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un dimanche à la campagne/田舎の日曜日

19紀のロダンゴット風のシルエットに骨組みで整えられた美しいピンクシルク&レースのコルサージュを田舎風のアルモワールの扉に飾りながらの、ある日の日曜日。ふとフランスの名作映画"Un dimanche à la campagne"(アン・ディマンシュ・ア・ラ・カンパーニュ:邦題『田舎の日曜日』)を思い出しました。1984年公開のベルトラン・タヴェルニエによる映画で、1912年の夏の終わりを背景に、緑豊かなパリ郊外の田舎にあるお屋敷で暮らす老画家とその家族が過ごす、ある日曜日の物語。

 妻を亡くして以来、田舎のお屋敷で一人、メイドのメルセデスと暮らす老画家のラドミラル。毎週日曜日にはパリから汽車に乗って、息子ゴンザグが彼の妻と3人の子どもを連れてやって来てくれるのだが、なんと今日は忙しくて滅多に来ることのない娘イレーヌもやってきて・・・というのが簡単なあらすじ。この映画で、ベルトラン・タヴェルニエは第37回カンヌ国際映画祭監督賞を、サビーヌ・アゼマは 第10回セザール最優秀女優賞を受賞しています。

 特に大きな事件や、悲劇や喜劇が起こったりするわけでもなく、ただただ日曜日の一日が進んでいくだけなのですが、緑々とした庭や、きらきらゆらゆらとした光、木洩れ日で作られる場面が印象派の絵画のように撮影され、フォーレの音楽も心地い良い。なんといってもサビーヌ・アゼマ演じるイレーヌのチャーミングなこと!颯爽と自分で運転する車で現われ、お洒落なドレスに身を包み、屈託のない快活さに誰もが魅了されるはず。屋根裏部屋で古いレースショールを見つけたり、アンティーク好きの心擽る場面も楽しい。老いに焦点を当て、残りの人生とこれまでの人生を見つめる老画家ラドミラルと、父親の寂寞を優しく包み込む娘のイレーヌとの二人のダンスシーンが心を打ちます。

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