えてきた。
「お弁当箱忘れてもうた」
それを聞いて私も一瞬「おっ」となったが、予備のお弁当箱はあるし、明日・明後日は使わないし、時間が経ってニオイがきつくなったお弁当箱を洗うのがイヤだなぁぐらいしか思い浮かばなかった。
「明後日クラブあるし、その時持って帰って来たらええやん」
と息子に言うと
「明日、学校に取りに行く」
とマジメで気にしいの息子は答えた。
今日はもう学校へ取りに行く必要が無いとわかったからか、疲れてはいるが息子の表情はいくぶん明るくなった。
翌日、朝から学校へお弁当箱を取りに行き戻って来た息子から、お弁当箱の入っていた保冷バッグを部室ではなく教室に忘れていたと聞いて私は思った。
きっと金曜日で疲れが溜まってて、忘れたんやろなぁ。
めっちゃ疲れてるのに重い荷物を背負いながら友達のためにわざわざ水筒を届けて、けど自分のお弁当箱は忘れて翌日取りに行く。
そんな不器用でやさしくて真っすぐなキミが、ただただ愛おしい。
親のしつけがよかったから、息子がこんな風に育ちました。なんて、ドヤ顔にはなれません。
だって、それはきっと生まれつきのキミの持ち味だから。
そんなキミを見て幸せな気持ちになれる私は果報者です。
生まれてきてくれて、ありがとう。
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